第04話 『まさかライバルがTSしているだと!?』
クラスでまとまり、C組担当である『鬼城院』に連行されるように入学式が行われる体育館まで移動。
何の関係も無いが、教官の名字がそこはかとなく下ネタに聞こえるんだけど……これは俺の心が穢れているからだろうか?
今年の新入生全員が集められた広い空間。
これはチャンスとヒロイン探して右左、キョロキョロと落ち着きなく辺りを見回す俺。
もっとも、クラス順に椅子に座ってしまえば視野に入るのは前列に座る人間の後頭部だけなのだが。
九郎の身長、男子高校生としてはそこまで高くないからなぁ……。
それでなくとも、俺がC組(前列)で天逆がG組(後列)の時点で探しようも無いんだけどさ。
さすがにこの歳で『電車で前の椅子の上に立って後ろをガン見するクソガキ』みたいな真似も出来ないからな。
後方確認は諦め、壇上に立つ校長の話をおとなしく清聴――するなどということはもちろんなく。
俺の視線は右サイドに並べられた教員席へと向う。
「お、いたいた。なんだよあれ……神楽坂教官美しすぎだろ……」
残念ながらクラス担当では無くなった『神楽坂帰蝶』教官で目の保養をする。
「はぁ……結婚してくれとまでは言わないけど俺のこと養ってくれねぇかなぁ……」
『今の俺ならワンチャンおねショタも受け入れられるのでは?』
などと妄想ていると『ギッ』という何かが床を擦った音が。
……どうやら隣の生徒に距離を取られたらしい。
あれ? もしかして声に出てた?
まぁそんな俺以上にモブな無も知らぬ男子のことなどどうでもいいとして。
……長い。校長の話がとにかく長い。
「ゲームだと三十秒くらいで終わるイベントムービーのはずなのに。これだから現実は」
いや、夢の中だから現実でも無いんだけどさ。
何にしても初回からスキップ出来ないクソ長イベントムービーとか、あちらこちら無駄にタップさせるだけのチュートリアルなんてプレイヤーのやる気を削ぎ落とす害でしか無いと声を大にして言いたい!!
仕方なく、眼力を強めながら神楽坂教官の観察に神経を一点集中することに。
あっ! 今目が合った気がする! そして『ビクッ!』としたあと目をそらされた。
『――続きまして、今年の成績優秀者による挨拶に移ります』
……そんなことをしているうちに、いつの間にか校長の話が終わったらしい。
確か学年首席って主人公の幼馴染の――
『1年C組、蘆屋朔夜だ』
ん? ……んんっ? あの脳みそが筋肉で出来ている蘆屋が学年首席って何の冗談だ?
「ていうか今の声……」
スピーカーから聞こえてきた『違和感』に、思わず視線を壇上へ向ける。
そこに立っていたのは俺の知る蘆屋――『蘆屋玄真』その人ではなく。
そもそも自己紹介で聞こえてきた名前が違ったし、当然と言えば当然のことなんだけどさ。
「ていうか、名前どころか性別からして違うとかどういうことだよ……」
ここに来てまさかの新キャラ登場?
俺がプレイしてたのが『クロニクル版』だったから何らかの変更があった?
はたまた俺の、
『いつもいつも隙あらば絡んでくるとかウザすぎだろこいつ……。でも、もしこいつがヒロインだったらワンチャンツンデレ可愛いかも?』
という想いが運営に届いた?
真ん中から左右にくっきりと分かれたシルバーと薄紫の髪。
それを金糸で縁取られた黒いリボンでツインテールにまとめ。
ビスクドールのようなきめ細やかな肌は不健康なまでに白く。
こちらを射抜くような鋭い眼差しはまるで猛禽類を思わせる。
「ていうか何だよあの制服のボタンがはち切れそうな胸部装甲は……牡丹さん(もたざるもの)にも少しだけでも分けてあげて?」
話す雰囲気や言葉遣いは俺の知ってる蘆屋玄真そのままに横柄――というかその髪色はいったいどうなってんだよ。
そしてその圧倒的なまでの戦闘力で見逃してたけど彼女の首元。
他の女子生徒は全員赤のリボンなのに一人だけ紫とか髪の色に合わせたのかな?
……何にしてもである。
性格のキツそうな、むしろ性格の悪そうなヒロインとか……最高じゃね?
そんな彼女の挨拶もいつの間にか終わり。
内容? まったく覚えてませんが何か問題でも?
神楽坂教官と壇上に立った蘆屋以外のヒロインを見つけられないまま入学式も終わり、のんびり教室に戻るとその一角に出来ている人だかり。
もちろんその中心に居るのは。
「蘆屋さん! さっきの挨拶凄く良かったよ!」
「蘆屋さんってどこから来たの? この辺の中学じゃないよね?」
「ねぇねぇ! よかったらこの後俺達と」
「黙れ」
褒めそやす男どもを蔑みきった目で睨みつける蘆屋朔夜。
そう言えばゲームでも『蘆屋玄真(男)』が女子生徒に囲まれるシーンで「黙れ!(ドン!)」をやって机が真っ二つになる場面があったな。
「えっと、もしかして何か怒ってる?」
「怒ってなどいない。そもそも怒る価値を感じない。とっとと散れ」
「まぁまぁそんな固いこと言わないでさ!」
「美人だからアリっちゃアリだけど、もうちっと愛想良いほうが可愛いと思うんだけど?」
「貴様らのような、ストレートな意味での醜男に好まれようとは思わん」
おおう、性別が変わっても相変わらず口の悪い。
あれだけの美少女、もちろん俺だって興味が無いわけではないんだけど……下手に近寄りでもすれば、あの毒舌で罵倒されて凹むだけなので遠くから眺めるだけに留める。
いや、それはそれで一部界隈には需要があるんだけどな?
そもそも今日の俺には『天逆鬼灯をひと目でも見ておく』という大切な使命があるのだ。
G組に向かう……それとも校門前で待つ方が確実か?
あわよくばそのまま『一緒に下校(後ろを歩き)』、彼女が吐き出す二酸化炭素を堪能するというのも……あっ、スマホがバイブレーションしてる。
まぁ確認するまでもなく九重が『クラスメイト(という名の主人公御一行)』と遊びに行くっていう連絡だから確認する必要も無いだろう。
……それにしてもあれだな。
主人公サイドじゃなく、モブキャラ視点で幼馴染ヒロインを見るとか、これもう完全な寝取られだよな。




