070 アマーリエさん……メッチャ揺れるぅ!?
「それでルシアさま? 特務の依頼とは」
「ああ、【悪霊】と【6体の魔物】の討伐もしくは封印。それが正式に我らに依頼として発生した。しかも領主と冒険者ギルド、街の連名でな」
「すごい!」
「だが、それこそ初めのうちは先ほど話したように、」
『そちらが襲われたのだから、責任持って討伐すべきだ』
「などという意見も出たのだが、さすがにそれはこじつけというものだろう」
「で、ですよねぇ?」
「ええ、そもそもルシアの身体を狙うのは、その【強さ】を得る為。もしその力が、魔族側に回ったら」
「ああ、それを聞いて皆、青くなっていたぞw」
「ですよねー」
そもそも悪霊が魔王軍の一員である以上、人族の街を襲うのは当然のこと。
それをルシアママのせいにされちゃあ、ねぇ?
「そしてそうと知ってしまえば、連中も受け身ではいられない。結果、『なんとかしてくれ』と、特務依頼が発生したわけだ」
「なるほど~」
「だが悪霊が街に潜み、人族や亜人になりすましている以上、見つけることはかなり困難だろうな」
「うぅ、そうですよね」
ぼくの【万物真理】さんのレーダーでも、あの悪霊は人族としてしか反応しないんだ。
マーキングをしたとしても、その後にカラダを入れ替えられたら意味がないし?
「ああ、そしてアイナにも指名で依頼が発生した」
「なんでしょうか?」
「冒険者ギルドや神殿、そして街の守備隊などに『何者かに身体を入れ替えられた』そう申し出てくる者が、何人かいるそうだ」
「まぁ」
「その対処に困っていたようなのでな? アイナを推薦しておいた」
「ええ、承知しました」
アプリルさんと入れ替わった後、そのまま逃げたメイドさん。
そのカラダで、ゆうべの神官さんに入れ替わった?
いや、もしかしたら途中で何人かと入れ替わってるかも?
「ルシアさま? そのひとたちは、なぜ殺されずに済んだのでしょう? 私やクリスくんのときのように、その直前に自刃するカタチで」
「ふむ、悪霊も相手が重要人物でない場合は、そのあたりの手間を省くのかもしれんな」
「手間を、はぶく」
「それに入れ替わられた者は皆、その際に気を失っている様なのでな。故に、いまの所はそうした不審死は出ていないそうだ」
「なるほど」
よかった。じゃああのメイドさんは、助けられるかも?
「で、そうした者達は集められ、事情聴取を受けているそうだ。それである程度整理がついたらアイナに頼みたい」
「ですがその場合、ひとり残らず揃っていないと、完全には──」
「そうだろうな。ただ、ある程度は元に戻せる。それで納得するしかないだろう」
「そう、ですね」
んー、殺されるよりはマシ、と考えるしかないかなぁ
何人かは、例の【元高官】さんみたいに、別の人生を送らないといけないけど。
「ともあれ、こちらが領主たちに出した条件はこうだ。参加するのは私とアイナ、そしてクリス」
「ルシア? 貴女は──」
「ああ、わかっている。だが私が不参加では連中も納得しないのでな。入れ替りを警戒する為に最前列には出ないが、後詰めとして参加すると伝えた」
「そういうことでしたら」
ルシアママ、ホントは参加したくてうずうずしてますね?
「さらにエルフの【姫巫女】であるアプリル。そしてその従者となったアルタムもその面子に加わるが、後者の2名はその神託の装備により【英雄級】の力を誇る、そう報告してある」
「がんばります!」
「ハイっ もちろんワタシも」
「ああ、頼りにしているぞ?」
ルシアママにそういわれて、うれしそうなアプリるさん。
ぼくのカラダのアプリルさんも、すごくニコニコしてる。
「そして今回は特務として、いくつか権限が与えられた」
「権限、ですか?」
「ああ、まずはその行動に関してはいっさいの制限を受けない。つまりギルドや守備隊の指示を受けず、自由に行動して良いということだ」
「おぉう」
「そもそも今回の敵が悪霊である以上、作戦を秘匿する必要があるからな。故に我らだけで独自で動く方が、都合が良いというわけだ」
「ああ、なるほど」
悪霊だったら、どこにでも潜り込めちゃいそうだし?
作戦なんかは筒抜けになっちゃうよねぇ?
「そして関係各位からの情報を、無制限で受けられることになった」
「情報、ですか?」
「あぁ、今この街で起きている不可解な事件や事故、そういったものの情報は逐一集められ、我々に伝えられる──そんな運びだ」
「ああ、それは助かりますね」
「そうですね、悪霊の居所の手がかりになりそうです」
この世界にはネットもSNSもないから、そういう情報がすごく大事!
「さらにその必要経費は、自由に使って良いそうだ」
「すごい!」
「とはいえ、防具や武器でなんとかなる相手ではないからな。主には街での宿泊費や、滞在費などになるだろう」
「ですよねー」
さすがに関係ないものを買うわけにもいかないよねぇ
「ともあれ、今日は皆、徹夜だったからな。今日はいったん家に引き上げて、今夜からまた警戒にあたるか」
「ええ……悪霊はすぐに動くでしょうか?」
「わからんが、どのみち街に詰める必要はあるだろうな。なにかあってから駆けつけるのでは遅すぎる」
「ええ」
そりゃぁ? ぼくらが全力で飛んだら、10分もかからず着いちゃうけど?
その街からの知らせを受けるのに、とっても時間がかかっちゃう。
(う~ん、電話みたいなアイテムがあればいいんだけど)
残念ながら、ステラママの蔵書にもそういうのはなかった。
「えと、ミラさんたちがエルフの森からお手紙を、受け取ってましたよね? そのアイテム、借りられないでしょうか?」
「ああ、あれは双方にそのアイテムがないと、使えないモノらしくてな」
「そうなんですか?」
「なんなら私がその片割れを取りに行ってもいいが、往復で6~7日程度はかかるな」
「うぅ なら私たちがこの街に居たほうが、ずっと早いですね」
エルフの森、ホント遠いんだなぁ
「さて、こんなところか。さすがに私も眠くなってきたし、そろそろ帰るとするか」
「ええ、ではアルタムさん。これからも宜しくお願いしますね?」
「はいっ アイナ様!」
「ああ、そうだ。アルタムにはこの特務に就いている間、特別に休業補償が出ることにさせたぞ?」
「ほ、ホントですか!」
「ああ、客には『ギルドからの特別な依頼を受けた』とでも言うといい。まぁ、本当にそうなのは間違いないのだがなw」
「うぅっ ありがとうございますっ ルシア様っ」
「なんのなんの その代わりクリスとアプリルの件、くれぐれも頼むぞ?」
「はいっ」
うーん、あいかわらずオトコまえだなぁ、ルシアママ。
こうして、アルタムさんはルシアママの大ファンになったのでした~
◇◆◆◇
「う~ん、動き、ないですねぇ」
「はい~」
あれから、5日が過ぎました。
けど、街は平和そのもので、悪霊も魔物もまったく気配なし。
とりあえず、毎日パトロールはしてるけど、
「魔力を奪われた人まで見たらないとか……もしかして、諦めたんでしょうか?」
「だったらいいんですけど」
アプリルさんのいうとおり、街では悪霊のウワサどころか?
今まで何人もいた【魔力を奪われた被害者】が、ぜんぜんいなくなったんだ。
「でも、もしかしたら、さわぎにならない方法で、魔力を奪ってるだけかも?」
「騒ぎにならない?」
「悪霊としても、あの襲って奪うやりかたは、効率がよかったんじゃないかって」
「そうなんですか?」
「はい、だってあアイツ──」
『ふぅ、MPだけなら人死も出ないし、もう少し行けるかと思いましたが、』
「なんていってましたし?」
「そういえば、そんなことを!」
「ですから? きっと【効率は悪いけど、バレにくい】やりかた。そういうのがあるんじゃないかって思うんです」
「あり得ますね、それ」
「でもそれをやられると、魔力がたまっちゃって」
「あ、いきなり魔物をぶつけられる可能性が──」
「そうなんですよねぇ」
と、そのとき、
「あぁ、クリスくんにアプリルさんっ ここにいらっしゃいましたか!」
「あ、アマーリエさん」
「どうしたんですか? そんなに慌てて」
「その、例の【特務】の件なのですけれど」
「っ! なにかわかりました?」
「ええ、とある冒険者から通報がありまして。街外れのとある屋敷に、見慣れぬ女性神官が何度も出入りしていると」
「女性神官! まさか」
「ええ、その冒険者の証言によると、現在行方不明になっている神官ではないかと」
「あ、あの【カルキノス】の時の神官かも?」
「ですからまずはご連絡と思い、私達で手分けしてお探ししたんです」
「ありがとうございます!」
さすがは冒険者ギルド! そしてアマーリエさん!
「それでアマーリエさんっ その屋敷ってどこですか?」
「ええ、でしたら私がご案内します」
「え? でも危ないし!」
「そ、そうですよぉ」
「ですがお二人とも、住所を聞いて場所が判るのですか?」
「あっ」
「うぅ、わかりません」
「ですから、私がご案内したほうが早いです。さあ、こっちです!」
「は、はいっ」
こうしてぼくたちは、アマーリエさんに案内されて走った!
──んだけど? それにしても~
(アマーリエさんのおっぱい、メッチャ揺れるぅ!)
それはもう、【ぶるんっ】とか【ゆさゆさっ】とか聞こえそうなくらいで~
そしてぼくはその時──
(日本のブラみたいに揺れないの作ったら、みんなよろこぶかなぁ……男のひとは悲しむだろうけど~)
なーんてことを考えていたのでした~
◇◆◆◇
「はぁっ はぁ、こ、ここです」
アマーリエさんが案内してくれたのは、街の外壁に近い、文字通りの街外れ。
そこに建つ、古びた庭付きのおうちだった。
「ここは長いあいだ無人だったと、その冒険者も証言しています」
「なのに、女性神官が出入りしてる…と?」
「ええ、それで不自然に思い、ギルドに──ああ、冒険者ギルドは現在、街の冒険者たちに賞金を懸けているんです」
「しょうきん?」
『他の街から犯罪者が紛れ込んだ』
『見慣れない者が不自然な行為をしていたら、通報すること』」
『有益な通報には賞金を出す』
「──と、そんな感じですね」
「な、なるほど!」
「おかげで有象無象の証言が、それはもういくつも集まりまして……ですがその甲斐あって、ようやく手がかりが」
「そ、それは、ご苦労さまですぅ」
うぅ、やっぱり迷惑かけちゃってるなぁ
でも、おかげで悪霊を追いつめられそうだけど。
「あ、アプリルさん? 見てくださいっ」
「え? どうかしましたか? クリスくん」
「あの足跡って、ハイヒールですよね? しかも最近の」
「あ、ホントですね」
ビキニアーマーを装備してる人には、ハイヒールが多いんだ。
それはもちろんミヤビさまのシュミ。
なのでなぜかハイヒールの方が、かかとがぺたんこのブーツより安定するんだよねぇ。
「これは、もう決まりでしょうか?」
「はいっ とりあえず、そこの窓から中をみてみましょう」
そうして、ぼくらが部屋の中を覗いてみると、
(あっ あれは!)
あの時の女性神官が、部屋の中にいた。
しかもその両手両足を縛られ、椅子に座らされている。
そして目隠しと猿ぐつわをされていて、椅子にくくり付けられているみたいだ。
「ま、まさかすでに入れ替り済み?」
「なら助けなきゃ!」
そうしてぼくらは玄関のドアに手をかける。
それにはカギもかかっておらず──
「あいてる──クリスくん?」
「はいっ」
バンっ
剣を構えると、ぼくらは扉を開けて一気に部屋に踏み込んだ。
「んむ~~~っ!」
物音に驚くも、身体をねじって助けを求める神官さん。
ひとまず目隠しと猿ぐつわを外すと──
「たっ 助けて!」
「もう大丈夫ですっ 助けに来ました!」
「た、助かった──え? なにこの格好!? えっ えっ! な、なんでアタシ、神官の装備してんの!?」
「落ち着いてっ まずあなたは誰で──」
バタンっ
その時、ぼくたちの入ってきたドアが閉まった。
そして──
ドカンッ!
「なっ!」
「きゃぁ!」
壁を突き破って現れたそれは──
ひとことで言えば【巨大なライオン】!
しかも前脚が2対ある6本足で、背中にはコウモリのような羽が生えていた!
「うふふ 残念ですが、ここでお別れです。ではさようなら、アプリルさんにクリスくん」
ドア越しに聞こえてくる、そんなセリフ。
それはアマーリエさんの声で、そういったんだ。




