080 ぼくからママたちへのプレゼント
アイナママ、ルシアママ、ごめんね? ウソをついて。
【ステラママの遺したアイテム】そんなのは、ホントはないんだ。
でもそれは、ミヤビさまとの約束だから、ホントのことが話せないんだ
(だってこれから使うのは、【勇者魔法】だから)
ぼくがルシアママを【剣技】で超える、そんな魔法が【勇者魔法】にはある。
【超越身技】
その魔法の発動中に限り、筋力、知力、攻撃力、防御力などのパラメーター。
それを【英雄級】冒険者の3倍相当の能力値に高めてくれる魔法。
(そんなまさに勇者らしい、チートな魔法だけど?)
欠点は、その消費魔力量が莫大なこと。
だからこそ、20万を超える【MP】もつ勇者だからこそ使える魔法なんだ。
(それはアイナママたちのおかげで、MPが増えた今でも全然足りない。けど──)
本来ならMP不足で使えないはずの【超越身技】を、今のぼくが【4秒だけ】発動させる魔法がある。
それは──
◇◆◆◇
そうしている今、毒のブレスは室内に充満してゆく。
そうしたら、ぼくらは風の結界に閉じ込められた状態になってしまう。
「ぼくは左から、ルシアママは右からおねがい!」
「ああ、わかった」
「じゃあ数え3つで行きます!」
「さんっ」
「にっ」
「いちっ」
(【増魔倍押】っ そして【超越身技】!)
ふたつの勇者魔法を同時発動する。
そして──
「いまっ!」
風の結界を、飛行魔法で飛び出した!
見ればルシアママも、ぼくとシンクロするように駆け出していて──
そんなルシアママの信頼に、ぼくの胸がかぁっと熱くなる!
「「てやぁぁぁっ!」」
シュバッ! シュババッ!
ふたりの剣の刃に風をまとわせた【ソニックブレード】が、やすやすとヒュドラの首を落としてゆく。
そしてルシアママが4本目の首を落としたその瞬間──
「たぁぁっ!」
シュバっ!
ぼくが5本目を首を落とす。
この間、わずか4秒──
すべての首を失ったヒュドラは、もう再生することはない。
そのカラダをぱぁっと光らせて、ポトリと魔石を落とした!
◇◆◆◇
パッ
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【増魔倍押】
種別:勇者魔法
状況:常時
対象:術者
効果:魔法の発動に対し、規定量以外のMP量を適用する事で、
その威力を変動することができる魔法。
その威力は規定量に対する比率に準ずる。
戦闘時のみ発動、魔力消費は任意のMP量。
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つまりMP消費が100の魔法なら、200で2倍。
そして500で5倍! と、倍率を変えられるんだ。
これはもう、なりふり構わず──)
【【見敵殲滅】、倍プッシュだ、!』
(──って時に使うんだろうなぁ おぅふ、なんという男之浪漫)
そして『増魔倍押』の説明には最後にこうあるんだ。
【魔力消費は任意のMP量】って、
これ、逆に少ない魔力量ならどうなるの?
本来のMP消費量の、1/2とか1/5とか?
そう疑問に思って、以前実験してみた事があった。
(で【増魔倍押】を発動後、MPを1だけ残して、残り全てを【超越身技に全投入したら──)
ホントなら? 魔力不足で発動しないはずの【超越身技が発動した。
そして今のぼくのMP量でも、4秒だけなら発動する、という結果になったんだ。
◇◆◆◇
「やった!」
「おぉっ 本当にやってしまうとは!」
「クリスっ ルシアっ!」
笑顔でよろこぶルシアママ
そして涙を流しながら、駆け寄ってくるアイナママ。
「ありがとうっ ふたりのおかげで勝て──」
その時、
パッ
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【レベルアップ報告】
出典:万物真理【管理ログ】より
パーティーメンバー【アイナ】がレベルアップしました。
パーティーメンバー【ルシア】がレベルアップしました。
下画面があります▼
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(え? これって【万物真理】のレベルアップレポート?)
そういえば? 前世でも勇者のパーティーメンバーだった、
アイナママ、ルシアママ、ステラママの3人には、レベルが上がったら報告するように登録しておいたんだっけ?
(というか~ ぼくだけは上がらないんだよねぇ はぁ~ ん? って、まだ続きがあるの?)
パッ
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パーティーメンバー【アイナ】のレベルアップに伴い、
現在の装備が装備不可能になりました。
強制解除されます。
パーティーメンバー【ルシア】のレベルアップに伴い、
現在の装備が装備不可能になりました。
強制解除されます。
今後の戦闘の継続のため、速やかな対処をお勧めします。
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「──え?」しゅるっ ハラリ
「──あ?」しゅるっ ハラリ
(なっ! ビキニアーマーが、かってにパージされたぁぁ!?)
おかげでアイナママとルシアマアの、おっぱいとおまたが丸出しに!
「きゃぁぁぁっ!」
「むぎゅぅ!」
「あぁっ ズルいぞアイナっ わ、私もっ きゃー(棒)」
(る、ルシアママまでぇ!?)
ぼくはふたりのママに【ナマ】で抱きつかれ、
(あ、もう、限界ぃぃぃ きゅぅ~)
その【幸せサンド】のままぼくは──
魔力枯渇で昏倒したんだ。
◇◆◆◇
「【リターンスピリッツ】!」
ぱぁぁ
ぼくとアプリルさんのカラダが、暖かな光に包まれる。
そう、これはアイナママの、魂を正しい身体に戻す魔法。
「さて、いかがですか?」
「ええと、あぁっ もどってるぅぅ」
「ええっ ちゃんと私の身体になってますっ」
「アプリルさんっ」
「クリスくんっ」
「「戻れてよかったぁぁぁ」」
ひしっ
そのうれしさのあまり、思わず抱きあって喜んじゃうぼくとアプリルさん。
なんというか、ずっとアプリルさんのカラダで過ごしてたから?
もう他人のような気がしなくて~
「ふふ、よかったよかった」
「ルシアママ ありがとう!」
「ああ、だがな? そろそろ離れたほうがいいぞ?」
「え?」
「レイナが嫉妬のあまり、泣きそうになっているからな」
「な、泣いてなんかないわよっ ルシアママ!」
「ははっ そうかそうか」
「ただ、もとに戻れてよかったなって、思っただけなんだからね!」
「レイナちゃん、ありがとう」
「ありがとうございますっ レイナちゃん」
「ふーんだ!」
うーん レイナちゃんは怒っててもかわいいなぁ
「あなた方の【なりきり】が様になっていましたので、大丈夫だと判断しました。ですが万が一、身体から魂が抜けてしまったば場合は──」
「ぜったいにそばを離れずに、その場で待機! だよね?」
「ええ、それならば、わたしがもとに戻せますからね」
「アイナさん、本当にお世話になりました! ですが……」
「ああ、確かに【6体の魔物】はすべて封印、もしくは討伐したが」
「ええ、悪霊はまた、その姿を消していましたね」
そしてあの悪霊が、6体の魔物をすべて封印されたからといって?
そのままルシアママのカラダを諦めるとは思えない。
(嫌がらせがシュミみたいな、イヤなヤツだからなぁ)
ともかくあのヒュドラやキマイラが、街を襲う前に討伐できてよかった~
そしてぼくにはひとつ、考えがあったんだ。
◇◆◆◇
「クリス? 私とアイナに用があるそうだが」
「あ、そうなんだよ! ルシアママ」
「【レッスン】なら、私だけを呼べばいいだろう? ん♪」
「ルシア? 貴女また、抜け駆けを──」ゴゴゴゴゴ
「いやちがうからね? それよりもっとだいじなご用だから!」
「ふむ、大事な用とは」
「なんでしょうか……?」
そんなママたちにぼくは~
「ええと、まずはアイナママ? 右手をだして?」
「右手ですか? はい」
「えへへ、サイズはあってるはずだけど~」
ぼくはアイナママの右手の中指に、大きな石のついた指輪を差しこんだ。
「まぁ」
「えへへ これ、アイナママへのプレゼントなんだ」
「わたしに? あぁ、クリス」
アイナママ、眉をきゅ~ってして、喜んでくれてる。
喜んでもらえて、ぼくもとってもうれしい。
すっ
すると、ルシアママがワクワクしたお顔で右手を差し出してきた。
「え? ルシアママのはないよ?」
「がーんっ!」
「えっ! ちょ、泣かないでぇ!?」
ぐずぐずと泣き崩れるルシアママを、ぼくはあわててフォローする。
「ちがうからっ ルシアママにはもっといいものをあげるから!」
「ぐすっ、いいもの?」
「うんっ それにはその、アイナママの指輪が大事なんだ」
「この指輪が、ですか?」
「うん、それね?【ヒュドラ】の魔石のカケラなの」
「まぁ」
「なんと」
そう、すべての首を失ったヒュドラは、光になって魔石を残した。
とはいえ? またエルフの森のときみたいに【復活】するといけないから?
この指輪のぶんだけすこし削って、あとは【志那都風】で封印したんだ。
「で、この魔石でどうするのだ?」
「うん、あのヒュドラの【再生能力】、すごかったよね?」
「ああ、どんなカラクリかは知らんが、凄まじい再生力だったな」
「ええ、わたしもあんな早い再生は、初めて見ました」
「だからね? ヒュドラの魔石が持っているチカラは【再生力】なんだ」
「そうなのか?」
「うん、それでステラママの遺してくれたご本に、【魔石加工学】っていう魔導工学書があってね? 魔物の【魔石】を加工して、その特性を活かしたマジックアイテム作り、そういうのが作れるご本なんだ」
ぼくがそういうと、アイナママが息を呑んで──
「クリス、これはまさか──」
「うん、そうなんだ」
「ん? 何なのだ? 私にはまだ要領が掴めないのだが……」
「ルシア、わたしの治癒魔法の【リジェネレイト】で、あなたの失った左目と左手首を、元に戻せるかもしれません」
「なんと……」
そう、アイナママの治癒魔法は、傷を癒やしHPの回復はできるけれど?
【死者の蘇生】と【大規模な欠損の回復】、この2つはできないんだ。
「だ、だが……私が目と手首を失ったのは、もう十年以上前なのだぞ?」
「うん、だからルシアママ? しっかりとイメージしてね?」
「な、なにを──」
「その手首と目がちゃんと自分にあるって、強くイメージするの」
「イメージ……」
大事なのはその【想い】なんだ。
だからそれさえあれば、あとはアイナママの魔法が後押ししてくれる!
◇◆◆◇
そしてビキニアーマーを装備したアイナママがもどってきて…
「では、ルシア? 始めます」
「あ、ああ……頼む」
ぼくも初めて見る、ガントレットを外したルシアママの左腕。
そして髪をかきあげて、大きな傷の残る閉じたままの左目──
「【リジェネレイト】!」
キラキラキラ……
アイナママの杖から放たれる神聖魔法が、ルシアママのカラダにふりそそぐ。
そしてその、聖なる光に包まれると──
「あぁっ ルシア、貴女──」
「お、おぉぉ! 見えるっ そして、左手があるっ」
「よかった……」
「あ、あぁぁ! く、クリスぅ アイナぁぁぁ」
「よかったですっ ほんとうに、よかった!」
「ルシアママっ!」
ルシアママに、失われたはずの左目と左手が戻った。
そしてルシアママは、まるでちいさな子供みたいに泣いちゃって……
けど『嬉しい涙だから止めなくていい』って、いっぱい泣いたんだ。
そうしたら、もう……
ぼくもアイナママも一緒に泣いちゃって──
気がついたら3人で抱きしめあって、わんわん泣いたんだ。
◇◆◆◇
そしてその晩、ぼくたちは──
はじめて3人で一緒に【レッスン】をしました。
「アイナママもルシアママも……ぼく、だーいすき」
これにて【第2部】完となります。
ご愛読ありがとうございました。
引き続き【第3部】をお楽しみくださいませ♪




