リリーとお母さん
マンホールを開けて降りると、やはり飲食店街のように真っ暗で水が流れている気配がした。
『こっちですわ。』
リリーに手をひかれて歩く。
『お、おいリリー。』
『危ないですのよ。初めての方はすぐ迷ってしまいますの。』
カツカツ鳴る靴の音と、ワサワサと鳴るリリーの衣服の擦れる音だけが空間を支配する。
何か2人で秘密を共有しているような時間。
ドキドキしないはずがないが、心なしかリリーの声色が変わったようなきがした。
歩いて30分ほど経った。
すると、やはり飲食店街のように銃を構えた衛兵らしき人影が数人。
『おい、貴様・・・・。』
『私ですの。』
『ああリリー様。失礼しました。どうぞ。』
リリーは顔パスか。
一体この先に何があるというのだろうか。
しばらく歩くと白いカーテンで仕切られた空間が何個も現れた。
薬のような匂いが立ち込める。
白衣を着た人があちらこちらを駆けずり回っている。
ああここは。
『ここは病院ですわ。』
リリーはそれだけ告げるとまた手を引いていく。
俺の手を握る手が少しきゅっと強くなったような気がした。
『あら、こんにちは坂上さん。』
『こんにちは。母の容体はいかがですか?』
看護師は首を横に振る。
『そうですか、、、』
リリーの声のトーンが下がる。
『ま、まあでも生きてるだけでも丸儲けですわね!』
『リリー・・・・。』
リリーの肩に手を置こうとする。
『触らないでくださいまし!』
リリーの声が響く。
看護師達がこちらをジロリと見る。
『あ、、オホホ。この男が私の体に触れようとしたので、つい。』
おい、やめろ。
看護師が俺をゴミを見るような目つきで睨んできてるぞ。
『タケルさん、母に会ってください。』
『え。ああ、まあいいけど。何話せばいいかな、、』
『何を話せばか、、、』
リリーは消えいるように呟く。
リリーはまた手を引く。
ある病室前に連れてかれた。
『お母様失礼いたしますわ。』
そろりとカーテンをあける。
そこには1人の白髪混じりの女性が横たわっていた。
『お母様、こちらはタケルさんですわ。私のクラスメイトで、私とラブコメをしたい殿方ですの。』
リリーは目を閉じて動かない女性の手を取る。
その手を自分の頬に当てる。
『お母様、私なんかに下心を抱く殿方がいるなんてなんて私は恵まれているのでしょう。』
リリーの声が震えている。
『お母様、、私今、第50高校にいますの。こんな世界だから軍功をあげるくらいしかお母様を助けられないのですわ。』
ポツポツとリリーの目から涙が溢れる。
『お母様、私、まだお母様に何も恩返しできてませんの。ねえ、お母様、お母様・・・・。』
全く動かない母の前で涙をぼろぼろと流すリリー。
『お母様の記憶は私が必ず取り戻して見せますの。だから、、』
リリーは涙を流してこちらを振り返る。
『だからタケルさん、私は諦められないですの。母の記憶を取り戻すために。』
リリーはそのあともずっとずっと母の手を握っていた。




