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ママとビキニと、かわいい英雄  作者: 身から出た鯖
第2章 ルシアママは、エルフの魔法騎士
69/92

069 魔物の素材のありかはどこへ?

「ふぁぁぁぁ、ねむぅ」


 思わず大きなあくびをしちゃって、目からナミダが出ちゃうぼく。

 だって、寝てないんだもん。


「こほんっ アプリルさん? 淑女が人前で、大きな口を開けてはいけませんよ?」

「ご、ごめんなさい、アイナさん」


 慌てておくちを手で覆うぼくだけど?

 アプリルさんも、ぼくのカラダで困り顔で見てて~

 うぅ 素直に反省しますぅ


「でも、ほんとうに良かったですよ! アルタムさんを含めて全員無事だし!」

「ええ♪ それに【大鋏の悪魔】──カルキノスでしたっけ? 無事に討伐して、封印できました」

「ですよねぇ」


 とはいえ~

 あんな大型で重力級の魔物が街の中で暴れたから?

 街の中、特に石畳の地面は穴だらけにされちゃった。

 それに大きな音と地響きがしたから、人もいっぱい集まってきちゃったし。


「でも、討伐の時間はわずかな間でしたけど……まさかその後の冒険者ギルドの取り調べが、一晩中続くだなんて、ふぁぁぁ」

「アルタムさんまで~」


 ぼくに負けない大あくびをするアルタムさん。

 そう、ぼくたち4人は全員、冒険者ギルドの取り調べを受けたんだ。

 しかも領主様の配下の人とか、街の守護兵士さんたちまで加わったから?

 それはもう、何度も何度も説明するハメになっちゃって。


「でも。さすがはアイナさ──アイナママだよねっ アイナママが証言すれば、みんな信じてくれるし」


 いくらカルキノスを討伐したとはいえ、街の中がああも壊されちゃったら?

 ぼくらもそのまま撤収!

 ってワケにはいかなかったんだよねぇ


「ホント、おかげで助かりましたっ、アイナさんっ もしアイナさんがいなかったらとおもうと、今でもまだ尋問されてたかも?」

「で、ですよねぇ」


 お互いにお顔を見合わせて、ウンウン頷きあうぼくとアプリルさん。

 あの時アイナママを呼びに行って、本当によかった、


「ええ、ですが今回はなによりの【証拠】がありましたからね」


 アイナママのいう【証拠】は、カルキノスの【大鋏】、しかも大きい方。

 普通魔物は討伐されると、魔石を残して消滅しちゃうんだけど?


「おそらく現在のカルキノスは封印され、時間が停まっているようなもの。本体がその状態ですからあの大鋏も消滅も再生もせず、残ったのでしょうね」

「なるほど~」


 もともとカニとかザリガニって、ハサミが取れちゃっても、脱皮すればまた生えてくるし?

 だからもう、アレは【生きた魔物の一部】じゃなくなったのかも?


「そうなると、素材として使えるんでしょうか? もしも【魔物の素材】で武器や防具が作れたら、んふふふ!」

「あ、アルタムさん?」


 武器と防具の職人であるアルタムさん。

 寝てないのも手伝って、なんだかとってもハイ?

 でも~


「というか、あの大鋏って、誰のモノなんでしょう?」

「そうですね……」


 ぼくがアイナママにそう聞いてみると?


「討伐した魔物の魔石は原則、それを討伐した冒険者の物になりますね」

「だったら、私たちのモノですか?」

「ですが、ドラゴンなどの大型の魔物の魔石はかなり価値が高く、冒険者ギルドが強制的に買取りをするという事例もあります」

「そうなんですね」


 【魔石】はあくまで【討伐証明】としてギルドに収めるワケで、それが【討伐報酬】としてお金になるんだ。

 そして魔石は、マジックアイテムとかの電池代わりに使われたりもするから? ギルド以外でも高く売れる。

 だけど珍しくて価値のある魔石なら、ギルドが強制的に──というワケかぁ


「今回は魔石以上に希少な魔物の素材。しかもアルタムさんの言う通り、武器や防具に転用できそうとなれば……これはもう、一筋縄ではいかないでしょうね」

「ですよねー」


 しかも長さ2メートル近い大鋏!

 そのまま飾っておくだけでも、王侯貴族とかが欲しがりそう。


「それにしても」

「あ、アルタムさん?」

「ワタシが【姫巫女】様の従者、ですか~」

「え、ええ」


 しみじみとそういうアルタムさん。

 そういうアルタムさんの股間には、あの【変身ヒモパン】がある。

 【悪霊】をおびき寄せる、囮をしてた時に装備してたビキニ。

 そのショーツは【変身】を解いた後も、変身ヒモパンのままだったんだ。

 だからそれが【夢】じゃなかったという証拠でもあるワケで~


「あの、アルタムさんっ」

「はい?」

「私たちの都合に巻き込んでしまって本当にごめんなさいっ」

「ひ、姫巫女様っ 頭を上げてください!」


 ぼくはそんなアルタムさんに頭を下げる。

 アルタムさんを、こんな危険なことに巻き込んでしまったから。


「ですがこうなってしまっては、アルタムさんにも力を貸していただくしか──」

「ああ、いえ、大丈夫ですよ! ワタシ、これからもちゃんと協力しますし」

「ほ、ほんとうですか?」

「ええ、もともとワタシから言い出したことですしね? 囮になるの。それにあの格好に【変身】したときに、だいたいの事情は判りましたから」

「そ、そうなんですね、やっぱり」


 あのカルキノス討伐の時も、アルタムさんは誰にも教えてもらうことなく、難なく魔法を使った。

 そしてアプリルさんのカラダのぼくを、心配して抱きつき【姫巫女】と呼んだ。

 それはもう、


(千年前の【姫巫女の従者】の記憶とか知識がある、そういうことだよねぇ)


 アルタムさんに元からその記憶があるのか?

 それとも、変身したから記憶が流れ込んできたのか?

 どっちかはわからないけど、とにかくそういうことっぽい。


(これはまた、ミヤビさま聞かないとなぁ っていうか、こうなるなら先に教えといてほしかったよ!)


 なんて、ぼくがまたミヤビさまのことを考えてると~


「それに、んふふふ!」

「あの、アルタムさん?」

「それにこのワタシが! ドワーフのワタシがですよ! あんなすごい精霊魔法を使えるだなんて~~~っ」

「あー」

「そりゃぁ? マジックアイテムに攻撃魔法がエンチャントされてるのとか? そういうのは実際に、発動させた事もありますけどね?」

「あ、あるんですね? そういうの」

「でもなんですか! あの滅茶苦茶強力な魔法! しかも下着一枚で変身して、あんな強くなるとか反則でしょ!?」

「で、ですよねー」


 あ、アルタムさん?

 なんだかすっごい早口なんですけど!


「とにかく!【6体の魔物】でしたっけ? それでもこんなチカラが使えるならっ ぜひ協力します!」

「アルタムさん」

「それにワタシ、もともと冒険者やってましたしね」

「えっ そうなんですか?」

「ええ、ドワーフの職人は駆け出しの頃、たいてい冒険者やりますよ? そもそも現場を知らなきゃ、最先端の職人なんか務まりませんからね」

「なるほど!」

「たいていは戦士兼、武具のメンテ役ですね~ だから前衛は経験ありましたけど、今回みたいな【魔法職】は初めてで~」

「おぉう」


 アルタムさん、実はけっこう戦い慣れしてたんだ!

 とにかく、魔物は1体無事に封印できたし?

 そして従者もひとり増えた。


(うんうん、順調順調♪)

「ですが、アプリルさん?」

「え? なんでしょう、アイナさん?」

「こほん、お忘れですか? カルキノス封印の影で、まんまと【悪霊】を取り逃がしているのを」

「あ」


 そう、そうなんだ。

 封印成功の嬉しさで気づかなかったんだよ~~~っ

 そして気づいた頃には、もうどこにも姿がなかった……

 さすがの【万物真理(ステータス)】さんでも、その居場所はつかめなかったんだ。


「とはいえ……わたしもあなた方が心配で、うっかりしていたのですが」

「あ、あはは~」

「ともあれ、あの悪霊がまた同じ様な事をする可能性もあるのです。ですからこれからも気を引き締めていかないと」

「はい、おっしゃるとおりですぅ」


 とまぁ、そんなぼくたちが反省会をしていると~


「ああ、遅くなったな」

「あっ ルシアさんっ」

「ルシアママっ」


 やってきたルシアママは、ぼくとアプリルさんのほっぺにキスをする。

 ぼくはもちろん、アプリルさんもめっちゃ嬉しそう。


「それでルシア、どうなりましたか?」

「ああ、おおむね上手くいった、そう言っていいだろうな」

「まぁ、それでは?」

「うむ、今回の【悪霊】と【6体の魔物】の件、我らに特務として依頼が発生した」

「おぉぉ」


 それというのも、あのカルキノス討伐のあと?

 取り調べを受けているぼくたちのところに、ルシアママがやってきた。

 それはもちろん、いつまでも帰ってこないぼくたちを心配してのこと。


(もちろんアイナママには、)


『貴女は街に来ない約束では?』ゴゴゴゴゴ、


 って、【笑顔の威圧(ゴゴゴゴゴ)】の発動つきで怒られてたけど~

 だけど今回に限っては、結果的には来てもらってラッキーだった。

 それというのも、【領主さまの配下】【冒険者ギルド】【街の守備隊】……

 そんな人たち相手に、交渉しなくちゃいけなかったから。


(アイナママもいってたけど……)


 ああして悪霊が街で魔物を使ったからには、またこんなことが起きることも、じゅうぶんありえる。

 だから、ある程度の事情を話して、むしろ街の関係各位に協力してもらうことにしたんだ。


「だいぶ時間も掛かった様ですが、揉めたのですか?」

「ああ、向こうも立場というのがあるからな。それこそ、私が悪霊に狙われたのがそもそもの原因だ! などと言ってきた奴もいたぞw」

「まぁ、それは災難でしたね」

「ああ、とんだ難癖だな」


 そ、そんなヒトいたんだ?


「それにあのカルキノスの大鋏の件もあったのでな」

「ルシア様っ アレはどうなったんですか?」

「ん? ああ、あれに感してはとにかく揉めたが……最終的にはいったんギルドが預かり、競売にかけることになった」

「そんなぁ!」


 すごくガッカリしてるアルタムさん。

 やっぱり素材にしたかったんですね?


「それで落札額から手数料を引き、残りの半分がクリス達に。もう半分は壊された街の復興に充てることになった」

「なるほど、それは名案ですね」

「ああ、今後も被害がでるやもしれん。なら最初から費用があれば、街の協力も得やすいというものだ」

「でも、街の復興なんて、すごくお金がかかりますよね?」

「ん? あの大鋏の予想落札価格だが、金貨50枚は下らぬだろうと商業ギルドの者が言っていたぞ?」

「きんかごじゅうまい!」


 ちなみに金貨1枚は、日本円でだいたい百万円ですぅ


「あふぁぁぁ、大鋏がぁ 素材がぁぁ」

「アルタムさんっ 気をしっかり!」

「ああ、そういえば、其方(そなた)がアルタムどのか?」

「は、はいっ ルシア様っ」

「ふむ、この度の件、私の家族とアプリルがたいへん世話になった。そして此度(こたび)の件はエルフの森の不始末でもある。家族として、エルフの森の者として、改めて礼を言わせてほしい、感謝する」

「ももっ もったいなきお言葉ですぅ!」


 深々とあたまを下げるルシアママに、アルタムさんは大あわて。

 まさか救国の英雄に、あたまを下げられるとは思わなかったんだろうなぁ


「あ、ルシアさま? このアルタムさん、そのビキニアーマーの作者なんですよぉ?」

「なんと、これは奇遇な」

「は、はひっ 軍より依頼をいただきまして!」

「ははっ そうかそうか。いや、軍から渡されたはいいが、これを使う相手もなく死蔵していたのだがな。装備してみればまさに具合がよく、実に気に入っている」

「ああっ ルシア様ぁっ」

「ふむ、なら今後は私の武具の整備も頼むとしよう。その腕、これからも私とその家族たちの為、存分に奮って欲しい」

「あ、ありがたき幸せっ」


 な、なんだかアルタムさんまで、ミラさんとハマさんみたいに~

 まぁ ルシアママって?

 エルフの森の、尊い血筋のお嬢さまで?

 そのうえ救国の英雄だから、ホントにえらいんですけどね?


「ともあれ、其方(そなた)が【姫巫女の従者】として選ばれた上は、此度の件が収まるまで、今後も協力してもらわねばならん」

「は、はいっ それはもう」

「そうか では頼むぞ? アルタムどの」

「わ、ワタシの事はアルタムと、呼び捨てて頂ければと!」

「そうか? ふむ、他人行儀なのもよくないか」

「はいっ つきましてはワタシもルシアさまのことを──」(ちらっ)


 ぼくのカラダである、アプリルさんをチラ見するアルタムさん。


「【お義母様】と呼ばせていただければと♪」

「はっはっはっ いやいや、アルタム?」

「はいっ」

「それは却下だ」

「そんなぁ!?」


 あ、アルタムさん、それまだ諦めてなかったんですね?

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