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今回のレイドボス、残念ながら犠牲者は出てしまった。
そして引退を余儀なくされる負傷者も。ただどちらもアイアンの冒険者だったらしくクリハラさんが責任をもって残された家族の世話と、引退後の職を見つけてあげるそうだ。
―――救援に来た冒険者たちにも骨折や内臓損傷を負った人は数人居たが、それでもアイアンの冒険者達とは重傷度が段違いで軽かった。
しかし、訃報と同時に吉報が流れて街全体が俄に活気づいた。
アイアン迷宮ボス討伐!
巨大な女王蟻の討伐にあの迷宮宿屋が関わっている!!
さらに一ヶ月間鉱石の出現率もレア度も上がり超希少金属『魔金』も産出される!
その情報は一瞬で広がり、迷宮宿屋は休む暇なく次の出店を望まれたけれど、如何せん狩って来た素材が多すぎるので処理に時間がかかった。
ギルドの方も、空間商店街の方も、アイアンに来ていた商人も、採掘ギルドも買い取ってくれたけれどまだ!まだ!余る現状。
買値も売値も下げざるを得なかったけれどそれでも売れ残り半数ほどの蟻の素材が在庫になってしまった……。どうしようこの量……。
在庫として残ると当然ながら手持ちの現金は減る。まあそれでも……し、私財をぶっ込めば次の経営の買取金額分は何とかなる。しばらくは鉱石の取引が主流になるだろうし。
「おーう……」
「頭痛くなる……」
今回のレイドクエストで報奨金も出た。アイテムもバカ売れした。
さらに女王蟻の素材も上半身半分は私たちが貰えた。買い取った素材が売れれば収支は黒いのだが……
いかんせん巨額がポーンポーンと飛び回ってダーツと一緒に整理しているが頭が痛くなってくる。
宿屋のツートップが動けない状態で次の営業のための準備なんて進められないと思っていた、のだが。
「マリィさん、こちら次の宿屋の経営のための経費です」
「……へ?」
何とその日のうちにシュタインさんが食材や雑貨などを揃えた領収書を出してきたのだ。
内容も、多少食材の材料費がかかっているが量から見ると問題のない程度だ。
「……これ、もう揃えたんですか?」
「はい。マキエが話を聞いて即座に契約を交わしていた各地の大農場から安く大量に購入することに成功したそうです」
「え、本当ですか」
「はい。きっとマキエ商会で食材を集めたら助かるだろうとマキエが笑ってましたよ」
すごい、マキエ姐さん助かる…!!
少しだけ気になっていたのだ。だんだん泊まる人数が増えていき、地元の食材を買い漁っていることが市場荒らしにならないかと。
野菜も、肉も、雑貨の類まで揃えていてくれていて、無いのは水くらいであった。
「助けられてるなあ……」
ありがとうマキエ姐さん。そう思ったのだ。そこまでなら確実に感謝だけだったのだが。
「さらに明日までに同量の手配の準備は進んでおりますので店長、これはやはり迷宮内で支店を出すべきです。店長が支店と本店を行き来すれば営業は可能なのでしょう?」
シュタインさんもマキエ姐さんも有能すぎやしないか。
たった一日でどこまで手配を終えてるんだ……と怯えていたがどうやらマキエ姐さんは私たちが帰るのを信じて、地下に行っている間に買い集めていてくれたらしい。




