第06話 『なら大事な幼馴染をまかせても安心だな!』
そんなこんなで。
朝から俺のヒロインランキングが大きく変動。
十位圏内どころか最下位争いをしそうな位置まで落ちてしまったら九重と一緒に学校へ。
「今日はこれから全員の『異界適性』を確認する。言うまでも無いとは思うが適正というのは――」
確認用の『機械(魔道具?)』が設置されているのは保健室。
ゲーム内ではゴテゴテとケーブルに繋がれた、水晶玉のような見た目の機械だった記憶。
ちなみに担任が言う『異界適性』とはゲーム内におけるキャラクターの役割、RPGで言うところの職業のようなモノで。
大まかにわけると、
近接武器を使い防御力も有り、直接攻撃を得意とする『前衛系』。
属性魔法や飛び道具の扱いに長けた『後衛系』。
強化魔法、いわゆるバフや回復に特化した『補助系』。
装備品や薬品などの改良・修理・作成が出来る『生産系』。
の四種類――とはいえ。
例えば前衛なら騎士や侍、後衛なら火魔法使いや狩人などなど細かく得意分野が別れてるんだけどな。
もちろん補助系や生産系だからといって攻撃が出来ないということは無い……んだけど。
前衛・後衛適性者が最初から戦闘に役立つスキルを持っているのに対し、かなりの時間を掛けて後天的にスキルを習得する必要があったり。
そして、先にも言ったように俺が(ゲームで)持っている初期スキルは『アイテムボックス』のみ。
一応補助系になるが、アイテムも装備品もまともに手に入れられないチュートリアル中の戦闘では『身を守る』以外の行動もとれなかったという……。
先に鑑定を受けた生徒たちが喜びや小さな不満の声を上げる中――
「次! 駿河九郎!」
いよいよ回ってきた俺の番。
調べなくとも、俺のスキルがアイテムボックスであることは分かってるんだけど……ここ、これからの運命を左右するというか『このままこの学校にとどまるかどうか』の分かれ目だったりする。
「ただのアイテムボックスは嫌だ。ただのアイテムボックスは嫌だ。ただのアイテムボックスは嫌だ」
小さく呟きながら直径三十センチはあるだろう水晶玉に手を触れる。
「駿河九郎、異界適性は『荷運び人』。スキルは『アイテムボックス・レベル1』。補助系のようですね」
「……よし! よしよしよし!!!」
適性が伝えられ、ガッツポーズで喜ぶ俺と、『可哀想に……』というか『うわぁ……近寄らんとこ』というような目を向けてくるクラスメイトの温度差よ。
うん? 『アイテムボックス持ちがアイテムボックスを持っていたことをどうして喜んでるのか?』が気になる?
それはほら、俺がプレイしてたゲーム。
魔人戦記なんだけど、その中でも『クロニクル版』だったことが関係してたり。
そう! バニラ版の一作目だと九郎のスキルはただの『アイテムボックス』。大量の荷物を入れることが出来るだけのモノだったんだけど、シリーズが進むごとに色々な要素が実装され、レベル表記が追加されたのだ!
……もちろんそれで『直接的に』戦闘能力が上がるわけではないんだけどな。
クラス全員の適性検査もつつがなく終了。
教室へと戻ってきたC組の面々。
何人かの生徒は早くもスマホ片手に、先に検査の済んでいるA組やB組の友人たちと連絡を取ったり。
「俺は『槍使い』だったんだけど」
「なんだよ、お前も前衛かよ」
「あっ、私ディーコンだったからヒール持ってるよ」
「大根が回復魔法使うってどういうことよ……」
「大根じゃなくて助祭だから!」
教室内でも分かりやすく戦えそうな面々で誰と組もうか牽制し合ったり。
もちろんそんな中でも『弓腰姫』という、なかなかにレアっぽい後衛適性を引いた蘆屋の回りは物凄い人だかり――ってまた目が合ったな。
何なの? もしかして俺に惚れて……絶対に無いな。
そして、ゲームの流れだとそろそろ後ろの扉から――
「九郎ちゃん! 適性はどうだった!?」
九重牡丹が駆け込んできた。
「おう、俺は予定通りの『荷運び人』。スキルはアイテムボックスだけだな」
「予定があったの!? ていうか荷運び人? それって……」
正直に返事をしだけなのに、なんとも言えない表情をする九重。
さすがに失礼だろ! と思わなくもないが、クラスメイトもほぼ全員同じような顔をしてたので仕方ない。
そんな居心地の悪い空気を読んでか読まずか、
「フッ、ハハハッ!」
九重の後ろから聞こえてきたのは葛葉の人を小馬鹿にした笑い声。
お前、さすがに主人公がその笑い方はどうかと思うんだけど……。
「えっとね、私は『氷の魔女』で後衛だったんだけど」
なんとなく気まずそうにそう口にした九重の視線が俺と葛葉の間で行ったり来たり。
もちろん俺の予想してたゲームの流れそのままなんだけど……こいつ、入学前は九郎に、
『私がどんな適性でも九郎ちゃんはパーティ組んでくれるよね?』
なんて保険掛けてたからな。
まぁ事情を知らない人間からすれば『荷運び人』とか役に立ちそうもないし、そういう反応にもなるだろう。
ていうか主人公! いたたまれないから早くこのイベントを進めて! 役目でしょ!
そんな俺の想いが届いたのか、
「牡丹」
葛葉が九重の肩にポンと手を置く。
「だから言っただろ? 幼馴染か何かしらないけどさ。そんなお荷物……いや、荷物持ちと二人で組むとか無理に決まってるってさ」
……こいつ、ゲームに出てきた三択の中で最悪の奴を選びやがったぞ!?
「まぁでも、牡丹がどうしてもっていうなら」
ニヤケ顔のまま俺のことを見下ろす葛葉。
「そいつも俺のパーティに一緒に入ればいいだろ」
「……ホントにいいの?」
ホッとした顔で葛葉を見つめる九重。
「良かったね九郎ちゃん! 晴明くんもこう言ってくれてるし」
「いや、まったく良くないけど」
「えっ? ええっ!? どうして?」
だって俺、このまま流されてお前らとパーティ組んじゃったら異界の中で魔人に殺されちゃうからな?
……いや、それがなくとも今の主人公様と一緒に組むとかご遠慮仕るけど。
「どうしても何も……知らない人とパーティを組むとか誰かに見られたら恥ずかしいし」
「大丈夫だよ! ちょっととっつきにくいところはあるかも知れないけど、こう見えて葛葉くんって優しいんだよ?」
「確かにそうだろうな。男女比で一学年の女子が三割くらいしか居ないこの学校でハーレムパーティ組んじゃうような奴なんだから女の子には優しいんだろうな」
「お前っ……!!」
「おっと、思わず本音が。さっきのは心の声ってことでキャンセルで。『なら大事な幼馴染をまかせても安心だな!』これならいいよな?」
教室内のあちらこちらから聞こえてくるクスクスという笑い声に顔を真っ赤にする葛葉。
「二度目は無いからな!? ……後悔するなよ?」




