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作者への反逆〜転生したので、春の運命を書き換えてみせます〜  作者: 太幽


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18/22

第18話「父娘の時間」

第18話「父娘の時間」



忠助を見送ってから数日が過ぎた。村にはいつもの静けさが戻り、人々は来るべき春に備えて、田畑の手入れや種もみの準備に追われていた。


椿は、十兵衛たちと暮らす家の縁側に座り、ぼんやりと庭を眺めていた。梅のつぼみがほころび始め、かすかな春の気配が漂っている。


胸の奥に、ぽっかりと穴が開いたような感覚があった。忠助を送り出した安堵と、もう二度と会えないかもしれない寂しさ。その両方が、彼女の心を静かに揺さぶっている。


(シロは、ちゃんと老夫婦に会えたかな)


手のひらには、まだ忠助の毛並みの感触が残っている気がした。あの硬い傷跡も、耳の後ろの柔らかい毛も、指先が覚えている。本で読んだ通りなら、雪の中を行き倒れていた忠助は、善兵衛と花乃という老夫婦に拾われ、「シロ」と名付けられて大切に育てられる。それは、戦場で「鬼の犬」と呼ばれた忠助が、初めて「誰かの家族」になる瞬間だった。


(私は、そのすべてを見届けられない。それが、影の戦士の宿命だ。忠助が桜の奇跡を起こす頃、私は——もうこの世にいない。それが、この時代を生きる人間としての、私の寿命なのだろう)


彼女は自分の手を見つめた。忠助の血で汚れ、忠助の頭を撫でた手。あの温かさはもう、戻ってこない。忠助の長い犬生を、自分は最後まで見守ることができない。その事実が、彼女の胸に冷たく落ちてきた。


「春」


声がして顔を上げると、衛門が立っていた。その手には、一通の文が握られている。表情はいつも通り落ち着いているが、その目にはかすかな翳りがあった。


「衛門さん、どうしたの」


「時雨から報せだ。圓が、再び動くらしい。目的は不明だが、どうやら秀吉様の命ではないようだ」


「圓が……」


「ああ。圓は、自分の意思で何かを探している。時雨は『圓の動きに不穏なものは感じられないが、目が離せない』と言っている」


衛門は文を懐にしまい、椿の隣に腰を下ろした。


「私は、圓に会ってから、ずっと考えている。父親として、今の私に何ができるのかを」


「衛門さん……」


「私は、二十五年間、娘を探し続けてきた。ただ、生きていてほしい。それだけを願って。そして今、圓は確かに生きている。自分の足で立ち、自分の道を歩んでいる。それだけで、私の願いは叶ったのだ」


衛門の声は静かだった。でも、その言葉の一つ一つに、長年抑え込んできた父としての想いが滲んでいる。


「だが、そう思えば思うほど、私は欲が出る。もっと圓と話がしたい。もっと圓のことを知りたい。できれば、共に生きたい」


「……それでいいんじゃないかな」


椿は衛門の顔を見つめた。


「衛門さんは、圓のお父さんなんだから。娘ともっと一緒にいたいって思うのは、当たり前のことだよ。親として、当然の気持ちだと思う」


「そうか……」


衛門は小さく息を吐き、空を見上げた。冬の雲が、ゆっくりと流れている。


「私は、自分の命がいつ尽きてもおかしくないことを知っている。若くはない。体も、昔のようには動かぬ」


「衛門さん……」


「だからこそ、焦っているのかもしれぬ。圓に会えた喜びと、残された時間の少なさ。その両方が、私を急かすのだ」


椿は何も言えず、ただ衛門の横顔を見つめた。本編で読んだ衛門の最期。娘との再会を果たした後、彼は静かに息を引き取った。その時が、確実に近づいている。彼女はそれを知っている。でも、伝えることはできない。


(私は、あなたの残された時間を知ってる。でも、それを伝えることはできない。ただ、見守ることしかできない)


「春、私は圓に会いに行く」


衛門の声に、迷いはなかった。


「残された時間がどれだけあろうと、私は父親として、圓と向き合いたい。二十五年分の空白を埋めることはできずとも、今の私ができることをしたい」


「……うん。私もついていくよ。時雨との連絡役として」


「すまぬな。いつも頼ってばかりで」


「当たり前だよ。私たち、仲間でしょ」


衛門は少しだけ口元を緩め、立ち上がった。


「準備ができ次第、出立する」



衛門と椿が京に着いたのは、それから数日後のことだった。


都は秀吉の天下統一が目前に迫り、かつてない活気に満ちていた。新しい時代の到来を感じさせる熱気が、町全体を包み込んでいる。


椿は都の外れにある小さな社で、時雨と落ち合った。時雨は相変わらずの黒装束だが、その表情にはいつもの冷たさだけでなく、かすかな温かみが宿っているように見えた。


「時雨、圓は」


「まだ京にいる。前回と同じように、古い寺社を巡っている。だが今回は、明らかに目的を持っているようだ」


「目的って」


「自分のルーツを探している。圓は、自分が何者なのかを知りたがっている。秀吉様に育てられた娘としてではなく、一人の人間として」


時雨は遠くを見つめながら続けた。彼女は無意識に、左手首の火傷の痕をなぞっていた。誰かのために団子を作ろうとして、失敗したあの日の記憶。彼女にとって「家族」を知るきっかけは、あの団子だった。


「圓は、幼い頃からずっと孤独だった。秀吉様は彼女を妹のように可愛がったが、それでも血の繋がりはない。本当の家族を、彼女は一度も知らずに育った」


「時雨……」


「私は、圓の気持ちが痛いほどわかる。私もまた、本当の家族を知らずに育ったからだ」


時雨は自分の手を見つめた。火傷の痕がある手首を、もう一方の指がなぞっている。


「復讐だけを生きがいにしてきた私が、桃太郎と出会い、お前と出会い、初めて『家族』というものを知った。圓も、きっと同じだ。彼女は今、本当の自分を探している」


衛門が一歩前に出た。


「時雨、圓はどこにいる」


「都の北、鞍馬山の麓にある小さな寺だ。かつて、圓の母が預けられていた寺だと聞く」


「圓の母……」


衛門の声が、かすかに震えた。


「私の妻だ。圓を産み、私をかばって死んだ。その妻が、あの寺に」


「ああ。圓は、母の足跡をたどっている。そしてその先に、あなたがいることを、彼女はもう知っている」


衛門は深く息を吸い、ゆっくりと吐き出した。


「……わかった。私は圓に会う。今度こそ、父親として、ちゃんと向き合うために」



鞍馬山の麓。静かな杉林の中に、その寺はひっそりと佇んでいた。


古いが、手入れの行き届いた寺だ。庭には季節外れの小さな花が咲き、どこか温かみを感じさせる。


圓は本堂の縁側に座り、ぼんやりと庭を眺めていた。黒装束ではなく、ごく普通の旅装束に身を包んでいる。その横顔には、くノ一としての冷徹さはなく、ただ一人の女性としての静けさが漂っていた。


「圓」


衛門の声に、圓が顔を上げた。その目が、わずかに揺れる。


「父上……」


「会いに来た。お前と、ちゃんと話がしたくて」


圓は少し戸惑いながらも、縁側を詰めて場所を空けた。衛門はその隣に腰を下ろす。椿と時雨は、少し離れた場所で見守っていた。


しばらく、二人の間に沈黙が流れた。風が吹き抜け、杉林がざわめく。最初は重かった沈黙が、風が吹き抜けるたびに、少しずつ柔らかくなっていくようだった。言葉がなくても、ただそばにいるだけで、二人は確かにつながっていた。


「……この寺は、母が預けられていた場所だと聞きました」


圓がぽつりと言った。


「私は、母の顔を知らない。どんな声だったのかも、どんな手をしていたのかも。でも、ここに来れば、何かがわかるかもしれないと思った」


「圓……」


「私はずっと、自分が何者なのかわからずに生きてきました。秀吉様に育てられ、くノ一としての技を磨き、任務をこなす。でも、それは本当の私じゃない。仮面をかぶった、偽りの自分だ」


圓の声は静かだった。でも、その言葉の一つ一つが、長年彼女の胸の奥でくすぶり続けてきた本当の気持ちだった。


「私は、本当の自分を知りたい。母がどんな人だったのか。なぜ、父上は都を追われたのか。そして——私は、誰に愛されて生まれてきたのか」


衛門は圓の手を取った。冷たく、細い指。戦いの中で生きてきた、くノ一の手。


衛門はしばらく遠くを見つめ、それからゆっくりと口を開いた。その声は、かすかに震えていた。二十五年間、誰にも語ることのなかった妻の思い出を、今、初めて娘に伝えようとしている。


「圓、お前の母は、美しい人だった。心優しく、誰よりも家族を愛していた。お前が生まれた時、彼女は涙を流して喜んだ。『この子は、私の宝物だ』と言って」


圓の目が、大きく見開かれた。


——その言葉を聞いた瞬間、椿の脳裏に、衛門がかつて語った「妻の最期」が過った。


【「すまない」——それが、妻の最期の言葉だった。】

(『時雨の焼印』第5話:衛門(桃太郎伝説の犬))


衛門は、その言葉を口にしなかった。今はまだ、それを伝える時ではない。今はただ、圓が愛されて生まれてきたことだけを、伝えたかったのだと、椿は理解した。


「お前は、愛されて生まれてきた。母に、そして私にも。それは、決して偽りではない」


「……父上」


「私は、お前を守れなかった。母も守れなかった。二十五年間、ただ生き延びることだけを考えてきた。父親として、何もしてやれなかった。でも——」


衛門は圓の目をまっすぐ見つめた。


「お前が生まれたあの日、私は確かに幸せだった。お前を抱き上げた時の温もりを、今でもはっきりと覚えている。それは、私の人生で最も誇らしい瞬間だった」


圓の目から、涙が一筋こぼれた。彼女は何も言わず、ただ衛門の手を握り返した。その手に、力がこもる。


椿はその光景を遠くから見つめながら、自分の手を見つめていた。


(衛門さんは、圓に自分の気持ちを伝えてる。残された時間が少ないことを知っていて、それでもちゃんと、父親として向き合おうとしてる)


忠助の温もりを思い出す。あのざらりとした舌の感覚。戦場で傷つきながらも、誰かに撫でられることを求めていた、あの犬。忠助もまた、残された時間の中で、誰かに愛されることを選んだ。今頃、老夫婦の家で、新しい名前で呼ばれているだろうか。


(私は、それを見届けられない。でも——今、この瞬間にできることがある。衛門さんと圓の、この時間を見守ること。それが、私の役目だ)



その夜、圓と衛門は寺の本堂で、遅くまで語り合った。


囲炉裏の火がパチパチと音を立て、二人の影を壁に揺らしていた。その揺らぎが、圓の迷いと、衛門の静かな決意を映し出しているようだった。


圓は、秀吉のもとで育った日々を語った。くノ一としての訓練、任務の中で感じた孤独、そして「本当の家族」への憧れ。


衛門は、都を追われてからの流浪の日々を語った。桃太郎との出会い、鬼ヶ島での戦い、そして椿たちとの新しい生活。そのすべてが、圓を探し続けるための道のりでもあった。


「私は、父上が生きていると知った時、本当は嬉しかった。でも、それを認めるのが怖かった」


圓は囲炉裏の火を見つめながら、静かに言った。


「もし会って、拒絶されたらどうしよう。もし父上が、私のことを覚えていなかったらどうしよう。そんな不安が、ずっと私を躊躇わせていた」


「圓……」


「でも、会ってよかった。父上がずっと私を探していたこと、私を想っていてくれたこと、それが本当だとわかったから」


圓は衛門の顔を見つめた。


「父上、私はこれからも秀吉様のもとで生きていく。でも、それは父上を拒絶する意味ではない。私は、自分の道を自分で選びたい。ただ、それだけなんだ」


衛門は静かに頷いた。


「ああ、それでいい。お前が自分で選んだ道なら、私はそれを応援する。それが、父親の役目だからな」


圓の目に、再び涙が浮かんだ。彼女はそれを拭わず、ただ衛門の手を握り続けた。



翌朝、圓は寺を発つ準備を整えていた。


衛門はその姿を、門の前で静かに見守っている。椿と時雨も、少し離れた場所でその光景を見つめていた。


「父上、私はこれで一度、秀吉様のもとに戻ります」


「ああ。気をつけてな」


「でも、もう迷いません。父上がここにいること、私を想っていてくれること、それを知ることができた。それだけで、私は前に進める」


圓は衛門の手を取った。その手は、長年の戦いで硬くなり、節くれだっていた。圓はその手のひらにそっと指を這わせ、初めて知る「父の手」の感触を、逃すまいと握りしめた。


「父上、私はあなたの娘であることを誇りに思う」


衛門の目から、涙が一筋こぼれた。彼は何も言わず、ただ圓の手を握り返した。娘の細く冷たい手を包み込むように。戦場で刀を握り、流浪の日々を生き抜いてきたその手が、今、確かに「父」の手として、圓の手のひらに温もりを伝えていた。


——そして、彼は言った。


「圓、私もだ。お前は、私の誇りだ」


【「お前は、私の誇りだ」】

(『時雨の焼印』第16話:父娘の再会)


それは、本編で衛門が最期に圓に伝えた言葉だった。でも今は、最期ではなく、新しい始まりの言葉として。椿はその光景を、涙をこらえながら見つめていた。


圓は深く頭を下げ、そして顔を上げると、くノ一としての鋭い表情に戻っていた。でもその目には、確かな温かみが宿っている。


彼女は一度だけ振り返り、小さく手を振った。それは、くノ一として訓練された無駄のない動きではなく、ただ父に別れを告げる娘の、ぎこちなくも温かい仕草だった。彼女が初めて見せた、素顔の瞬間だった。


そして彼女は、杉林の奥へと消えていった。朝日が差し込み、彼女の影を長く伸ばしている。


「……行ったな」


衛門が静かに呟いた。その声は、寂しげでありながら、どこか清々しくもあった。


「衛門さん、よかったね」


椿が声をかけると、衛門は小さく頷いた。


「ああ。私は、父親として、ようやく一歩を踏み出せたのかもしれん。二十五年かかったがな」


「でも、その一歩が大事なんだよ。残された時間がどうであれ、今この瞬間にできることをする。それが、一番大切なことだと思う」


衛門は椿の顔を見つめ、静かに微笑んだ。


「……そうだな。お前の言う通りだ」


時雨も、その光景を静かに見守っていた。彼女の手は、無意識に自分の手首の火傷の痕をなぞっている。


「時雨、どうしたの」


「……いや、ただ、衛門と圓を見ていて、思ったのだ。私もいつか、自分の子に何かを残せるだろうか、と」


時雨は無意識に、左手首の火傷の痕をなぞっていた。誰かのために団子を作ろうとして、失敗したあの日の記憶。あの日、私が残そうとしたものは「味」だった。焦げて、固くて、土のような味。でも桃太郎は「美味い」と言ってくれた。


「時雨なら大丈夫だよ。あなたはもう、誰かを愛することを知ってるんだから」


時雨は少し驚いた顔をし、それから自分の手首を見つめながら、小さく笑った。


「……そうだな。私には、もう『残したいもの』があったのだな」



帰り道、衛門と椿は並んで山道を歩いていた。時雨は一足先に秀吉の陣営へと戻っている。


春の陽気が感じられる、穏やかな午後だった。道端には、オオイヌノフグリが小さな青い花を咲かせている。その花を見つめながら、椿は思った。衛門さんの人生は、この花のように、誰かの足元で静かに咲き続けてきたんだ。主君への忠誠、娘への想い——すべてが、この小さな青い花に込められている気がした。


「椿、私はお前に礼を言わねばならぬ」


衛門が不意に口を開いた。


「え?」


「お前がいてくれなければ、私は圓に会うこともできなかった。二十五年間、ただ想い続けるだけで終わっていただろう。お前が私の背中を押してくれた。時雨も、弥助も、桃太郎も、みんなが私を支えてくれた」


「……そんなことないよ。衛門さんが自分で決めたことだもの」


「いや、人は一人では生きていけぬ。誰かに支えられ、誰かを支え、そうやって生きていくものだ。私は、お前たちに出会えて、本当によかった」


衛門の声は静かだったが、その言葉には確かな重みがあった。椿は何も言えず、ただ黙って歩き続けた。目の奥が、じんわりと熱い。


(衛門さん、あなたはもうすぐ——)


本編で読んだ衛門の最期が、脳裏をよぎる。でも、今はまだその時ではない。彼女は唇を噛みしめ、その考えを振り払った。


「椿、私は残された時間を、圓のために使おうと思う。会いに行くことはできずとも、手紙を書く。私が生きてきた証を、圓に残す。それが、父親としての私の最後の役目だ」


「……うん。それがいいと思う」


「ああ。お前にも、世話になる」


衛門は少し照れたように笑い、歩を進めた。その背中は、少しだけ小さく見えた。でも、その歩みは確かだった。残された時間を、精一杯生きようとする者の強さが、そこにあった。


椿はその背中を見つめながら、心の中で誓った。


(私は、衛門さんの最期を見届ける。それが、影の戦士としての私の役目だから。シロのことも、衛門さんのことも、私はちゃんと見届ける。たとえ、その先に自分の限界が見えていても)


「あー…あとね、ずっと言おうと思ってたことが…」


「ん?なんだ?」


「時雨の焼印の物語でもそうだったんだけど…あなた、何年経ってもずっと二十五年って言ってるのよね…」


衛門は少し考え込んだ。


「…あ!本当だ!」


「…文句なら天国行く前に太幽の所に行くといいわ。」


「太幽?なんだそれ?」


【次回予告】


(——衛門さんと圓、ついに本当の意味で親子になれた。圓は自分の足で歩き始め、衛門さんは父親として彼女を見送った。その光景を、私は確かにこの目で見届けた)


「でも——私は知っている。衛門さんに残された時間が、あまり長くないことを。太幽、お前は本当に容赦ないな。衛門さんに圓と再会させたと思ったら、今度は——。でも、その残酷さが、衛門さんの『お前は私の誇りだ』という言葉を、より重く、より美しくしている。」


「秀吉はついに天下統一を果て、日本全土に『安堵の光』が灯る。でも、その平和の裏で、衛門さんの時間は静かに、しかし確実に尽きようとしている」


「衛門さんは言った。『椿、私は幸せだった。お前たちに出会えて、圓に会えて、本当に幸せだった』って」


「その言葉を、私はどんな思いで受け止めればいいんだろう。影の戦士として、ただ見送ることしかできない自分が、こんなにもどかしい」


「次回、第19話『父の誇り』。衛門さんの最期を、私はちゃんと見届ける。それが、師を仰ぐ者としての、私の役目だから」


「……衛門さん、あなたの誇りは、ちゃんと圓に届いてるよ。だから——安心して、眠ってほしい」


(よし、行くぞ。泣いてる場合じゃない。私は、私にできることをするだけだ)


---


【第18話・完】

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