学園ラブコメは今始まる
次の日。
今日は学校に行くことにした。
いつもの坂道を歩く。
『おい、裏切り者はヤッちゃうよ?』
『裏切り者か。まあ、確かに昨日は学校を休んでしまった。だが、どうだ?今日は登校してるぞ。』
『あんまり、怪しい動きをするな。キミの為だ。』
いつもと違う声のトーンで、去っていく眼帯の美少女。
『ずいぶんと心配してくれるんだな。』
加藤は立ち止まる。
『いや、別に。お前を見てると居た堪れなくてな。』
『ほう。どんなあたりが?』
『わかってるくせに。もう幸せに生きることだけ考えなよ。』
『ああ、、だから俺はラブコメに生きるのさ。ヒロインはすでにいる。』
『そう、、、』
うんざりとしたような感じで言葉を吐き捨てて、加藤は去っていった。
『おはよう、タケルさん。』
『ああ、おはよう。』
リリーがやってくる。
『今日は少し遅いんだな。』
『そうですの。用意に時間がかかってしまったのですわ。』
リリーを見る。
『お前、ヘアドレッサー忘れてんぞ?』
『?そんなもの身につけてましたっけ?』
『イメチェンかね。まあ、いいや。』
『今日はどうしますの?』
『そうだな。お前の記憶を取り戻すには、俺がきっかけを作ってやらねばならない。手始めに昼休みに屋上に来るんだ。』
『はあ。屋上で何をしますの?』
『決まってんだろ?デートだよ。』
『デート?そんなもので、私の記憶が蘇りますの?』
『大丈夫だよ。俺に任せておけよ。』
リリーはちょっと顔を赤くして頬に手を当てている。視線は節目がちだ。
『私、デートは初めてですの。何をすれば良いのかしら。』
『ああ大丈夫だ。俺がエスコートするよ。』
リリーは口をぽかんと開けたかと思うと、まばたきをしてこちらを見る。
『ではお願いしますわ。また、お昼休みにね。ごきげんよう。』
『ごきげんようも何も同じクラスじゃないかよ。』
『ああ、、、そうでしたわね、、、』
リリーは咳払いをする。
『では参りましょう。』
『手でも繋ぐか?』
ちょっと揶揄う意味も込めて言ってみる。
『ええ、いいですわよ。』
リリーは俺の手を握る。
全身に何か液体がめぐるようだ。
胸がドキドキする。
『手汗をかいてしまうかもしれませんの。でも勘弁してくださいまし。』
リリーは顔を赤らめながらもにっこり微笑んで、俺の手を引っ張る。
リリーは本当に記憶が抜けてしまったのだろうか。単なる照れ隠しじゃないのだろうか。
俺の胸はざわつきながらも、動揺を見せないようリリーと歩幅を合わせて校門をくぐっていった。




