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「倒せなかったら、スタンピードよね?」
「そうだね、迷宮から魔物が溢れてこの街も危険になるだろうね」
「……それなのに、不参加なの?」
あの、トールさんが?
ただの子供だった私のことも気にかけてくれたトールさんが?困ってる人を見捨てられないトールさんが?デート中とかでも困ってる人をさらっと助けるトールさんが?
本当にトールさんが参加を渋っているのか?と疑問を覚えてしかめっ面をしていると、後ろから今日の護衛のエストラさんとムサシさんに頭をポンポンと叩かれた。
「それだけ愛されてるんだよ」
「あいつ、そういうとこ優柔不断でぐるぐる回ってるだろうから背中押してやってくれよ」
そして二人は銀華のパーティルームがある方向を指さした。
ここ数日部屋に来ないトールさんは恐らくそこにいるのだろう。
「俺たちはどっちでもいいからなー」
「人払いしとくからイチャイチャしてもいいからねー」
彼の元へ一歩踏み出すと、ダーツもエストラさんもムサシさんも着いてこなかった。
そうか、最近トールさんが悩んでたのはボスレイドについてだったのか。
とりあえずなんで参加しないのって聞いてみようと思いつつ、ずっと不安そうなトールさんが心配だったので早く彼の不安をとっぱらってあげるべく走り出した。
パーティルームの扉は開いていた。中を覗き込むとこちらに背を向ける形で床に座るトールさんが剣の手入れをしていた。
「……どうした、マリィ?」
「その剣、新しいのですか?」
なんて言おうか参った末、目に入った剣の持ち手が最近使っていたものと違ったのでそちらを尋ねる。というか、こっち見てないのに私って分かるのさすがだなあ。
「ああ、仮調整が終わってな。今度迷宮に行った時に試し斬りしてみて良かったらこれで行くつもりだ」
隣に座って様子を伺うと、トールさんは少し微笑んでこっちを見てから刀身を布で磨いていた。新しい剣の刀身は黒く刃全体に文様が刻まれていた。
「この文様は何ですか?」
「魔法陣のようなものだ。魔力を通すと重さと硬さが変わったり、伸びたりするぞ」
「伸びるんですか!?」
「ああ」
「おおー!」
刀身の文様がうっすら灰色になったと思うと10cmほど刀身が伸びた。
でも10cm伸びたら何が変わるんだろう。そう思ったのを私の表情から察したのかトールさんはいつもみたいにふっと笑った。
私の大好きな、優しい笑顔で。
「戦闘中に剣の長さが変わるのは魔物相手だと有効なんだ。人同士の戦いなら武器と武器でぶつかり合うけれど魔物は躱すからな。長さが変わると躱す動作にも変化が生じて相手にやりにくさも与えられるし油断したところで長くして不意打ちも与えられる」
「強さの秘訣なんですねえ」
「俺はアイズみたいに便利なスキルを持ってないからな。頭や小手先を使って立ち回るしかないんだ」
「色々考えながら戦えるって普通に凄いじゃないですか」
「……そうか」
穏やかな良い雰囲気なので、ピッタリと寄り添う。ココ最近あまりイチャイチャ出来てなかったし、せっかくだから押せ押せでキスでもしようかな。




