第18話 『見てないところでもやらかしてる葛葉』
なんとなくと言うか、本格的にというか。
俺の知っているヒロインの性格と、そこそこ隔絶した雰囲気を醸し出す彼女たち。
もっとも、この世界はゲームじゃなく現実なんだし? 当たり前っちゃ当たり前なんだけど。
「では改めまして! ……とその前に。まずは集まってもらった側なのに、遅れて到着したことに謝罪から」
「別にそのようなことは気にしてはいないです。といいますか、時間がもったいないので早速本題――いえ、やっぱりいいです。聞かなくとも分かるのです」
「えっ、そうなの?」
呼び出した本人ですら100%何がしたいのか見定まってないのに?
ちなみに昨日、彼女たちに送ったメッセージには――
・自分はC組の駿河九郎であること。もう一人、蘆屋朔夜がいること。
・出来れば顔を合わせて話しがたい。それから相談したいこともあること。
・他にも誘った人間が居ること。 ~本人以外の誘った人間の名前を添えて~
って感じで、フワッとしたことしか書いてなかったんだけど?
「あれですよね? 『お前が役立たずってことは分ってるけど、仕方なく俺のパーティに入れてやるよ! だからちゃんと俺の言うことを聞けよ? もちろん性的な意味でな!』ってことですよね?」
「貴様……やはり最初からそういう魂胆だったのか!?」
「Wait! Wait! Wait! ちょっと待って! 半分は当たって無くもないけど、残りの半分が大きく食い違ってるから!」
「それは……パーティには入れないけど言うことは聞けってことですか?」
どうしてこの子は『半分』って言われて『そっち側』を残してしまったのか?
「そんなこと考えてないから。ボタンを掛け違えるどころか着ていく服から間違ってるから。葬式にウエディングドレスで来ちゃってるから」
「フンッ! それはどうだろうな!?」
てかどうしてお前が先頭に立って俺を糾弾する側に回ってるんだよ。
蘆屋には昨日、教室で懇々と。いかに水無瀬たちが優秀かを説いて聞かせてあるよな?
そんな彼女の言葉に『とうとう馬脚を表しましたね。これ以上反論の必要があるんですか? では後日、法廷で会いましょう』とでも言いたげな顔で俺を見つめる水無瀬と神楽坂。
そこはせめて、ちゃんと人の話を聞いてから判断して?
「オーケイ。一旦お互いに冷静になろう。というか、まずは双方の言い分の整理をしよう」
まずは俺の名前……は、さすがに知ってるか。
昨日みんなに送ったメッセージでも名乗ってあるし。
そうでなくとも、メッセージの送信者欄にフルネームで表示されてるからな。
「で、俺がみんなに集まってもらった目的なんだけど」
「……あぶれている女からなら搾取が捗ると思ったからですよね? 性的な意味で」
こいつは俺のことをカブトムシか何かだと思ってるのかな?
そしてすべての事柄がいかがわしくなるから語尾に『性的な意味で』を付けるの止めろや!
「クッ、こんな爽やかな青少年を捕まえて。まさかの開始早々、アニメならオープニング曲の前に流れるあらすじ部分から意識が食い違ってたのかよ」
「食い違いって何ですか? ていうか、わたしだけじゃなくスミレンも誘ってる時点でもう魂胆はバレバレなんですよ? あなたもあいつ……クズ男の仲間ですよね?」
あの(ゲームでは)天真爛漫だった水無瀬木蓮はどこにいってしまったのか?
何があって、そこまで荒んだ目になってしまったのか?
てか誰なんだよそのクズ男って?
俺の知ってるヤツで、『クズ』っぽい響の名前なんて葛葉しかいない――
「フッ、語るに落ちるとはこのことですね。やっぱりあのクズの仲間だったんじゃないですか!」
まさかの葛葉本人のことだっただと!?
「……ていうか入学早々にそこまで嫌われるのも逆に凄くないか?」
あいつってば一体何をやらかした――
「さっきも言ったでしょう? 『お前って鍛冶師なんだろ? ハハッ、異界攻略には何の役にも立たないゴミみてぇなジョブだな! お前なんて居ても居なくても同じだが……お前にとって幸運なことに、今なら俺様のパーティ枠が一つだけ空いている。どうだ? 嬉しいだろ?』ですよ!」
あっ、それって俺が言いそうだと思われたんじゃなくてすでに言わたヤツだったんだ?
「ていうかあいつ……。俺ってか男相手の時だけじゃなくて、女の子にもそんな態度とってたのかよ」
「貴様は何を今更。クズ……ノハは物心ついた頃からそんな感じの男だったぞ? 限りなく横柄で、根拠無く自信過剰で、『こいつの家には鏡が無いのか?』と思ってしまうほどのナルシストだぞ」
なんだそれは……。少なくとも俺が知ってる葛葉に、そんな一面は無かった――いや、本当にそうだろうか?
薄ぼんやりと思い出した、ゲームに登場するヒロインとの三択画面。
その三番目に必ずあった、プレイヤーからは『シナリオ担当のウケ狙い』だとしか思われていなかった俺様系の選択肢。
もしかしてもしかすると……アレが葛葉晴明の『素』の性格だったとしたら?
「もうね。あまりにも意味が分からなすぎて、思わずその場で固まっちゃいましたよ」
「だよねー。さすがにあれはビックリするよね?」
水無瀬の『ケッ!』というため息? に、呆れ顔で追随した神楽坂菫。
ていうかヤサグレ系ロリコンビとかある意味新しいカップリングだな。
「あいつ、それをわたしが考えこんでいると勘違いしたみたいでさらに調子に乗って」
『ハハッ! でも、さすがに完全に役立たずを連れて行くのもな。……そうだな。とりあえずは俺の好きな時に――』
そこから始まるのは、昭和のオッサンでも口にしないようなセクハラ発言の数々。
何だその『揉む』『埋まる』『挟む』の三段活用……。
葛葉。アラサーリーマンをドン引きさせるとか、思った以上の逸材だった。
「で。それを耳にしたあなたも隙あらばと、こうして私たちに声を掛けてきたんですよね?」
「全く違うけどね? そもそも俺だってあいつの誘いを断った仲間だし? ジョブだってみんなと同じのサポート職仲間だし? それも役立たず扱いで言えば一番の荷運び人だし?」
ていうかあいつ。もしかして天逆にも同じようなことを言った……天逆のところにはまだ来てないのか。
「ほら、うちは放課に遅くまで教室に残ったりしないし?」
「あー、確かに。天逆ってクラスに話し相手とかいないもんな?」
「い、い、い、いるし! いっぱいいるし! 超いるし! G組だけでも二百人くらいいるし!」
「天逆。残念ながら黄龍学園はどの学科に限らず、『1クラス40人まで』と決まってるんだ」
そのギャル的ルックスからは想像出来ないくらい挙動不審な天逆が小学生のような見栄を張る。
そんないつも(ゲーム)通りの彼女に、思わず生暖かい顔になってしまう俺。
そのまま、これまでほとんど声を出していない残りの一人である藤宮にも目を向け――
「……うぬの視線はどうして妾のことを素通りしたのかや?」
「答えてもいいけど、きっと心に大きな傷を負うことになると思うよ?」
「あなたはいったい何を言うつもりなの!?」
相も変わらず、感情の揺れが大きいときはキャラがブレてしまう藤宮であった。




