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私たちの心配を他所に出発から一日半の時間が経過して、トールさん達は全員無事に帰ってきた。
「おかえりなさい!!」
「…ああ。ただいまマリィ」
目立った怪我はない。けれどトールさんの表情は今まで見たこと無いほど暗いものだった。
「何かありましたか?」
「ああ……」
険しい顔のトールさんを見上げて尋ねるも、トールさんは少し迷った表情を浮かべてからクシャッと私の頭を撫でて
「……何でもない」
目を逸らして、宿の自室へと歩いていった。
誤魔化された。とてもわかりやすく誤魔化された。
いつにないその態度に再び不安が込み上げてすぐに振り向くも、トールさんは振り返ることなく宿屋の中へと消えていった。
side???
皆が寝静まった深夜。護衛団のメンツのみ集まった。マリィたちの部屋には念の為にリオが作った結界札で結界を張ってある。
「で、どうするわけ?ギルドに報告して確認が取れたら確実に私達にも協力要請は来るでしょうね」
「まあ、俺たちのランク的に来ないわけは無いだろうね」
「つーかよお、なんでダーツとマリィはいねえんだ?」
アイズが打ってきた直球に気まずく思いつつも平静を装う。
「マリィとダーツは冒険者じゃない。参加理由は無いはずだ」
「ふーん……」
「とりあえず確認だ。俺たちが見たのは…」
凄い数のキノコ
凄い数の蟻
下層サイズの羽蟻
巨大なモグラを食う女王蟻
今も増え続けてるであろう数千規模の卵
それらの説明をすると全員の表情が険しくなった。
「空気も薄いのか?」
「羽蟻がいるからそれほど薄くは無いと思われるがそれ以前に胞子が濃密すぎて呼吸するのは困難だと思われる」
数の暴力
孵化する前に倒さないと悪化する時間制限
羽蟻も居ることから空中戦も有る
女王の元に行くまでの無数の敵と最悪な足場
呼吸もままならず
火が使えないからほぼ真っ黒な視界
ポーションや魔道具が使えないアイアン迷宮の環境
悪い状況が幾重にも重なり合って、討伐を困難にさせている。
「悪ぃが俺はパスだ。マリィとダーツが居ねえなら生存率が低いからな。俺は死ねねえから討伐の話が来ても断らせてもらう」
「…アイアンが滅びるぞ」
「それがどうした。俺たちが死ねば仮令地上に避難させていたとしてもマリィ達は死ぬか死んだ方がマシな状況になるだろうな」
そう言い捨ててアイズは部屋から出ていった。アイズの意思に従うようにドラ殺のメンバーも出ていく。
残った気まずい空気の中、エストラ達も立ち上がった。
「要請を断ったら最悪階級が下がるから受けたいところだけど……マリィちゃんがいなかったらきついから俺達もアイズに賛成かな。マリィちゃんは普通の村娘じゃないから俺達が死んでも新しい恋や生活なんて出来ないのに…何でマリィちゃんを外すんだい?まあ、彼女を危険な目に合わせたくない男心はわかるけどもね」
そう言うとアサシンズも出ていった。残ったのは気心のしれた昔馴染み達で、思わず深いため息が出る。
「どうすんだよ、トールのことだから助けられるだけ助けたいって言うんだろ」
「俺たちはお前の博愛精神知ってるけどなあ…」
「…しばらく護衛は俺たちの方で回すから考えときな。マリィを連れて討伐に参加するか、全員不参加のどっちかだ」
本当はわかっている。マリィのバックアップが無いと厳しすぎる戦いで恐らく死者の数が変わることも。
わかっては、いるんだが……。
トロッコで泣きじゃくるマリィの姿を思い出して胸が痛む。だが、俺達が参加しなかったら最悪アイアンそのものが滅びるだろう。
……助けたいものを助けたいから、冒険者になったのに。
まだまだ弱く不甲斐ない自分に嫌気がさした。




