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ギルドは恐らく次のタイミングでレイドクエストを発動すると思われる。
しかし……。
「人手が全然足りないな。アイアンは中層が冒険者にとっちゃ最高率なせいで高位冒険者が育ちにくいとは聞いてたが…これ程とは」
圧倒的に人手が足りない。
蟻はそこまで強くないらしいがいかんせん数が多い。数の暴力で攻められるとポーション回復限界でどうしても勝てなくなる。
「とにかくそっちはギルドの方に何とかしてもらうしかないわね」
それが限界かなと落とし所を考えていると、すっとダーツが手を挙げた。
冒険者じゃないから、現場に行かないからと邪険にされることは無い。全員の視線がダーツの言葉を促すように集まった。
「人手が足りないのならばモモ婆の傭兵を誓約で縛って借りるのはどうでしょうか。買い取りでも構いません。信用出来ないなら前線じゃなくて僕たちの護衛でも構いません。ロディみたいな強い人を僕たちの護衛に置くのは勿体ないと思います」
その案に全員が考え出した。私もそれを聞いて考える。
うちの宿屋で人員が不足してるのは確かだ。そして、宿屋の全員が悪い人に狙われる可能性があるのは否めない。だから全員に護衛は必要だ。
でも、護衛は信用出来る人にして欲しいというものもある。
誓約で縛っても、信用出来るかどうか分からないし信頼関係を築くには日数が短い。
「……ロディを前線投入することはありだと思う。傭兵を人員として借り受けるのもありだと思うが、お前たちの護衛を任せようとは思えない。それに離れることで迷宮の魔力の干渉を受けるなら宿屋の営業も休んで安全のため一箇所に守りやすい形で何とかしよう」
「……それでもいいと思います」
私達の護衛は自分達でやりたい。そんな意思がハッキリ見えてダーツも私も喜びが隠しきれない。
でもそうだね、営業停止はした方がいいかな。その方が全力を尽くせるだろうし、宿屋の中にもうひとつ空間を作ってそこから食事やポーションを出してもらうことは出来るし。
「……トール、黙ってたんだけどちょっと貴方だけこれを読んでくれない」
話が纏まり出すとエレーヌさんが一枚の紙をトールさんに渡した。手書きのメモのようなそれの中身は私たちに公開されることは無かったけれど、トールさんは内容を読んでふっと笑ってから会議を終えた。
なんだろうなあと思いつつ残り二日間の下層宿屋は、激務であった。
五日営業のうち三日潰された冒険者が鬼のごとく狩りに出て
またCやD級冒険者達が暗視のポーションを使って鉱夫手伝いをした巨大な成果が満面の笑みのドワーフさん達と共に宿に戻ってきて
ドワーフさんたちが戻ってくると酒も肴も何もかもが飛ぶように売れて
どこもかしこも手が足りない。
ネロもリリエラもダーツも火を噴くような忙しさで
ネロには火の扱い方に長けたロディを
リリエラにはサポート能力に長けたクレイさんを
ダーツには錬金術で細かなところまで見ることが出来るレオを
そして前回とは打って変わって大人数の相手でてんてこ舞いになった私にはリオをつけて何とか残りの日数をこなした。
「レイド関係なく、増員居るわ……」
「マキエ姐さんとモモ婆に相談してみるよ……」
「喋りすぎて喉が痛いわ……」
『ネロ!串全部刺したぞ!』
「じゃあこの串を洗っといて……」
帰り道、酔いつぶれた鉱夫や冒険者でキャンプ場は死屍累々であったけれども、私達も同じくらいへばっていた。




