22
「……シュタインさん、空間商店街で宿を開かなくていいんですか」
「今は迷宮の方が圧倒的に儲かりますからね!研修もある程度出来てますし後は場があれば可能です!」
支店……支店かあ……。
ぶっちゃけて言うとレイドクエスト中は何があるか分からないから拡張をほぼしてなかったんですよね。
つまり、作るなら一から。
いや、八×三空間を広げればちょっとは……。
「……まだ作ってないので今から作ることになりますよ」
「ある程度の広ささえあればキャンプ場で押し通します!それに……支店を開かないと暴動が起こるかもしれません」
暴動……暴動……え、いやなんで暴動……。
真顔でシュタインさんを見つめると、答えは横から飛び出してきた。
「もしかして鉱夫組合……?」
「ええ、そうです。前回参加出来なかった鬱憤と、今が稼ぎ時だから早く行かせろと、さらに冒険者たちから四箇所拠点の話を聞いたせいで中層にも拠点が欲しい!と……」
また別の方向で頭が痛くなってきた。
まあ、それはもう、やるしかないかなあ。
はあと溜息を吐いてから仕方が無いので頷く。
「わかりました、空間の準備はしましょう。店長の方はシュタインさんにお願いしてもいいんですよね?」
ここまで言ってきてやらないって言ったら殴るからね。
にっこり笑って確認を取ると彼はふっと笑い返してきた。随分余裕がありそうだなあ……。
「もちろん。支店の準備も……お忙しそうなので本店の準備も任せていただいても?」
「ええ、お願いします。いつもどんな準備をしているかはネロかリリエラ辺りに聞いてください」
「かしこまりました」
とにかくもう、一刻も早く計算処理を終わらせないと。
ダーツと違ってスキルのない私は半泣きでメモに計算をしながら書き込んでいく。
けれど、ずっとそれをやっていられるわけがなかった。
「お忙しいところ申し訳ありません」
やっと売上帳簿ができて、これから買取帳簿に入れると思った翌朝。
朝も早くからクリハラさん、御領主のラウラさん、それから鉱夫組合長が襲撃してきた。
対応するために応接間に通してそこで初めて、冒険者たちが全員宿に泊まりっぱなしなことを知った。
あー……手伝い出来てないけど、ネロとかみんな大丈夫かなあ……。
「ご用件は何でしょうか」
本当に、本当に忙しいのでダーツが怒りを笑顔で隠しながらストレートに切り出すのを私も作り笑いで賛同する。
「あー……その、実はだな。今のアイアン迷宮は採掘がゴールデンラッシュだろう?戻ったばかりで忙しいのは承知だがなるべく早く宿を営業してもらいたくて……ね?」
だから!そのために!いま必死に書類仕事と在庫さばいてるんですけども?
クリハラさんの言葉に笑顔がぴしりとヒビが入った気がする。だが御貴族様の前、お客様の前だから頬を引きつらせながら堪える。
「あとアイアンでもいくつも拠点を出せるんだろう。下層だけじゃ無く中層にも出してくれ」
その準備もしてるんだけどなあ。くそ忙しいんだけどなあ。
だんだん怒りが殺意に転じてくるのを必死にこらえてお茶を飲む。
「それから…その、ゴールデンラッシュは一か月しかないのだろう?なるべく一か月間は宿を常駐させてほしいのだが」
鬼か。私たちまだ地上に戻ったばっかりで休憩もまともにとってないのにさらに一月も籠らせるつもりか。まあ、希望もわかるし言いたくなるのもわかる。




