040 ぼくの大好きな、3人のママたち
ぼくの【産みのママ】ステラママは、【土】【水】【火】【風】の4元素。
すべての【元素魔法】を使いこなす【大陸最強の魔女】と呼ばれていたんだ。
けれど、ぼくがまだ赤ちゃんのころに、病気で亡くなってしまったんだ、
そしてぼくの【育てのママ】アイナママは、神殿の女性神官。
【慈愛の聖女】の名を持つ、神殿最高位の【神聖魔法】の使い手。
実の娘のレイナちゃんと同様に、愛情こめてぼくをここまで育ててくれたんだ
それからぼくの【義理のママ】ルシアママは、エルフの魔法騎士。
【風の精霊魔法】の達人で、【斬撃妖精】の二つ名で呼ばれてる。
亡くなったステラママに代わってぼくを養子にしてくれて……
そして、そのおっぱいを吸わせて育ててくれた【母乳のママ】でもあるんだ。
そしてその3人は、前世のぼく……【召喚勇者】を支える【従者】だった。
すなわちそれは──
【元素魔法】の、【神聖魔法】の、【精霊魔法】の、大陸最高のエキスパート。
そんな最強の3人が──
「ぼくの大好きな、3人のママたちなんだ♪」
◇◆◆◇
「【リジェネレイト】!」
キラキラキラ、
アイナママの杖から放たれる神聖魔法。
その光が、【闇ギルド】の冒険者たちに斬られて瀕死だった人たちにふりそそぐ。
その聖なる光によって、傷は癒え、蒼白だった顔色に赤みがさしてき。
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【リジェネレイト】
種別:神聖魔法
状況:常時
対象:術者、対象者
効果:神々の神聖なる慈悲の力で傷を癒やし、同時に体力を回復させる魔法。
厳密には【物理ダメージを受ける前の状態】に戻す効果といえる。
なお軽度の損傷なら、装備品も同時に修復される。
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(よかった、ぶじにアイナママの魔法でなおって。けど、ごめんなさい、まきこんじゃって)
この人たちは、ただこのダンジョンの入口を管理してただけの人なのに、アイナママをさらう為だけに、斬られちゃったみたいで。
そして、なにはともあれ、
「ルシアママ? ぼくたちをたすけてくれて、ありがとう(ニコっ)」
「クリスぅ」
「おかげでこうして──むぎゅぅ!」
「あぁぁっ なんて可愛いんだっ クリスは! そんなコト言われたら、ママはっ ママはぁぁぁっ」
そのルシアママのおっぱいに、お顔をうずめて抱きしめられるぼく。
頭のほうに廻されたガントレットとは正反対の、やわらかすぎる感触。
そしてなによりも──
(ああ、ルシアママのにおい。赤ちゃんのぼくを育ててくれた、おっぱいのにおい)
ぼくを産んで間もない頃のステラママは、体調をくずすことが多くて……それに代わってルシアママが、いつも母乳を飲ませてくれたそうです。
だからこうして胸に抱かれてるだけで、ぼくは──
(あぁ いやされ、るぅぅ)
なにもかもがとけちゃいそうなほど、それはキモチよくて。
そのとき──
「こほんっ ルシア?」
「おお、アイナ! 久しぶりだ。元気そうでなにより」
「ええ、おかげさまで、助かりました。そして、おかえりなさい。貴女こそ、無事で何よりでした」
(おぉう)
そもそもこの世界は【武器を抜いたら殺し合い】だから、【返り討ち】は、襲われた側の権利でもある。
(だからぼくは、家族を守るためには手段を選ばないと決めたんだ)
そして歴戦の騎士のルシアママは、その権利を使うことに迷いはないけど?
【慈愛の聖女】の名を持つアイナママは、可能なかぎり【不殺】を望むんだ。
(けど、アイナママはそんな【主義主張】を、人におしつけたりしないんだ)
だからまず、助けてくれた感謝とお互いの無事、そして再会を喜んでる。
(すごいなぁ)
ぼくならお礼をいう前に、『なんで!』とか『どうして!』とかいっちゃうそう。
やっぱりアイナママはすご──
「ですが、どうせならもう少し、早く来ていただきたかったです」
「ん? そうだったのか? とはいえ、間に合ったではないか。こんな大人数に一斉に囲まれるという、ピンチに駆けつけたのだ」
「そう、だね」
そしてまわり見れば…20人をこえる、文字どおりの死屍累々。
「さぁ、クリス。もっとこのママを讃えてくれてもいいんだぞ? ん?」(どやぁぁぁ)
そんなドヤ顔で、ぼくを見つめるルシアママだけど>
「その前に、クリスは【魔物使い】に操られた30体を超える魔物を、単独で討伐してましたから」
「なに?」
「そして悪漢に拐われたわたしを、クリスが助けてくれました」
「なん、だと?」
「さらには魔物使いの使役から逃れた【魔族】と戦っていましたから。しかも爆発魔法と強力な再生魔法を使う、かなりの難敵とです」
「なん──だって!」
「えへへ~ でもアイナママとふたりで、倒したけどね」
「にゃにぃ!」
「ぼくひとりじゃ倒しきれなかったけど? アイナママの神聖魔法のおかげで勝てたんだ~ やっぱりアイナママはすごいや」
「うふふ、すごいのはクリスですよ? あなたが、あの魔法の指示をくれたから」
「アイナママぁ」
「あぁ、クリス」
(n‘∀‘)*:.。..。.:*(´- `*)
「な──っ!」
そんなふうにみつめあう、ぼくとアイナママ。
そこにルシアママの悲痛な悲鳴がひびいた。
「る、ルシアママっ どうしたの?」
「そそ、そんなクリスの危機に、私は間に合わなかったのか?」
「あっ うん、そうかも?」
「がーんっ!」
「こほん。ですからクリスなら、あの程度の冒険者は……ねぇ?」
「え? あー」
まぁ?
たしかにアイナママが一緒だったし?
なんとか不殺でやれないかなー? とか考えてたし?
「でも──あっ」
「………………(真っ白)」
いけない!
ルシアママが、真っ白に燃えつきてるぅぅっ!
「ルシアママっ!」
「あ、あはは……なじってくれ、クリス。この役たたずのママを、はは」
いけない!
このままじゃ、ルシアママがっ?
「ルシアママっ ぼく、さみしかった! だからっルシアママにあえて、うれしいっ」
ぎゅぅ
「く、クリスぅぅ! 私も嬉しいっ 嬉しいぞぉぉぉっ」
ぎゅぅぅぅっ
そうやって抱きあう、ぼくとルシアママ。
そしてそんなぼくたちに、アイナママは、
「ふふ、クリスはぼんとうに、優しい子ですね」
なんだか楽しそうに、笑ってくれたんだ。
◇◆◆◇
「まぁ、それは大変でしたね」
「ああ、その新しい魔族の司令官というのが、またイヤな女でなぁ 散々姑息な手で振り回された挙げ句、こんなに時間がかかってしまった」
「それで、少しはおとなしくなりそうですか? 魔族は」
「ああ、主力の【巨人兵団】ごと、ほぼ壊滅させてやったからな。あの女司令官の悔しそうな顔で、少しは溜飲が下がったぞ」
「まぁ、うふふ」
(おぉぉ)
とまぁ、さっきは真っ白に燃え尽きてたルシアママだけど?
その実力は本物で、単騎で魔王軍の主力兵団を、討伐できちゃったりする。
だから、軍が対処できない高レベルの魔物討伐にひっぱり出される事が多くて、今回も人族の砦にちょっかいを出してきた魔族の軍を、けちらしてきたみたい。
「おかげで久しぶりに我が村に戻ってみれば、とっくに収穫祭も終わり、村はすっかり冬支度で静まりかえってる」
「あら、先に村に戻っていたのですね?」
「あぁ、だが我が家に帰り着けば、居るのはレイナだけ。ひとしきりレイナとの再会を喜んでみれば──」
「あ、レイナちゃんも、おお喜びしてたでしょ?」
「あぁ、しかし! 聞けばクリスとアイナが、ギルドの依頼を受けているというではないか! いてもたまらず飛び出して、街のギルドに押しかけてなぁ」
(あー、ルシアママのばあい、ホントに空を飛んじゃうからなぁ)
ルシアママの【精霊魔法】は、文字どおり精霊にてつだってもらう魔法。
だからルシアママが風の精霊にお願いすれば、空くらい簡単に飛んじゃうし?
(ええと、【万物真理】? ルシアママって、どれくらいの速さで飛べるの?)
パッ
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【ルシア(エルフ)】の精霊魔法における飛行速度の考察報告
出典:万物真理【管理ログ】より
風の精霊に命じて飛行を行う為、その速度は任意で変更が可能。
精霊に命じて変更させてしまう為、風向きなどにも左右されることがない。
空中に停止の状態から、最速で時速120km程度までの飛行が可能と推測される。
特記:自宅~ケストレル間を最速で飛行した場合、その所要時間は【約8分】。
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(わーお)
馬車で2時間半の距離が8分ですかそうですか。
ホント、空を飛べるって反則だよねぇ
(まぁ? さすがの勇者魔法も、空は飛べないけど──)
「そうしたらなぁ、どういうわけか冒険者ギルドの中が殺気立っていてな?」
「そうなの?」
「私が『聖女はどこにいる?』と聞いてるのに、そこにいた痩せ気味の女神官が、何故か【聖防壁】を張って私を拒むのだ」
「やせぎみの神官!」
「ああ、こちらが急いでいるというのに、理不尽なことだ」
「そ、それでどうしたの?」
「ん?【聖防壁】ごと幾重の風刃で取り囲んで、高速回転させたらあっけなく消滅した」
「おぅふ」
「それで受付嬢のチーフという者に、問い質したんだが」
「受付嬢のチーフ!」
「私は家族だと言うのに、なにやら【守秘義務】とかあれこれ言い出してなぁ おかげで脅してその口を割らせ──いや、教えてもらうのに苦労したぞ」
「おぅふ」
「それで大急ぎでここまで来てみれば、2人が武器を構える連中に取り囲まれて──という所だったのだ」
「あ、あはは~」
(あ、アマーリエさんっ レニーさん……ごめんなさいぃぃぃ!)
◇◆◆◇
同時刻──冒険者ギルド
「うぅぅ も、漏れちゃいましたぁぁぁ」
「アマーリエ、安心しな」
「うぅ、レニーさぁん」
「あたしも、漏れてるからぁぁ」
◇◆◆◇
「ともあれ……アイナ? ずるいぞっ」
「人聞きの悪い、ずるいとは何です?」
「そもそもっ クリスに剣を教えたのは私ではないか。ならクリスが冒険者デビューする時に、一緒に居るべきは私だろう?」
「……クリスが一人前の誕生日を迎え、冒険者を志したその時に、留守にしていたのはどこのどなたですか?」
「ぐぬぬ」
「それに、神官のわたしが一緒に居たほうが安全でしょう? じっさいクリスはここ最近で、ぐっと成長しましたし」(どやぁぁぁ)
「ぐぬぬっ そ、それでもっ クリスの冒険者としての【初めて】は、私が欲しかったのだ!」
「まぁ」
「そのクリスの【初めて】を奪うなんて、やっぱりアイナはずーるーいーっ ムッキー!」
「ああもう、ルシアったら大人げない」
そんなルシアママをなだめながら、に苦笑するアイナママ。
そしてぼくを見て、いたずらっぽく笑った。
(あ、そっか。別のぼくの【初めて】も、アイナママにあげちゃったんだった)
とにかく、ルシアママが無事でぼくもうれしい。
だからぼくは、ふたりのママの間にはいって、その両手をつなぐ
「ルシアママぁ アイナママぁ いっしょにおうちに帰ろう?」
「ああ、そうだな、クリス」
「ええ、そうしましょう、クリス」
そして3人ならんで、一緒に歩きだす。
優しくてきれいなアイナママ。
かっこよくてきれいなルシアママ。
そんなふたりのママが、ぼくは大好きだ♪
これにて【第1部】完となります。
ご愛読ありがとうございました。
引き続き【第2部】をお楽しみくださいませ




