また明日
リリーと俺はファッション街にあるフリースペースにいた。
薄暗い上水道だが、間接照明を使いムードのある空間に仕上げている。
『疲れましたの。』
リリーはいつも履いている靴を脱いで足先で遊ばせている。頬杖をついて胸元をチラつかせている。
『今日は楽しかったですわ。』
たまにニコッとこちらに微笑みかけてくる。
俺はドキッとしながら
『そうだね。』
とだけ答える。
リリーはタブレットに何かを入力し始める。
『ふん、ふん♪』
鼻歌を歌いながら、リリーは上機嫌だ。
『明日はどんな日になるかしら。』
リリーが楽しそうだと俺も嬉しくなる。
この感情もいつかリリーは忘れてしまうのだろうか。リリーが目覚めるのを忘れて、眠り続けてしまうその日までに、またリリーと俺は恋をすることが出来るのだろうか。
『・・・・っ。』
そんなことを考えると涙が出そうになる。
拳に力を入れて涙を堪える。
リリーに気づかれてはならないのだ。
リリーが忘れないように、俺はリリーにラブコメしたいことを伝え続けなくてはならない。
『リリー。』
『なんですの。』
リリーはニコリとしている。
『明日もまた楽しい日になるといいな!』
涙声で、声がうわずる。
だって明日にはリリーは、このことも覚えていないのだ。
『ええ!そうですわねっ!』
それでも俺はリリーに恋をしている。
ファッション街を出た。
陽が落ちてあたりは照明で照らされていて賑わっている。
ナイトマーケットの時間である。
照明に包まれながら歩く。
『そろそろ門限ですわね。』
『ああ、早く帰らないと、、、』
『そうですわね。』
第50高校は全寮制で、男子と女子で分かれている。
女子寮の前に立つ。
『タケルさん、じゃあまた明日学校で。』
リリーはまた忘れてしまう。
この感情を。
俺は忘れさせたくなかった。
女子寮の門に向かうリリーの腕を掴み、
抱き寄せた。
『タケルさん?』
『リリー。この気持ち、この感情だけは覚えていてくれ。』
とうとでもなれ。
俺はリリーに口づけをした。
『じゃ、じゃあまた明日なっ!』
俺は走った。
リリーの顔を見ることなく
どうせこの体験も感情も思いも全てリリーは忘れてしまうのだ。
俺は卑怯だ。
石に躓いて倒れる。
『うわああああああっ!』
そのまま俺は声をあげて、
じゃり道の上で泣き続けた。
明日になったらまたリリーの記憶はリセットされてしまう。
そのことに耐えることは難しかった。




