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ママとビキニと、かわいい英雄  作者: 身から出た鯖
第1章 アイナママは、もと【聖女】
36/92

036 はじめてのダンジョン攻略

「えっ ダンジョン!」

「ええ、クリスくんももうレベル7ですからね。たとえ単独だとしても、挑戦が可能と判断しました」

「やった」


 あいかわらず、ホントのレベルは63のままだけど?

 【万物真理(ステータス)】に討伐した魔物を記録させてるから、その経験値の合計で計算してもらったら【レベル7相当】になってたんだ~


「いくらアイナさんがいらっしゃるとはいえ、この速さは異例ですよ! しかもアイナさんの魔法は4等級縛り、そしてほぼ魔物は倒していないとの事ですし!」

「えへへ、そぉですか?」

「さすがはクリスくんっ 我がケストレル支部期待のホープ!【かわいい英雄】♪」

「ちょっ」


 それっ ホントにぼくの【二つ名】なのぉっ?


「そして聞いていますよ? 先日、二人組のパーティーを助けたそうですね」

「あー 聞いちゃいました? えへへ」

「それはもう、鮮やかな剣筋で、あっという間に魔物たちを斬り捨てた!と。ギルドとしてもクリスくんには、非常に高い評価をしていますよ」

「そうなんですか? いやぁ~」

「そして私からも個人的に、【アマーリエポイント】を90点あげちゃいます」

「えと、それは集めると?」

「100点集めたら、私をお嫁さんにできます」

「わー、あと10点だー(棒)」

「うふふ、頑張って集めてくださいね?」

「が、がんばります?」


 あっ アマーリエさーん、気づいてー

 アイナママの笑顔のほっぺが、ぴくぴくしてるからー


「えと、それで【ダンジョン】ですけど?」

「あら、失礼。話がそれましたね、てへ☆ クリスくんに攻略をお勧めするダンジョンは、この街の西にある【タフクの塔】と、それに通じる地下洞窟です」

「タフクの塔って、この街からも見える、あの?」

「ええ、あの湖の小島に建つ塔は、現在は魔物の巣になっています」

「えっ」


 なんで、そんな街に近いところ──


「あ、今『なぜ街に近い所なのに、放置しているの?』と思いましたね?」

「そのとおりですぅ」

「ええ、ダンジョンは本来【忌避すべき魔物の巣】なのですが」

「ですよね?」

「ですが、冒険者にとっては【良質な狩り場】です」

「あっ そっか」

「また近隣の村や街にとっては、冒険者を集めお金を落とさせるという、一種の【産業資源】とも言える訳でして」

「さんぎょうしげん」

「故にあえて放置する場合も多く、ダンジョンを中心とした街もある程なんです」

「あえてほうち」

「もちろん国やご領主様としては、表立って推奨こそされておりませんが……産業及び雇用にも繋がる事案であるため、【定期的な魔物討伐】と【その拡大を阻止】する事を前提に、黙認しているのが現状なんです」

「なんと」

「じっさい【タフクの塔】の魔物は【初心者】でもなんとかなるレベルですし? それでいて魔物の出現率は野外とは段違いですので、腕を磨くのには丁度いい【狩場】なんですよ」

「あー」


 アイナママをちらりと見れば……

 おすまし顔でこっくりとうなずいているから、そういうものみたい。


「しかも、ダンジョンの魔物は【ドロップアイテム】の確率も高く、そのダンジョン内に設置された【宝箱】には、なぜか定期的にお金やアイテムが入ってるんです」

「ふしぎ」

「とある学者による『ダンジョンが冒険者を誘う為』なんて主張もありまして」

「ダンジョンが、さそう」

「ともあれその危険度を差し引いても、ギルドとしては利益の方が大きいんです」

「なるほど」

「故に当ギルドといたしましては、あのダンジョンで腕を磨き・踏破することで、6等級──いわゆる【初心者】の壁を乗り越えていただく事を推奨しています」


 じっさいダンジョンでコツコツとレベルを上げて、そしてお金もためて、装備を整えるのは基本中の基本だし?

 けど、そのために魔物の巣を【あえて放置】かぁ。


(ゲームとかだと気にしなかったけど? 街の近くにダンジョンがあるって、そういうことなんだなぁ)


 ケストレルの街はそもそも大きいから、産業にはしてないだろうけど~


「そもそもあの塔は、かつて魔王軍の侵略に備えるための、この大陸に4つある塔型要塞のひとつだったんです」

「とうがたようさい」

「800年ほど前に【大賢者】様の指示で建てられまして、当時はあの塔の最上階に、とても強力な【魔導砲】があったそうですよ?」

「まどうほう!」

「もちろん現在は撤去されて、塔自身も役目を終えていたのですが」

「ですが?」

「地下洞窟ごと封鎖していたのが仇になり、魔物が住み着くようになりまして……気づけばダンジョン化していた、というのが実情ですね」

「おぅふ」

「ですから現在はその塔に通じる地下洞窟ごと、ダンジョンに指定されています」


 ◇◆◆◇


 そんなわけでぼくたちは、【タフクの塔】のそばまでやってきたんだけど、


「うわぁ、【入場料】とるんだ?」

「ええ、けれど料金は安いから、どちらかというと……冒険者以外の人たちが入り込まないようにする配慮、かしら?」

「なるほどー」


 入り口に人をおいてみはるだけでも、お金はかかるし?

 あとは、どういう人が入ったか、チェックする機能もあるのかも?


(とはいえ、中に入ったパーティーが帰ってこない、なんて事になっても?捜索とかはしないんだろうなぁ)


 冒険者はあくまで【自己責任】。

 たとえダンジョンで死んじゃっても、それは死んじゃった自分が悪い。


「さて、クリス?」

「なぁに? アイナママ」

「じゃあここで、野外とダンジョンの違いを、ママに教えて?」

「あ、はい」


 アイナママはこうしてときどき、ぼくに質問をするんだ。

 それは冒険者として知らなきゃいけないこと。

 だから、その確認をしてくれるんだ~


「ええと、まず、ダンジョンに入るには、5人以下のパーティーであること」

「それはなぜかしら?」

「それより多い人数だと、魔物がたくさん集まってきちゃうから」

「正解よ クリス。冒険者がたくさん集まっていると、魔物もそれに対抗して集まってしまうの」

「うん」

「そして群れをなして、いっせいに襲いかかってくる……それを【スタンピート】といって、大規模になれば【災害】として扱われるわ」

「こわいよねぇ」

「そして集まった魔物から逃げ出すと、追いかける魔物を誘導することになるの。【トレイン】と呼ばれるそれを引き起こすことは、冒険者として、とても【罪深い行為】で、罰せられる対象になるわ」

「トレインだめ、ぜったい」


 【トレイン】っていっても? 【列車】じゃなくて【長い行列】って意味だけどね~


「ええ、それから他にあるかしら?」

「えと、中はくらいから、たいまつか【照明】の魔法がいります」

「そうね、ただそれは地下にあるダンジョンに限ったお話で、今回のような【塔】の場合は、日中はお日様の光が入るから必要ありません」

「そうなんだ~」


 たいまつは安いけど、その明るくなる範囲が狭いから、魔法のほうが有利だ。

 それに【照明】の魔法は【ランタン】みたいに周囲を照らしたり、


(その光を集めて【サーチライト】みたいな使いかたもできるからね)


 ちなみに【照明】の魔法は神官なら、初心者でも覚えてる。

 だから今回はアイナママが使ってもOKです。


「あとは、マッピングが必要だよね?」

「そうね、別名【迷宮】と呼ばれるのがダンジョンです。正確な地図こそ、パーティーの生命綱となります」

「地図は、買えたりしないの?」

「少なくてもこの国では、ダンジョンの地図を売買したり譲渡したりすることは、犯罪行為として固く禁じられているの」

「そうなんだ?」

「それを元に、低レベルの冒険者が無茶をすることがあるのよ」

「それはあぶない」

「ええ、だから自力で地図を描き、踏破するまでがダンジョン攻略なの」

「ですよねー」

「そして地図制作は、シーフや神官が主にするわ。だからママにまかせて?」

「たよりにしてますぅ」


 とはいえ、きっとアイナママのこと。

 ぼくが通らなかったり、気がつかなかったところは描いてくれないと思う。


(それもぼくのためなんだけどね~)


 そんな確認をしてからぼくたちは、いりぐちでお金をはらって、ダンジョンに挑戦したんだ


 ◇◆◆◇


「てやっ!」

「キュキー!」


 【ミラージュモス】をまっぷたつにすると同時に、ぼくは後ろに飛びのける。

 そしてその身体から毒の粉が、もわっ っとまいあがり、ぱぁっと光るとその姿を魔石に変えた。


「ふぅ、また【毒】の魔物だよぉ」

「あら? クリスは返り血や毒の粉を避けるのが上達しましたね」

「そう? えへへ」

「でもママ、お仕事が減って寂しい」

「ちょっ!」

「うふふ、冗談よ」

「もぉぉ!」


 そう、この【タフクの塔】は、【毒】の魔物の巣窟だったんだ、

 この前の【毒の沼地】にいた魔物に加えて、さっきの【ミラージュモス】、そして毒針で刺してくる【ポイズンビー】がセットで組んできて、


「うぅっ ポイズンビーはめちゃくちゃ仲間をよんで増えるし、ミラージュモスの毒粉を浴びると幻覚を見せられるし!」


 【幻覚】状態になると、その姿が定まらなくなって、見当違いのところを斬っちゃうみたい。


(火の魔法で一気に焼いちゃえばいいんだけど~)


 ぼくが使えるのは【土魔法】の礫弾、【ケースショット】だけ。

 ダメージは弱めだし、むしろ毒粉がいっぱい広がる。

 なのでぶっちゃけ相性があんまりよくない。


(だから、うかつに毒粉をあびると)


 ただでさえ攻撃があたらないのに、ポイズンビーがどんどん増える。

 そうなったらもう、HPは少ない魔物だから?

 アイナママが【ホーリーブレス】で一気に討伐しちゃう。


(でもそれってぼく的には負け、だよねぇ やっぱり剣のスキルだけじゃ、この先きびしいのかなぁ)


 ◇◆◆◇


 と、そんなこんなで討伐は、ビミョーに進まない感じ?

 けれど、このダンジョンでの目的は、あくまでコツコツとレベルを上げること。

 だから、今日は村に帰らず泊まる予定だったんだけど──


「なんでダンジョンに【宿屋】があるのっ?」

「いらっしゃい。そんなの冒険者を泊めるために決まってるだろう? で、泊まるのかい?」


 そんなおじさんは慣れてるのか、さらっと聞きかえしてきた。


「ええ、2人で、暖炉の近くをお願いします」

「あいよ、食事はどうする?」

「それも2人分お願いしますね」

「わかった、じゃあすぐ持ってくよ。そうだな、じゃあ暖炉の右脇に陣取ってくれ」

「判りました、お世話になりますね」

「お、おせわになりますぅ」


 アイナママはここを知ってたみたいで、てきぱきとお願いをしてお金をはらう。

 そしてふたりで暖炉のそばにすわった。


「ここはね、場所がら新人冒険者が多いでしょう? だからその救済で、聖防壁を張って宿屋を置いているのよ」

「そうだったんた」

「うふふ、驚いた?」

「とっても」


 ぼくたちのほかにも4組くらいのパーティーがいて、みんな固まって床にざこ寝をしてた。

 そんな中でも、暖炉に近いぼくたちの場所は特等席。

 だから他の人たちより、ちょっとお高いみたい。


(そっか、レニーさんのいってた【普通の宿屋】って、こんな感じなんだ~)


 前にレニーさんの定宿に泊めてもらったけど、あんな個室でベッドがある宿屋は、超高級なんだって。

 だから普通の宿屋はこんなふうに、大部屋でざこ寝するんだ。


(レニーさんたち、あの街のトップパーティーのひとつだもんねぇ)


 それにしても?

 まわりの冒険者のひとたちもみんな若くて、そしてお疲れみたいでぐっすり寝てる。


(こうして泊まりこみで、がんばってるんだなぁ)


 そして僕たちも、今日はお泊まり。

 てっきり街までもどるのかと思ってたけど?


「えへへ、ダンジョンの中でお泊りなんて、なんだかわくわくする」

「うふふ、いい経験になったわね」

「うんっ ありがとう、アイナママ」

「ええ、そのかわり、【レッスン】はお預けですけどね」

「わ、忘れてたぁ」

「まぁ、クリスったら」

「えへへ~」


 なんて小声で話すぼくたち。

 みんな寝てるから、お静かにね


(けど、アイナママのおかげでMPもすごく増えたし? もしかしたら【勇者魔法】が使えるようになるかも?)


 あれからアイナママとの【レッスン】で、ぼくのMP(マジックポイント)は順調に増えてるんだ~

 ちなみに増えるのは、1日あたり8~12くらい。

 1日の【回数】が多いほうが、MPも多く増えるみたい。


(だからぼくの今のMPは【251】)


 だいたいレベル20台中ほどの、魔法使いくらい?


(アイナママと【レッスン】できて、そのうえMPまで増えるなんて……しあわせすぎるなぁ えへへ♪)


 とはいえ、今日はそれもおあずけ。

 そして運ばれてきた黒パンは堅いし、スープは具が少ないし?

 ワインはあいかわらず【ナゾの色付き水】だし~

 だけど、


「アイナママ、おやすみなさい」

「おやすみなさい、クリス。ちゅっ」

「アイナママにも、ちゅっ」


 アイナママとひとつの毛布にくるまって、暖炉の火に照らされながら、抱きあって眠るぼくたち。

 たまにはそんな夜も、とっても楽しかったんだ。

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