第17話 『……貴様は中々に業の深い男だな』
蘆屋と二人、仲良く並んで――
「べっ、別に仲良くした覚えなど無いのだが!?」
「話が進まないから無駄なツンデレを挟んでくるの控えて?」
パーティメンバーの選考をしたのが昨日のこと。
もっとも、勧誘のためのメールを送信したはいいものの……。
「メッセージを送った全員が『それなり以上に』クセの強い連中だから、ちょっとだけ心配してたんだけど」
「誰も断りの連絡を寄越してはこなかったのだろう? なら話くらいは聞きに来るのが普通ではないか?」
その日の(その日も?)待ち合わせに指定した場所は学食の外に設えられたテラス席。他に大人数で集まれる場所を知らないから仕方ない。
午前の授業が終わってから十五分ほど経った頃、俺と蘆屋がそこに到着した時にはすでに全員が集まっていた。
……それにしてもあれだな。
一般受けする、いわゆるメインヒロインと呼ばれるようなキャラは全員主人公パーティに参加しているとはいえ、さすがにこれだけの人数のゲームキャラが一堂に会している状況はなかなかに壮観なものだな。
感慨深げに繰り返し『ウンウン』と頷く俺の隣から、
「一応確認しておくのだが、集まっている連中の特徴。全員が全員、どことは言わんが妙に大きいと思うのは私だけか?」
蘆屋が感情の無い声で圧を掛けてくる。
「そうか? 水無瀬にせよ神楽坂にせよ高校生にして小柄な方だと思うけど?」
「もしも身長の話なら最初から身長と口にしているのだが!?」
もちろん分ってはいるんだけどな?
この距離でも伝わってくるあの重厚感。
水無瀬を筆頭に、みんなふくよかなモノをお持ちだもんね?
「というかそれを言うなら蘆屋だってかなり大きい」
「貴様、いきなりのセクハラか!?」
……俺はどう返事するのが正解だったんだよ!
そもそも俺は乳派閥ではなく尻派閥なのだ。
ていうか女子に集まってもらってそうそう、俺個人の性癖の話とかどうでもいいんだよ。
俺達から見て真正面に座っているのは水無瀬木蓮。
150センチほどの身長に、100センチはあろうかという巨大な某。
ピンクブロンドの髪と、真っ白な肌が特徴的なチミっ子少女。
魔装具鍛冶師というそのジョブから、ついたあだ名は『ロリドワーフ』。
うん? ドワーフの女性にヒゲ要素はあってもロリ要素は無いだろうって?
お前は何を言ってるんだ? (日本限定で)ドワっ娘といえばロリババアだろうが!
「……あれは間違いなく私以上だな」
彼女の左隣に座って足をブラブラさせているのは神楽坂菫。
こちらも150センチほどの身長に、水無瀬と比べて勝るとも劣らぬご立派な某。
南国の太陽に映えそうな、群青色の髪を二つ編みにした褐色肌の『陽』のチミっ子少女。
重いものをお持ちではあるが陸上選手のような引き締まったその外観から、ついたあだ名は『ロリホ○ット』。
そもそものホビ○ト族が全員ロリショタみたいなもの?
冷静にやつらの顔を見てみろ。そこそこの年配者が大量に混ざってるから。
そんな二人をジッと見つめていた蘆屋が俺の方に顔を向けたかと思えば、
「……貴様は中々に業の深い男だな」
「お前は間違いなく大きな勘違いをしている」
確かに、そこだけ切り取るとお巡りさんを呼ばれそうな絵面だけれども。
同じ席にはあと二人座ってるから。
てなわけで、神楽坂のお向かいさん。
小柄だった先の二人とはうってかわり、彼女の身長は170センチほど。
黒髪ロングヘアな大和撫子――と言って良いのだろうか?
間違いなく和装と和室の似合う……というより『廃屋になった日本家屋』が似合いそうな、全身から『陰』の気を放っている藤宮花音。
彼女のトレードマークは組み紐で出来た髪飾りと、ローブのように羽織った黒いレースのケープ? ブーケ?
本人は『ミステリアスな美少女』を自認しているらしいのだが、そのあだ名は『背の低い八尺様』である。
「……貴様から聞いてはいたが、確かにアレでは誰からも」
「その先を口にするのは止めてさしあげろ」
最後になってしまったが、残っている一人はもちろん『俺の一推し!』である天逆鬼灯。
藤宮より少しだけ低いが、それでも165センチとそれなりの高身長。
金髪ポニテに、太陽を感じさせる神楽坂とは違い日サロを思わせる褐色の肌。
三つ目のボタンまで外されたブラウスから大きく胸元をさらけ出し、スカートの下は黒いガーターベルト。
食堂だからか、普段口を覆っている大きめの黒いマスクを外されたその唇はぷるっとしたピンク色で。
もっとも、彼女の一番目立つ特徴と言えば――
「なぁ、あの女の耳はどうして尖っているのだ?」
「ああ、あれはああいうイヤーカフを付けてるからだぞ?」
「……いったい何のために?」
それは天逆の中で『色っぽい女性=ダークエルフ』という、訳の分からない図式が成り立っているから。
というかギャルギャルした外観の彼女だが、その内面は人見知りの箱入り娘そのもの。
さすがに蘆屋朔夜ほどでは無いが、生粋のお嬢様育ち――いや、お嬢様育ちの忍者ってなんなんだよ!
ちなみに彼女が異界で活動する時の姿は完全に対○忍というプレイヤーサービスの固まり。
「ゴメン、こっちから声を掛けておいて待たせちゃったかな?」
そう声を掛けながら、彼女たちの席に近づく俺と蘆屋。
うん。近づいたのも、声を掛けたのもいいんだけど……なんかこうすごい違和感というか、天逆以外の全員が妙にやさぐれた雰囲気を醸し出してるというか。
「……もしかして、本当に物凄く待たせちゃった?」
「……いえ、全員五分も待ってません」
そんな返事をくれたのは水無瀬木蓮。
なんというか、思ってた声と違う!
ゲームの中では、もっと甘ったるい喋り方だったよね?
テンションの高い時の『あ○ねる』みたいだったよね?
ていうかこいつ、目の下のクマが凄いんだけど? 髪もボサボサなんだけど?
「あれ? 水無瀬さんって猫耳のカチューシャしてなかったっけ?」
「どうしてあなたがそのことを? ……あれは昔の愚かな自分と一緒に封印しました」
「なにその厨二病。完全に藤宮と被ってるじゃん」
「私は……コホン、妾はそのようなことは言わぬ」
急に振られたからか素で答えそうになった藤宮はどうでもいいとして。
たかだか入学一週間で、水無瀬にいったい何があったというのだろうか?
もっとも、それを言うなら神楽坂だって瞳に光が無いように見えるし、藤宮もとても辛気臭い――
「いや、藤宮が辛気臭いのはいつものことか」
「あなた……じゃなくて。先程からうぬは妾に対してだけ妙に辛辣ではないか?」
だってお前、ちょっとでも優しくするとすぐに調子に乗るじゃん?




