第16話 『イカした(イカれた?)メンバー候補!』
蘆屋と二人で肩を寄せ合い――さすがにそこまで近くは無いな。
C組の蘆屋の席の前に腰を下ろし、ああでもないこうでもないと言いながら新たに組むことになったパーティのメンバー候補を選定すること小一時間。
「どうよこれ? 俺的にはほぼパーフェクッ! かなりイカした面子を選べたと思うんだけど?」
「どうと聞かれてもな……。私はそれらの人間とはまったく面識がないから何とも言えんが」
「フッ、面識が無いってことなら俺だってまったく無いんだけどね?」
「なら貴様のその自信はいったいどこから出てきたモノなのだ!」
もちろん(ゲームの)経験と(攻略本の)知識である。
「というか私の記憶がさだかならば、入学早々にクズ……ノハが貴様のことを誘いに来た時、奴のことをハーレム野郎と罵っていたはずだが?」
「何となく一部『蘆屋の感想』で改変されてる気もするけど。似たようなことは言ったかも?」
「で? その貴様自身が? パーティを集める段になれば、女子の名前しか挙げていないのは? 一体どういう了見なのだろうな?」
「んー、たまたまじゃないかな?」
「都合の良い偶然もあったものだな!」
「いやね? もちろんちゃんとした理由はあるんだけど……ほら、ここで言い訳がましいことを言うのもね? なんかほら、浮気を咎められてる新婚さんみたいな気分になっちゃうじゃん?」
「誰が新婚ホヤホヤの初々しい若妻みたいだ!」
「言ってない言ってない」
もちろんそんな中途半端な言い分を納得してくれる蘆屋ではないので、ことこまかに説明する羽目になるのだが。
「ていうか、本当に大した理由では無いんだよ? ほら、上から下までよく見れば分かるだろ?」
「……貴様は睫毛が長いのだな」
そんな一昔前のラブコメみたいな返しは要らねぇんだよ!
リストをちゃんと見ろよリストを!
「ほら。サポート職に並んでる名前。ほとんどが女子じゃん?」
「言われれば確かにその通りだな」
そう、何故か――というほど不思議でも無いが、男子生徒は戦闘職の人間の方が多いのだ。
さらに、数少ない男のサポート職はそのコネを十全に使って男同士でパーティを組んじゃってる……というか、知り合いに寄生してるし。
てことで。
入学から既に一週間が経過した今日このごろ。
未だにソロで残ってるような奴は『限りなく集団行動に向かない連中』ってことになるんだよ。
「蘆屋はそんな連中と一緒に行動したいと思うか?」
「貴様はブーメランという言葉を知っているか?」
俺はほら、主人公さえちゃんとしてれば異界に入る必要を感じてなかった人間だから! 修繕した魔石を売っぱらうだけで左うちわのハズだったから!
もっとも、女子で残っている人間が全員まともなのかと言えば……蘆屋を見れば分かってもらえるよな?
「そもそもの話、俺が名前を上げた理由は女子だからじゃないし? 潜在能力が高い人間だからだし?」
「ほう? それはそれは、大した説得力だな? 貴様は先程『全員と面識が無い』と言っていた気がするのだが? では、とりあえず全員分。その潜在能力とやらを詳しく聞かせてもらおうか?」
こいつ、サラッとした性格をしてそうな割に――いや、金持ちなんてだいたいは性格のひん曲がった奴しか居ないか(ただの言い掛かり)。
そんな、とてつもなく面倒くさいことを言い出した蘆屋。
もっとも。彼女たちはこれから一緒に、全員でラスボス倒すことになるメンバーでもある。
仕方なく、本当に仕方なくだが俺の覚えている範囲の情報を話すことに。
「そうだな、まずは一人目の『水無瀬木蓮』だけど」
「そいつの名前は『もくれん』ではなく『むーらん』だったのか!?」
別にそこは引っかかる必要無ぇんだよ!
――てなわけで水無瀬。
ジョブは魔装具鍛冶師。
「他のサポート職とは違い、鍛冶師だけはそれなりの人数の男子生徒がパーティに入っていなかったと思うが?」
「あー、確かに。男子も数だけは多かったな」
しかし、しかしである。
ほとんどの魔装具鍛冶師は『剣や槍などの前衛武装』、『銃や弓などの後衛武装』と(スキルレベルがどれだけ上がっても)作成出来る品が特化しているのだ。
そんな中、なんと彼女は何でもこなせるオールマイティ!
あと水無瀬家の親父さんはゲーム基準でもそれなりに有名な鍛冶師だったらしく。
ゲーム内でも確率は高くなかったけど『仕事が詰まっていない』判定が出た時に限り『素材の持ち込み』だけでC級以下の装備品をタダで作ってもらうことが出来た。
「なっ、オールマイティだと!? それが本当なら凄いことだな」
「……どうしてお前は俺のことを疑いの眼差しで見る?」
てか一作目では誘うことの出来る魔装具鍛冶師は水無瀬だけだったからオールマイティもクソもなかったんだけどさ(鍛冶師が作成できる装備品の特化は二作目から改悪された)。
そんな水無瀬が主人公パーティに入っていないなら、他の奴を選ぶ理由など何も無いのだ。
「なるほど、水無瀬のことは理解した。では『神楽坂菫』は――いや彼女に関しては、そもそも採掘人というジョブを得た人間がほとんど居なかったのだよな」
そんな彼女に関しては、ストレートに『鉱石精錬』スキル持ちだから。
普通なら採掘した鉱石類を施設に持ち込んでインゴットにしてもらう必要があるんだけどな? 彼女はMPさえ残っていれば、その場で加工することだって可能なのだ。
「なんだその、全国の加工業者がよだれを垂らして欲しがりそうなスキルは!?」
「もちろんそれだって彼女の採掘スキルがレベル10まで上がってからの話なんだけどさ」
「貴様、もしや鑑定スキル持ち――いや、鑑定持ちだとしても未来に覚えるスキルまで見ることは出来んか。しかし……その話は本当なのか? もしも私を言いくるめようとしての虚偽だとしたら容赦はせんぞ?」
「少なくともこんな、すぐに分かるようなことで。せっかく仲良くなれた蘆屋を騙すようなことはしないから大丈夫だぞ?」
そんな俺の一言に、何故か「べっ、別に仲良くしてなど……なくもないが……。そ、それもそうだな……」と、小さな声でゴニョゴニョ。
上目遣いでチラチラこちらを見つめてくる蘆屋朔夜。
……いや、何その反応? ちゃんと人の話聞いてた?
言い換えれば、『すぐにバレない嘘なら騙すこともあるよ!』ってことだぞ?
「……神楽坂には明確過ぎる理由があったのだな。さて、次は『藤宮花音』だが」
「藤宮は――というかバッファーに関しては、こいつじゃなくても誰でも良かったんだけどな?」
「……ならどうして藤宮なのだ? 貴様、もしや見目で選んだのか?」
「違ぇよ。そいつはほら、パーティのムードメーカー――にはなり得ないな。まぁほら、見た目からしてかなりの変わり者だし? 単純に面白そうだったから」
「何だその最低な理由は? というか藤宮は普段、一体どのような格好をしているのだ?」
「あと、こいつに関しては誰にも誘われなさそうなので可哀想だと思った」
「あっ、そういうタイプの……」
ここには居ない藤宮に送るように、憐れみの目で遠くを見つめる蘆屋。
……明日は我が身って言葉知ってる? お前はお前で同類に近いモノを持ってるからな?
そして、『ソロでコツコツ活動する』ことと『ラスボス退治につきあわされる』ことのどちらが可哀想なのかは不明である。
「……彼女には優しく接してやるとしよう。さて。最後に残った、貴様からよく名前の出る『天逆鬼灯』だが」
「そうだな! もっとも、天逆に関しては説明の必要も無いと思うが」
「むしろ一番詳しく聞かせてもらいたいのだがな?」
いやほらだって。
見た目からしてもうね。
『金髪ギャル』『褐色肌』『くノ一:もしかして対○忍?』でおなじみの、あの天逆だよ?
「まったく何の説明にもなっていないのだが? というか対○忍というのは一体何だ?」
「叡智な格好をした忍者の総称?」
「貴様は忍者を何だと思っている? そして、ここに来てただの下心かっ!?」
忍者の文句は俺じゃなくFA○ZAにでも言ってくれ。
「せやかて蘆屋。天逆って耳にダークエルフ風のイヤーカフまで付けてるんだぞ? さらにさらに。くノ一を名乗り、対○忍みたいな衣装で活動してるくせにちょっとした下ネタでも顔を真っ赤にして俯いて照れるんだぞ可愛い。これもう意味がわかんねぇだろ?」
「意味がわからんのは貴様の性癖だろうが!!」
……まぁそのなんだ。
エセビッチギャルが嫌いなオッサンなんていません! ってことだな。




