041 ルシアママは、ぼくの【義理のママ】
「………………ん」
朝、ぼくが目をさますと、そこには──
「すぅ すぅ」
「あ、そっか」
ぼくをしっかり抱いて離さいないそのひとは……
ぼくの【義理のママ】、ルシアママだった。
「ルシアママ、きれい」
閉じた目のまつげは長く、きんいろの髪は朝日を浴びてきらきらと光ってる。
そしてスラリと長く、とがったお耳。
(アイナママは【エルフ】だから)
この世界のエルフも、男女ともに美男美女ばっかりみたい。
【大樹海】の奥にある【エルフの森】に住んでいて、引きこもってるんだって。
(【排他的でプライドが高い】って、ルシアママはいってたけど)
ぼくは他のエルフと会った事がないので、そこはちょっとわからない。
そして【精霊魔法】と弓矢が得意で、金属の武器と防具は装備できないんだ。
その例外が【ミスリル銀】だそうだけど。
(やっぱり自然の森の中でくらすエルフって、精霊と仲がよかったりするのかなぁ?)
ルシアママによると【精霊魔法】は、
『あー、ここがこうなってくれたらうれしいのになー』
って考えるだけで、精霊がその【お願い】をきいてくれるんだ。
もちろん【対価】に魔力をあげるんだけど。
(んー、ぼくの【万物真理】みたいに、いろいろ察してくれる感じ?)
なんだかホテルとかの【コンシェルジュ】っぽい。
もっとも、たしかにエルフは【精霊魔法】が得意だけど?
ルシアママの強さは特別みたいで、エルフみんながそうじゃないっぽい。
だからエルフの森でも、もう勝てる人がいなかったみたいで、それで森の外へでてきたんだって。
(そんなルシアママとはじめて逢ったのは……、)
もちろん今のぼくじゃない。
前世の【召喚勇者】だった頃のぼくで──
◇◆◆◇
あれは、前世のぼくが夏休みに入ってすぐのころ。
前から予定してたコンビニのアルバイトに、初めて行くその途中。
いきなり光る魔法陣があらわれて、異世界に飛ばされちゃったんだ。
(あれは、びっくりしたなぁ)
そしてたくさんの【異世界】の人たちに囲まれて、代表で話しかけてきたのが、アイナママだった。
(そういえば【聖女】さまだもんね)
キレイで優しくて、すごく丁寧だから、いわゆる【おもてなし】と【交渉役】だったのかも?
そして【勇者】と【魔王討伐】について説明されて、その場で【勇者魔法】と【スキル】を実践。
そのチカラを理解したぼくは、
『お願いします。この世界を救ってください、勇者様』
そんなアイナママのお願いに、その場でOKしちゃったんだ。
(そしてアイナママのこと、この時はもう好きになってたなぁ)
そんなアイナママも、当時はハイティーン。
今じゃ信じられないけど、やせっぽちでおっぱいもぺたんこだったんだ。
(それから、ステラママも)
今はもういないステラママ。
もちろんこのころはまだ元気で、やっぱりハイティーン。
黒いローブにつばの広いのとんがり帽子という、いわゆる魔法使いスタイル。
(あと、髪とひとみの色も黒かったなぁ)
この大陸ではほぼ見かけないその特徴は、しっかりぼくも受けついでる。
そして今を思えば……
(ステラママ、アイナママよりも背がひくくて、やっぱりやせてたなぁ)
おっぱいも、すごくちいさくて……
なんというか、今のぼくの体型にそっくり?
(ぼ、ぼくは伸びるよね? きっと!)
そして、ルシアママ。
ルシアママは今とぜんぜん、見ためが変わらないんだ。
エルフは寿命が500年くらいあるから。
(たしかまえに、200歳くらいだって聞いた気がするけど)
その見ためは、今のアイナママとおなじくらい?
つまり、アラサー(30歳前後)に見える。
そしてすごくスタイルがよくて、おっぱいがおおきい。
(そのおっぱいを、前世のぼくも、見ちゃったんだよね)
とはいえそれは、べつにエッチなことをしたわけじゃない。
ルシアママが、赤ちゃんにおっぱいをあげてたから。
(あれも、びっくりしたなぁ)
初めてルシアママを紹介されたとき、その腕にはエルフの赤ちゃんを抱いてたんだ。
そしてぼくがいるのに、鎧を外しておっぱいを出しちゃって、
(だけど……)
やっぱり授乳をする女の人は、すごくきれいで神聖なものに見えた。
それは、ルシアママも同じだったんだ。
(でも、その赤ちゃんは)
さすがに魔王討伐の旅に赤ちゃんを連れてはいけないから、ルシアママはそのコを『エルフの森に戻す』って。
なんでもエルフは【核家族】の概念があんまりなくて、『子供は氏族全体で育てるもの』っていうことみたい。
(しかもエルフは寿命が長いからなぁ 人族の10倍ちかく長生きするって、やっぱり考え方とかもちがってきちゃうのかも?)
そして、そんなルシアママたち【3人の従者】としばらく修行をして。
旅立ったぼくは、召喚から3ヶ月足らずで魔王の玉座へたどり着き──
魔王と相打ちになったんだ。
◇◆◆◇
と、ぼくがそんなことを思い出していたら──
「クリス? もう朝ですよ」
軽いノックと一緒に、ぼくのお部屋に入ってきたのは、
「あ、アイナママ、おはよう」
「おはよう、クリス」
ぼくの【育てのママ】こと、アイナママ。
今日もとってもきれい。
「ルシア? 貴女また、クリスのベッドに潜り込んで」
「んあ? あぁ、朝か。ふぁぁぁ……クリス、おはよう。ちゅっ」
「おはよう、ルシアママ」
そんなアイナママの声で目がさめたのか、ルシアママが目をひらく。
その青い瞳はすごくきれいで、見ててうっとりしちゃう~
「もう、それに裸で寝るのはやめてくださいと、あれほど……」
「ん~ いいではないか、どうせここには家族しかいないのだし」
「ですが、クリスももう【一人前】の歳なんですよ? そもそも母親が添い寝する歳ではありません」
「わ、私は久々にクリスに逢えたのだ! 添い寝くらい、もうしばらくいいだろう?」
「ですが」(ちらっ)
そういってぼくを見るアイナママ。
んー、でもなぁ
「ね、アイナママ? ルシアママもさびしかったんだし。もうすこし、いいでしょう? だめ?」
「もう、そんな目で見られたら、ダメだなんていえないでしょう?」
「おお、さすがはアイナ! 慈愛の聖女っ」
「ですが、せめて下着くらいは着けてください」
「むぅ、服を着て寝ると、締め付けがなぁ それにエルフの森では──」
「ここは人族の村ですっ 郷に入れば郷に従えというでしょう?」
「ぐぬぬ」
剣と精霊魔法じゃ最強のルシアママも? おくちではアイナママに勝てないみたい。
(でも、そんなふたりがすごいなかよしなの、ぼくは知ってるけどね~)
◇◆◆◇
「あっ ルシアママ おはようっ」
「あぁレイナ、おはよう。今日もレイナは可愛いな、ちゅっ」
「あぁん、ルシアママぁ」
(おぉぉ)
ルシアママが、レイナちゃんのほっぺにちゅっとキスをする。
それだけでレイナちゃんは、ほっぺを真っ赤にしてよろこんでる。
レイナちゃんはルシアママの、大ファンなんだ。
(ぼくが同じことをしたら? なぜだかレイナちゃん、いつもおどろいてどこかへ走っていっちゃうからなぁ)
ルシアママがちゃんと服をきてると、じっさいすごくかっこいい。
今は鎧は装備してなくて、そのアンダーウェアを兼ねた黒いワンピース姿。
「おまたせ、じゃあいただきましょうか」
「ありがとうアイナママ」
「お、今日は白パンなんだな?」
「ええ、ルシアが無事に帰ってきたお祝いです」
「ははっ これは嬉しいな。200年生きてきたが、アイナの焼いたパンが一番美味いからな」
「まぁ、ルシアったら」
(おぉぉ)
ルシアママはただでさえ、きれいでかっこいいのに!
こうしていつも、男前なセリフをさらっといっちゃう。
しかも本気でいってるから、いわれた人はみんなファンになっちゃう。
「しかし……クリスが一人前の誕生日を迎え、さらにはもうレベル7か」
「えへへ」
「あのちいさな赤ん坊だったクリスが……なんとも感慨深いものだ」
朝ごはんを食べながら、ルシアママがしみじみとそういった。
ちなみにあの【タフクの塔】の討伐で、レベル10相当になりました。
たった2日だったけど、やっぱりあの【魔族】の経験値がおおきかったみたい。
「スキルも【剣術】がレベル8、【盾術】もレベル9になったんだ~」
「おぉ、さすがはクリス! 我が愛弟子っ」
「えへへ これもルシアママのおかげだよ」
「あぁっ クリス!」
「こほん、クリス? 他にもスキルはあるのよね?」
「あ、うん! 【清浄】と【回復】の魔法はアイナママのおかげ。それに【作法】とか【調剤】とかの技術スキルも、いっぱい付いてたんだよ?」
「ほう! それはすごいな」
「他にも【土】と【風精霊】の魔法もあったんだ」
「なんと! 元素魔法に精霊魔法もか? それはステラの奴も、さぞや喜ぶだろうなぁ」
「うんっ みんなママたちのおかげだよ」
「あぁっ クリス!」
「まぁ、クリスったら」
ぼくがそういうと、ママたちはすごく喜んでくれた。
その笑顔が、ぼくにはいちばんうれしいんだ~
「もー、クリスったらっ わたしだって、きっと負けないくらいスキルあるんだから!」
「そうだね、レイナちゃん。レイナちゃんはすごくがんばってるから? ぜったいにスキル、いっぱい付いてるよ」
「く、クリスぅ」
というか、こっそり【万物真理】で見てるから、知ってるんだけどね。
レイナちゃん、ホントにスキルもMPもいっぱいあるから安心して?
「ははっ それは一人前になって、ギルドで調べるのが楽しみだな」
「えへへ、ほんと楽しみ~」
「そうだね、レイナちゃ──あっ」
「ん? どうした、クリス?」
「ギルドっていえば、ルシアママ?」
「は、はい」
「ちゃんとあとで、あやまりにいこうね?」
「わ、わかってる──いや、わかりました」
ルシアママは『普通に聞いただけ』っていってたけど?
あれ、りっぱな【襲撃】だから!
そうやって昨日、アイナママが【お説教】したら、ちゃんとわかってくれたんだ~
(というか、やっぱりアイナママには勝てないんだなぁ)




