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そんな私の不埒な企みは、トールさんの笑みが苦しみを堪えるものに変化したのでシュッと消えることとなった。
「マリィは俺のスキルを知っているか?」
「いいえ、スキルってあまり聞いちゃいけないのかなって思って…」
「…そうだな、嫌がる人も居るな。俺は『指揮』と言うスキルを持っているんだ。仲間に最低限の指示で思考を伝えたり、指示通りの行動をした場合攻撃や防御の効果が上昇する変則的なバフみたいなものでリッツのものよりも大人数に低コストでかけられるんだ」
そう言われてハッとする。
アイアンに到着した時にトールさんの指示を受けた。確かに何となく何を言いたいかわかった気がする。不思議な感じがするって思ってたけれどそうか、あれはスキルだったのか。
「便利なスキルだが、大人数を相手取るのは非効率的でな…大人数だと、動かすのに時間がかかって助けられるものも、助けられなかったことが色々とあったんだ」
これは…昔の話かな。トールさんは昔大勢の人を指揮する立場に…うん、深く考えるのはやめておこう。そういえばトールさんも貴族様の血縁…うん、考えちゃダメだ。
「だから俺は動きやすい冒険者になったんだ。一人でも多くの人を助けられるように」
「…トールさんには昔も今も助けられてますよ」
それこそ初めて出会った、まだ生きるのに必死だった12歳の私は彼に何度救われたか分からない。
顔は怖くて、力も強い冒険者たち。今は皆優しいと知っているけれど、それでも初めにトールさんに優しくされなかったら上手く馴染めなかっただろう。
「ーーーだから、マリィ。俺はアイアン迷宮のレイド作戦に参加しようと思う」
凄く真剣な思い詰めた顔で何を言うのかと思ったら、アイアンレイドボスに参加を決めたようだ!
そうと決まれば準備を進めないと!
冒険者のみんなよりも潤沢なバックアップ体勢を整えないと!
俄然張り切ってきたよ…!
「じゃあみんなの分の色んな物を集めないといけませんね!上級ポーションもちょっと高くなるかもしれませんがマキエ姐さんに頼んでみます!欠損ポーションも在庫補充しないとなあ…あ、暗闇が見えるようになるポーションとかありませんかね?」
「……は?あ、暗視ポーションはあるが効果時間が二時間で切れるから使えないぞ…いや、マリィそうじゃなくて…」
「使えないんですか?でも宿屋から出て二時間圏内で使えるんなら結構良いと思いますけど。お高いんですか?」
「……いや、光茸はアイアンで取れるからそこそこ在庫はあるけど、そうじゃなくて」
「そうじゃなくて?」
困惑しきっているトールさんをきょとりと見上げると、うっと口をつぐんで……ふっと諦めたように笑った。
「行く気満々だな?」
「当たり前じゃないですか!みんなのバックアップは任せてください!何がご入用ですか!!ただ見守るだけで前回は危険に晒してしまったから今回は万全の準備を私でもしますよ!!」
お金で解決できるなら、何でも買おう!
最悪マジックバッグを売ればいいだけだ。販路も今はマキエさん達がいるから問題ないし!そう思って任せてと握り拳を作ってアピールすると、トールさんの身体がこちらにかしいで…ぽんっとトールさんが甘えるように寄りかかってきた。
「マリィが欲しい」
「ふぁ!?」
「何が欲しいか聞いたんだろう?マリィが欲しい」
「あ……あげますけどもね!?」
ふふふと色っぽい表情で笑ったトールさん。彼の手が私の腰に回って、顔が近づきーーーー抱き寄せられながら唇を重ねた。




