039 ぼくと、アイナママの共闘
創生の時代──
なにもないこの空間に【大父神】と【大母神】の夫婦神が現れて、大陸と海、そして世界を創った。
そして数々の神々を創り出したが、原初の火之神を創ったときの火傷が原因で【大母神】は亡くなってしまった。
大父神は悲しみ、その後も新たな妻を娶らず、その後は一柱で、神々を創り続けた。
そして大父神はこの大陸でも肥沃な地に、神々の【眷属】を創った。
そのいくつか創ったその眷属のうち、繁殖を繰り返し、その数で他の眷属たちを圧倒した種族があった。
それが【人族】であり、それ以外の眷属たちは【亜人】と呼ばれる様になった。
人族と亜人たちは神々を敬い、そして神々はその神力で眷属たちを守った。
そんな神々と人々の平和な暮らしが、永遠に続くかと思われた。
そんな折、神々と世界に害をなす【邪神】が現れる。
大父神は激闘の末、その邪神を大陸の未開の地に封じ込めた。
邪神は怒り、いずれ力を蓄え大陸を攻め滅ぼすと、神々に宣言した。
そして封じられた未開の地を【魔素】で満たし、その眷属として【魔族】と【魔物】を作った。
その後、大父神は神々を連れて天界に昇り、現世から姿を消した。
そして神々は人族に加護を与えつつ、大陸を管理させた。
これが、数千年に及ぶ人族と魔族の……その戦いの成り立ちである。
◇◆◆◇
「【キリエレイソン】!」
キラキラキラっ
「ぐぁぁぁっっ!」
アイナママの紡ぐ神聖魔法が、魔族に向かって放たれる。
その聖なる光に魔族の肌は焼け、青白い炎に包まれた!
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【キリエレイソン】
種別:神聖魔法
状況:戦闘時
対象:魔族・魔物
効果:神々の神聖なる慈悲の力で、
闇の眷属、邪なる者の存在を浄化し、消し去る魔法。
ほぼ確実にダメージを与えるが、対象の持つ属性により効果が異なる。
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魔族はそのシルエットこそ人族に近いものの、その体内に魔石を持っている。
そして邪神を崇拝することから、神聖魔法の【浄化】でダメージを受けるんだ!
「ぐぅぅ、かぁぁぁっ!」
「なっ!」
けれど魔族がその気をめぐらせると、その焼けただれていた身体は瞬時に修復され、ほぼ元の姿に戻ってしまった!
(再生魔法っ? しかもあんな早く!)
魔族大陸に満ちた【魔素】の中で暮らし、そして体内に【魔石】を持つ魔族にとって【魔法】は身体の一部のようなもの。
人族がスキルを得て、呪文をとなえることでやっと発動する魔法も、魔族にとっては【考えただけ】であたりまえに発動する。
(勇者のころ、何体も魔族を討伐してきたけど……こいつの再生魔法、すごくレベルが高い!)
アイナママも回復魔法でケガをなおせるけど、あんな広範囲の損傷なら、数分かけてゆっくりと癒やされてゆくはず。
それをあの魔族は、瞬時に修復してしまった。
「アイナママ、ぼくがいくよ!」
「クリスっ」
「だからぼくの身体に、【衝撃】から身を守ってくれる防壁をおねがいっ」
「っ! わかりました!」
アイナママ最強の魔法防壁【アスガルド】は、その強力さゆえに、あらゆる攻撃を防いでくれる。
けどそれだけに、こちらからの攻撃までできなくなってしまう。
だから──
「【アインヘリヤル】!」
ぱぁぁっ
ぼくの身体を、アイナママの魔法が包み込む。
その虹色の輝きをまとったまま、ぼくは【俊足】のスキルで駆けだした!
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【アインヘリヤル】
種別:神聖魔法
状況:戦闘時
対象:術者、対象者
効果:神々の神聖なる慈悲の力で、対象者の周囲に聖防壁をまとわせる魔法。
攻撃による衝撃を緩和・消滅させ、白兵戦を行う対象者の身を守る。
ただし、炎熱や氷結、雷撃などのダメージは防ぐ事が出来ない。
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「たぁぁぁっ!」
「くっ!」
ドンッ! ドンッ!
魔族がまた、ぼくに爆発魔法を連続で放つ。
それはぼくの身体にあたり──
チュイン!
そんなカン高い音をたてて、消滅してしまった
まるで熱した鉄板の上で、垂らした水滴が踊って消えてしまうように。
「な、なんだとっ!」
「やぁっ!」
スパパパッ!
「ぐあぁぁぁっ!」
【抜刀術】のスキルが三連撃でひらめき、魔族の目、のど、胸を切り裂く。
だけど、
「なんのぉぉっ!」
ドンッ! ドンッ!
チュイン! チュイン!
「くうぅっ?」
瞬時に再生してしまい、狂ったように爆発魔法を打ち返してきた。
まるで弾幕のようなその連撃に、ぼくは翻弄され続ける。
衝撃こそ消してしまえるものの、その視界は奪われ、今度はこっちが身動きを封じられた。
「【キリエレイソン】!」
キラキラキラ、、
「ぐおぉぉっ!」
「アイナママ!」
アイナママの神聖魔法は、人族であるぼくには効かない。
おかげで体勢をたてなおすことができたぼくは、その距離をとってアイナママのところへ戻った。
「アイナママっ ありがとう!」
「いいえ、しかし……効果は薄いようですね」
「うん、あの再生魔法、やっかいだね」
「あぁっ もっとママの魔法に、威力があればいいのですが」
アイナママより威力のある神聖魔法を使える人なんて、他にいるのかなぁ
「──あ」
効果を高めたければ、どうすればいい?
炎なら、酸素を増やして燃焼効率を上げてやる。
薬草なら、うんと煮詰めてエキスを濃くしてやる。
そして照明の光なら、広範囲を照らすんじゃなくて──
「アイナママ! 【照明】の魔法っ 強くできたよね?」
「え? あれは強くしたわけではなく──」
「そう! だからうんと細く【絞って】ほしいんだ!【キリエレイソン】の魔法を!」
「っ! わかりました!」
アイナママはふたたび、組んだ両手を掲げて祈りを捧げた。
そして光り輝く魔法の奔流が──
「【キリエレイソン】!」
キラっ
「ぐあぁぁぁぁっ!」
まるでスポットライトのような光が、魔族の身体に照射される。
その明らかに強い光に、激しい炎をあげて魔族が苦しみもがく。
「アイナママ! もっと細く!」
「も、もっとなの?」
「そう! それで心臓のところを!」
「わ、わかったわ!」
浄化の光が、更に細く細く絞られて──
ヒュボっ!
「ぐっはぁぁぁっ!」
「いまっ! 【縮地】っ!」
ビキッ
【縮地】のスキルで肉薄するぼくが、貫いたソレは、
浄化のレーザーがぽっかりと空けた、胸の穴から覗く──
魔族の【魔石】だった。
「な──」
ぱぁぁっ
そして魔石を砕かれた魔族は──
光となって、かき消えてしまった。
「はぁぁぁ、やった!」
ぎゅっと目を閉じ、歯を食いしばって勝利を実感するぼく。
とても快勝とはいえない、ギリギリの勝利。
そしてなにより──
「やっぱりアイナママはすごいや! ぼくだけだったら、勝てなかったかも──」
がばっ
「むぎゅぅ」
「クリスっ!」
アイナママのとつぜんのハグに、ぼくのお顔はおっぱいに沈む。
いつもならそれは、うれしいはずなんだけど、
「うぅっ クリスっ よかった……ほんとうに、無事でっ」
「あ、アイナママぁ」
ぼくのお顔に落ちる、アイナママのなみだ。
もちろんそれがうれしいなみだなのはわかってる。
けど、
「アイナママぁ あぶない目にあわせて、ほんとうにごめんね?」
「うぅっ ぐすっ」
「そして、ぼくをまもってくれて、ほんとうにありがとう」
「クリスっ クリスぅぅ」
いまもちいさく震えるアイナママのその身体を、ぼくもきゅっと抱きしめて──
そんなぼくたちはふたりで抱き合ったまま、おたがいの無事をよろこんだのでした。
◇◆◆◇
「おいおいw 聖女とガキ、出てきたぜ?」
「なんだよ、闇ギルドの【切り札】ってのも、大したことねぇなぁ」
「いいじゃねーか、おかげで俺らが、なぁ?」
「ああ、最後にオイシイ所がいただけるとはなぁw」
そんなぼくたちが、ダンジョンの地下洞窟から出てくると……
そこにいたのは、20人をこえる、冒険者たち。
(あー)
しかも全員、剣やタガーを抜き、そして弓を構え、発動寸前の杖をこっちに向けていた。
【万物真理】のレーダーでわかってたとはいえ、
(出口、ここしかないしなぁ)
とりあえず、どう対処しようかと考えてると──
「クリス! あそこに人が」
「なっ!」
アイナママが指し示す先には、ダンジョンの入口を管理してたひとたちが、斬られて倒れてた。
「なんということを──」
「とにかくあの人たちを助けなきゃ!」
ぼくらが駆け出そうとした、その時。
ヒュ──
風が吹いた。
──ヒュパッ! ──ヒュパッ! ──ヒュパッ!
「くふぁ──」
とつぜん、冒険者たちが倒れてゆく。
ぼくたちを取り囲んでいた、そのすべてが。
「えっ!」
「まぁ」
そしてその全員の──首がなかった。
不可視の刃に、切り飛ばされてしまったから。
どさっ
そして、高いところからに落ちてきた、なにか堅いもの。
それはいわゆる【鎧の胸のパーツ】で、
「これって──むぎゅぅ」
「クリスっ 逢いたかったぞ」
とても柔らかくて大きなおっぱいに、お顔を埋める格好で抱きしめられるぼく。
そしてそのおっぱいは、アイナママのおっぱいじゃなくて、
「ん~っ ずっと逢えなくて、死にそうだったのだっ あぁ、愛してるぞっ クリスっ んちゅぅぅっ」
そう言うと、
その【女性】は、ぼくのお顔にキスをする。
それはもう、熱烈に、何度も何度も。
「お、おかえりなさいぃ」
「ああ、ただいまだ。クリス♪」
この女性こそ、かつての勇者の従者にして、精霊魔法使いの魔法騎士。
【斬撃妖精】の二つ名を持つ、眉目秀麗な妙齢のエルフ。
ぼくのもうひとりのママ、ルシアママだったんだ。




