リリーはもの覚えがよくない
昼休みになった。
『視聴覚室行くかなあ。』
教室を出ようと立ち上がった。
無数のコードが敷かれている教室内を抜けて、ドアをあける。
たゆん。
何か柔らかいものにあたった。
『あら、タケルさん。』
リリーの柔らかい胸にあたっていたようだ。
ラッキースケベ発生!
『あ、悪りぃ。わざとではないんだ。』
リリーの顔を見る。
顔が赤い。
両人差し指をツンツンして下を向いている。
まさかこの短時間で、俺はリリーを発情させてしまったのか!?
いきなりエロゲーのエッチなイベント発生なるかっ!?
『あの、タケルさん。』
『な、なんだいリリー?』
俺は努めて冷静に。
オーバーヒートしないようにした。
『ちょっと相談があるの。』
『いいぜ?どこでだ?』
『そうね。。じゃあ屋上がいいわね。』
ああ、いきなりお天道様の下でのイベントか!
頼むから誰もいないでくれよっ!
お天道様を見上げている。
俺の視線の先には、リリーがいる。
リリーはニコリとこちらを見て微笑んでくる。
ああ・・・
俺は何をやっているんだ。
『イチニ!イチニ!』
よりにもよって
リリーの手伝いとは。
『はあっ。なんかダメね。』
リリーは胸元をバインバインと跳ねながら、演習でできてなかった行進の仕方を俺に教わっている。
『リリー、さっきも教えたぞ?』
10分前に回れ右をして足を90度上げて右斜め45度を見ながらという行進の手順を教えた。
『はっ!?聞いてないですわよ!?』
リリーは踵を上げて俺の脳天に落とそうとする。
『ああごめんごめん。それより今日は紫のパンツなんだな。』
『ひやあっ!!』
リリーはパンツを隠すため、スカートを押さえて目をぎゅっと閉じて恥ずかしさを堪える仕草をする。
かわいい。
『なあ、リリーもうすぐ昼休み終わっちゃうぜ?』
『ええわかってますわっ!でも総合演習でお二人の足を引っ張りたくはないですのっ!』
チャイムが鳴る。
『ああリリー、授業始まるぜ。』
『ええ。悔しいですわっ。』
リリーは昼休み中に行進を覚えることは出来なかった。
『さあっ、みんな!午後はライフルの組み立て作業よっ!昨日教えたとおりにやれば、大丈夫っ!』
苗村先生が教室の前で元気に振る舞う。
今日は調子が良さそうだ。
教壇からピョコッと降りる、苗村先生。
『あれれ・・・?』
体のバランスを崩して倒れる。
ゴンっ!
1番前の生徒の机に額を激突した。
『ぷぎゃああああっ!』
『だ、誰か!担架をっ!』
苗村先生はまた倒れた。
担架で運ばれる苗村先生。
俺らは、ライフルの組み立てを行うことにした。
ライフルの組み立ては簡単だ。
図面もあるし、ライフルのパーツには番号も書いてある。
俺は10分で終えた。
『タケルは早いなっ!どうだっ?スパイにならないか!?』
『うるせえ、加藤。』
しっしっと追い払う。
他の生徒は30分くらいかかっている。
俺はボケーっとリリーの方を見ていた。
ライフルの組み立てでどうやったらあんなに胸をバインバイン揺らせるのかわからないが、常にバインバインしている。
『えーっと、これがこうだから。あれ、これは?うむむ??』
リリーは最初の工程から進んでいない。
『えーっと、あれ、あれれ?』
ライフルの組み立ては基本自力でやることになっている演習だ。
実戦でできなければ命に関わるからだ。
しかし、リリーは全然終わらない。
俺はリリーをずっと見ている。
『おい、タケル。もう下校時間だぞ?スパイたるものずっと学校にいても意味がない。ミッションがあるだろう。』
『うるさい加藤。先、帰れよ。』
『ふむ。今にみてろ。私の誘いを無下にしたことを後悔させてやる。』
加藤は帰った。
すでに日は大きく傾いていた。
リリーはまだ、ライフルの組み立てを終えられていなかった。
俺は立ち上がりリリーに近づく。
『リリー、もう帰ろうぜ。』
『嫌ですわ。』
リリーの顔は真剣そのものだ。
『なあ、リリー。図面がここにあるんだが。』
『はっ!?聞いてないですわよっ!?』
何度目の同じ会話だろうか。
リリーはいじっぱりだ。
しかし昼休みもろくに休みを取らずずっとできなかったことを出来るようにするためがんばっている。
そんなリリーのひたむきさは嫌いではない。
だけど、
リリーにとってこれは頑張るに値することなのだろうか?
『リリー、帰ろうぜ。』
『嫌ですわっ!』
リリーは叫ぶように言う。
かちゃかちゃ。
かちゃかちゃかちゃかちゃ。
リリーはライフルの最初の工程が終わらない。
『絶対、絶対あきらめないですのっ!』
リリーの顔がまた赤くなる。
リリーの目には涙が溢れる。
『頑張れば、頑張れば、報われますものっ!!』
明らかにリリーの体から熱気が帯びているのがわかる。
『リリー。』
『うるさいですわっ!』
次の瞬間、リリーは床に倒れ込んだ。
『いや、、、ですわ、、、』
リリーはそのまま動かなくなり、目を閉じた。
『参ったな。』
この場面もはじめてではない。
こうなった時の手順は、、、
あった、あった。
『はい、救急センターです。』
『一名急患だ。』
『かしこまりました。ネームは?』
『リリー・坂上。』
『検索致します。はい、第50高校、S教室ですね。ご連絡ありがとうございました。』
あとは救急センターが来てくれる。
残酷だが、できることはない。
せめてもと思いリリーを机に寝かせる。
『リリー、お休み。また明日な。』
俺は静かに教室の扉を閉じた。




