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三年後に世界が滅ぶゲームのチュートリアルで死ぬモブキャラに転生した俺はたぶん世界を救わない。  作者: あかむらさき


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第05話 『もしかして……これって夢じゃなかった?』

 俺が教室を出る時も大勢の男子生徒に囲まれていた蘆屋朔夜。

 なんとなく彼女からの視線を感じた気もするが、たぶん意識過剰や歯覚過敏の類だろう。


 そして現在。一人校門の前でガ○ナ立ち中の俺。

 ヒビの入った小皿のように充血した目を見開き……さすがにそんな某図御大のキャラみたいな顔はしてないか。


「(何あの○○○○の目したヤバい奴……)」


「(シッ! 聞こえたら何されるかわかんないよ!)」


 なぜだかわからないが顔を引き攣らせながら下校してゆく女生徒の流れを事細かに眺める。


「フッ、まるで見守り隊だな」


 もっとも、それで発見出来たのは探し人の彼女ではなく、


「あっ、九郎ちゃん!」


 主人公御一行と一緒にわいきゃいしている九重牡丹だったわけだが。


「さっき送ったヴァイパーに既読がつかないからもしかしてと思ってたけど。やっぱり待っててくれたんだ?」


「いや、九重のことは待ってないぞ?」


「えっとね。私、今日はみんなとカラオケに――えっ?」


 なぜかポカンとした顔になる九重。


「……私を待ってくれてたんじゃないの? それじゃあ九郎ちゃんはこんなところで何をしてたの?」


「何って言われても困るけど、強いて言うなら推し活?」


「なんか良くわからないことを言い出した……」


 そう。これは決してストーキングとかスニーキングなどといういかがわやましいものではなく崇高な待ち伏せなのだ。


「てことで、今の俺はとても忙しいからまたな。カラオケ楽しんでこいよ」


「うー……やっぱり今日の九郎ちゃんは私に対して冷たすぎると思う!」


 唸り声を上げながら頬を膨らませる九重。

 えっと、一緒に帰る約束をすっぽかされたのはこっちの方だよね?

 それを(生)暖かい笑顔で見送る俺のどこが冷たいというのか?

 思わず困惑顔になる俺の前、九重を押しのけるようにして前に出てきたのは。


「ふぅん」


 このゲームの主人公である葛葉(くずのは)晴明(はるあき)。

 てか『ふぅん』て何だよ『ふぅん』て。モスキート音かよ。

 胡乱な目をしながら視線を向けた俺に粘ついた、勝ち誇ったような顔をする葛葉。


「お前が牡丹の幼馴染の……なんだっけ? 太郎? 三太郎?」


「おう、初対面のお前にお前と呼ばれる筋合いはないけどだいたいそれで合ってるぞ」


 解ったうえで、わざと間違えてるであろう葛葉をそのままスルーする俺。

 何なのこいつ? 友達でもないのに『そんな名字がキャベツとかタマネギみたいな名前じゃねぇよ!』ってツッコミが欲しかったの?


「へぇ」


 少し意外そうな表情になるも、それでもこちらを見下したようなニヤついた目でジッと見つめてくる。


「なるほど」


 どうやらこいつの中で『何か』を納得――お互いの格付けが出来たようだ。

 いやほんとに、マジで何なのこいつ?

 ビックリするくらい会話が成り立たないんだけど?

 俺の記憶にある寡黙――ゲーム中の主人公の会話はぶっきらぼうな選択肢が出るだけで喋らない――な葛葉とはえらくキャラが違うんだけど?


「ハハッ、牡丹から聞いてた通りだな」


 『何の話だ?』と九重に顔を向けるも、軽く小首を傾げられただけ。


「お前って牡丹の幼馴染なんだろ? 俺にも昔からの付き合いの奴がいるけど大違いだと思ってな」


 いや、そんなこと知らん……こともないな、彼女もゲームのヒロインだし。

 でもそいつって頻繁に刃物振り回す、ヤベェタイプのヤンデレじゃん?


「何が言いたいのか良くわからんけど、俺は忙し――」


 あっ! 天逆はっけ……クッ! さすがくノ一!

 運動場側のフェンスを飛び越えて行きやがった!!


「じゃあ俺は急ぐから! またな九重!」


「えっ? あっ? へっ?」


「ああ! 母さんにはお前の今日の晩飯はいらないってちゃんと伝えといてやるから安心しろ!」


「ええっ!? 晩ご飯は普通に――」


 そう呟く九重と、


「ハハッ、確かに恥の上塗りをしたくなければ逃げるしかないよな!」


 優越感に浸った顔の葛葉をその場に残し、天逆の後を追うために駆け出す。

 ……もちろん追いつくどころか見つけることも出来なかったんだけどな!



 どうにかこうにか『天逆鬼灯』をひと目だけでも見ることが出来た学校生活初日。

 もっとも目に入ったのは一瞬であり、距離も遠すぎたため彼女の表情どころか体全体のシルエットくらいしか確認することは出来なかったんだけどな!

 まだ薄暗い部屋の中、扉が開いた小さな音に目を覚ました俺。

 そちらをぼーっと見つめれば、


「(全国の視聴者様おはようございます! 昨日、寝ぼけたお兄ちゃんに抱きしめられた、むしろだいしゅきホールドされてしまった瑶子(ようこ)です!)」


 何やら小声で呟きながら抜き足差し足こちらに近づいてくる妹様を発見。

 確かに? 寝ぼけて布団の中に引きずり込んじゃったのは俺だけど?

 足を絡めて抱きついてきたのはこいつのほうだよね?

 てか妹の名前って瑶子って言うんだ?


「(しかし! 昨日は残念ながらパジャマ姿だったため、お兄ちゃんの温もりを肌で直に感じることが出来ませんでした)」


 なるほど。

 だからこいつはまだまだ肌寒い四月の始めにビキニ姿で――


「いや、そうはならんやろ」


「へうっ!? えっ? どうして寝起きだけは良くないお兄ちゃんが朝の五時すぎから起きてるの!?」


「起きてるんじゃなくて奇行に走る身内に起こされたんだよ」


 ということで翌朝。

 うん、翌朝なんだけどさ。


「それで……どうして俺はまたこの部屋のベッドの上で目を覚ましてるんだ?」


「そうだよね? 一糸まとわぬ姿の二人、昨日は私の部屋で乱れに乱れ――」


「今は考え事で忙しいからちょっと黙ってて?」


「アッ、ハイ」


 確かにね? 視覚に聴覚、味覚と嗅覚、感覚まで含めて夢の中にしてはえらく『解像度』が高いとは思ってたんだよ。

 夢の中で良くある『時間が飛ぶ』とか『突然場面が切り替わる』とか『いきなり別の場所にいる』とかいうザッピングも無く、リアルタイムで時間の流れを感じたって言うかさ。


 でもほら、さすがに……ねぇ?

 一度寝て起きれば自分の家、アラサーリーマンの一人暮らしの部屋で目を覚ますと思うじゃん?


「もしかして……これって夢じゃなかった?」


「そうだよ! その通りだよ! お兄ちゃん大好きな妹も妹に欲情する兄も夢じゃなく現実にそこにある――」


「今はかまってやってる余裕が無いから静かにしてて?」


「アッ、ハイ」


 夢じゃない……いや、異世界ならともかくとして。

 ゲーム世界に飛ばされるとかさすがに現実離れしすぎだろ。


「ていうかそれが正しいのか早急に確認する方法……そういえば昔読んだラノベでゲームの中に閉じ込められた主人公がヒロインの胸を揉んでCEROの確認をする場面が」


「またお兄ちゃんが独特な寝ぼけ方してる……。ていうか揉むっ!? いきなり揉んじゃうのっ!?」


「そうだな、とりあえず母さんのところに――」


「どうしてそこで私じゃなくてお母さんに行くのかな!?」


 だってお前には揉めるようなモノが無いじゃん。

 ……などという茶番はどうでもいいとして。


 これは夢じゃなくてゲームの中。

 もしそうであるならば。


 現実世界、休みの日にゲームをしてた俺!!

 魔人戦記みたいな半ば鬱ゲーじゃなく、どうしてハートフルなエ○ゲーをプレイしなかったのか!?


 これまでに買った紳士ゲー。

 登場するヒロインたちとのイチャイチャ場面を想像――


「いや、何にしても俺が主人公じゃなくてモブキャラの時点で全部NTRモノになるんだけど!?」


「お兄ちゃんがいきなり暴れ出した!?」


 血の涙を流しそうな、悔しげな顔でベッドをポコポコと叩く。


「クソっ! 俺が……俺が駿河九郎でさえなければ……」


「えっ? お兄ちゃんは私のお兄ちゃんなのが嫌だった……はっ!? もしかしてそれって『お前の兄でさえなければ世間に何はばかることもなく……』ってこと!?」


「いや、今はそんな決まってしまったことを嘆いても仕方ないよな」


「そうだよ! お母さんたちに兄妹でナニをしてるのがバレなければいいだけだし!」


 欲望と願望がダダ漏れる、色々とヤバい妹様だった。

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