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ママとビキニと、かわいい英雄  作者: 身から出た鯖
第1章 アイナママは、もと【聖女】
35/92

035 かわいいって、いわないでよぉ!?

『キャ──っっ』


 それは、

 ぼくとアイナママが、依頼を終えて街にもどる途中のことだった。


(【万物真理(ステータス)】!)


 とっさにぼくがその呪文をとなえると、頭の中にレーダーが浮かびあがる。

 ここから300メートルほど先、そこには人族を示す青い光点がふたつ。

 そして10をこえる赤い光点──魔物の表示があった。


「アイナママっ!」

「……(こくり)」


 ぼくがそのお顔を見ると、同時にうなずいてくれるアイナママ。

 その直後、ぼくはレーダーの示す方向に向かって駆けだした!


(まにあえっ! もっとはやくっ)


 祈るようなそんなキモチで走るぼくに【俊足】と【跳躍】のスキルが発動する。

 まるで大型のネコ科の動物みたいに、しなやかに身体が動くのがわかる。

 足場の悪い森の中、しげみを飛びこえ、木の幹をけり──

 文字どおり飛ぶようなはやさで、悲鳴の主のところへたどり着いた。


(っ!【ラビドードッグ】に【デスクロウ】!!)


 2種類の魔物が連携して、冒険者を襲ってる。

 魔物は魔物どうし、争ったりすることがない。

 むしろ人族への殺意をもつ魔物同士、協力しあうことだってよくあるんだ。


「助けがいりますかっ?」

「お、おねがいっ!」


 まずは救助の意思確認。

 これをしておかないと【エモノの横取り】ということにされかねないから。

 とはいえ? ふたりとも女の人、剣士の人は脚をえぐられて動けない。


(魔法使いの人は火の防壁を張ってる、けど、)


 魔物の半分以上は【デスクロウ】、すごく大きい凶暴なカラスの魔物。

 だから飛んで、防壁の上から襲ってくる。


(しかもコイツ、動きがかなり速くて連続攻撃してくる!)


 そのうえ【ラビドードッグ】は【遠吠え】のスキルを持ってて、これは【瞬発力低下】の効果がある。

 だからこの2種に組まれると、


(こっちの速度をダウンさせられたあげく、2回連続攻撃を受けるんだ!)


 そしてそのパターンにハマっちゃったのかも。

 ふたりの冒険者たちは、まさに絶体絶命だった。


「【ソニックブレード】!」


 キュ──ン


 抜いた剣に風の精霊をまとわせ、振りかぶる。

 空気を切り裂く、カン高い高周波の音がひびいた。


「たぁぁっ!」


 ぼくは【跳躍】のスキルを維持したまま高く飛び上がる。

 そして防壁を飛び越えようとしていたデスクロウを、まっぷたつに斬った。


「ガァァァっ」

「やっ!」

「キャウン!」


 そして着地の瞬間、いちばん大きなラビドードッグを横なぎに斬る。

 きっとこいつが【司令塔】だったのかも?

 ほかのラビドードッグたちがひるむのを感じた。


「こいっ」


 とはいえ相手は魔物で、人族に明確な殺意をもっている。

 保身を考えない捨て身の突撃で、いっせいにぼくをおそってきた!


「【ケースショット】!」


 空から襲ってくるデスクロウに向かって、ぼくは呪文をとなえた。

 てのひらの魔法陣から【礫】──鋭く尖った岩のかけらがいくつも飛び出した。


-------------------------------------

【ケースショット】

 種別:元素魔法(土魔法)

 状況:戦闘時

 対象:魔族・魔物

 効果:空気中の元素から礫弾を作り出し、標的に向かって発射する魔法。

    一度に10を超える礫弾を同時に発射することができる。

    殺傷力は微力だが、術者の意思によってその速度や範囲の変更が可能。

-------------------------------------


「ガァっ」

「いまっ」


 ぼくが使える唯一の【元素魔法】である【土魔法】。

 それを応用した【ケースショット】。

 いわゆるショットガンみたいに、たくさんの礫弾を打ち出すことができるんだ。

 だからまず的を外すことがなく、そして当たりさえすれば──


 ズバッ!


 礫弾にひるんだ魔物を斬るのはとてもカンタン。

 あっけなくぼくの剣に斬られてしまう。


「つぎっ!」


 そうしてアイナママが駆けつけるころには──

 ほとんどの魔物が、その姿を魔石に変えていたのでした。


 ◇◆◆◇


「あ、ありがとうぅぅっ」

「うぅ、おかげでたすかりましたぁぁっ」

「うわっ」


 ぎゅぅぅぅ~


 さいごの魔物を切り終わったあと。

 ぼくが剣を収めたとたん、左右から冒険者のお姉さんたちに抱きつかれる、ぼく。


(お、おっぱいが~~~っ)


 ぼくに抱きついたお姉さんたちのおっぱいがちょうどお顔に!

 しかもそれはビキニアーマーに包まれた、やわらかいおっぱい。


(こ、こんな柔らかいのに、板金鎧より防御力があるだなんてぇぇ)

「で、でもすごかったぁぁぁ」

「ホントっ あっという間に魔物を!」

「あんなカッコイイの、初めてぇ」

「うんっ それに魔法も使えるなんてっ すごい」

「え? えへへ」


 なんて、ぼくがお姉さんたちに挟まれていると、


「こほん、そこの剣士のかた? まずはその怪我を治療しましょう」

「え? あっ ありがとうございますっ」


 アイナママが剣士さんに声をかけて、治療を申し出てくれたんだ。


「【ライトヒール】!」


 パァァァッ


「これで大丈夫でしょう」

「す、すごい……ライトヒールなのに、跡形もない」

「ふふ、回復魔法には多少の自信がりますので」

「え、ちょ──まさか、聖女様っ?」

「ええ、そう呼ばれる方もいらっしゃいますね」

「「えぇぇぇぇぇっ」」

「ですが今は、小さな村の神官に過ぎませんよ」


 アイナママが【聖女】だって気づくお姉さんたち。

 そりゃぁ、驚くよねぇ


「ととっ ということは」

「あのコが──」

「「【かわいい英雄】っ」」


 なんですと?


「英雄級冒険者の息子にして、その愛弟子っ」

「ギルドの塩漬け依頼を何件も、達成してる期待のホープ!」

「なのに食べちゃいたいくらい可愛くて──」

「思わずその全身をっ ペロペロしちゃたいくらいラブリーな男のコ!」

「あ、あのウワサ」

「「ホントだったんだ~♪」」

「うぷっ」


 むにゅぅぅぅ~


 おっぱいという海で溺れたら、こんなかんじ?

 その4つのビキニおっぱいに、お顔をもみくちゃにされるぼく。

 そんな荒波ならぬ、軟波(?)に揉まれてると──


「こほん! おふたりとも? そこまでです」

「はっ、はいっ」

「し、失礼しましたっ」

「あなたがたの感謝はいただきました。それではわたし達はこれで、クリス?」

「はい、アイナママ」


 ようやく軟波から開放されたぼく。

 アイナママのちかくに駆けよった


「じゃあお姉さんたち? お気をつけて~」

「あぁっ クリスくぅん」

「ホント、あんな可愛いのに強いなんてぇ」


 そんなお姉さんたちの熱い視線を背中にあびながら、

 ぼくとアイナママは、街に向かって歩きだしたのでした。


 ◇◆◆◇


 そしてお姉さんたちが見えなくなって、しばらく経ったころ。


「……アイナママ?」

「どうしたの? クリス」

「ぼく、ちょっとお花をつみにいってくるね?」

「ええ、わかったわ」

「ちょっと時間かかるかもだけど、きにしないで?」

「うふふ、ごゆっくり」


 ぼくはそういって、アイナママに背を向ける。

 そして茂みの向こうに駆け出だして──

 そのまま止まらずに【俊足】と【隠密】のスキルを起動した。


(あと50メートル……と、いたっ)


 ぼくが足を止めたところには、5人の冒険者がいた。

 剣士が4人に、シーフがひとり。


(バランスの悪いパーティーだなぁ)


 そして誰もがぼくを見て、ぽかんとした顔をしてる。


「おいおい、こりゃぁどういうこった?」

「知らねぇよ! だが、手間が省けただろ」

「だな、わざわざ片方だけ来てくれるとか」


 そして次第にその顔が、ニヤニヤとしたイヤらしいものになる。

 だからぼくはこういってあげた。


「あのぉ、ぼくたちにご用ですか?」

「聞いたかよ?『ご用ですか』だとw」

「ああ、ご用でちゅよぉ? ボクちゃんw」

「正確には、あっちの聖女サマにだけどな」

「けどよぉ、このガキにも懸賞がかかってんだろ?」

「ああ、でもこのツラだ、高く売れるわw」

「ちがいねぇw」

「……それでご用って、なんですか?」

「ああ、カンタンなこった。俺らと一緒に来てもら──」

「あ、お断りします」


 ぼくはそういうと、ぺこりと頭を下げて、回れ右をする


「ま、イヤでもそうしてもらうがな」

「………………」


 5人がいっせいに、剣やタガーを抜くのがわかった。

 そしてぼくが首だけふり向くと、その剣を見せつけるように、またイヤらしい笑みを浮かべた。


「あのぉ 剣を抜くってことは、反撃されてもいいってことですよね?」

「あぁ? 反撃だぁ? できるものならしてみ──くぁ」


 スパッ


「覚悟できてるんなら、いいんですけどね」


 スパッ


「どうせ【万物真理(ステータス)】のレーダーでも」


 スパッ


「黄色い光点で【敵意】があるのはわかってましたし?」


 スパッ


 振り返りざまにそんなことをいいながら、4度剣を振る。

 【抜刀術:LV87】のスキルが正確に急所──喉を深く斬り裂く。


 ドサドサっ


 4人の剣士が声もなくもがき、倒れた。

 そして残ったシーフに聞いてみる。


「ひっ ひぃぃぃっっ」

「ええと、あなたがたも【闇ギルド】の人ですか?」

「た、助けてくれっ」

「きいてるのに」

「そ、そうだっ 闇ギルドの依頼なんだ!」

「あー、やっぱり」


 これで襲撃は3回め。

 正確には、襲撃されるまえに返り討ちにしてるけど。


「頼むっ 助けてくれ!」

「いいですよ? そのかわり」

「な、なんでも言うとおりにするっ だから──」

「にどとぼくたちに関わらないこと。それから他の人たちにも、やめるようにいってください」

「わ、わかった! 誓う!」

「じゃあ」


 そういって、ぼくが背中を向けると──


「あ、甘いんだよっ ガキが──カフぁッ」


 スパッ

 ドサッ


「むぅ、どうしてこういう人たちって、背中を向けただけで『勝てる』って思うんだろ? さっきもそれで斬られてるのに」


 しかもこのシーフも、最後まで【敵意】がぜんぜん減らなかったし。

 悪いけど、ぼくの有能すぎる【万物真理(ステータス)】さんにかかれば、丸見えだよ?


「いけない、アイナママが心配しちゃう。それに【いつもの人】にも気づかれないうちに、っと」


 ぼくはまた【俊足】のスキルで駆け出すと、アイナママのもとへ急いだ。


(ここ何日か、誰かがずっとあとをつけてくるけど……敵意はないみたいなんだよねぇ?)


 考えられるのは……闇ギルドの監視員とか?

 それとも冒険者ギルドがつけてくれた護衛の人? かも。


(どちらにせよ? アイナママがイヤな思いをする前に、終わらせちゃうけどね~)


 ともあれ、勇者の頃からこんな襲撃は何度もあった。

 その多くは、魔族にたぶらかされたり、賞金に目がくらんだ人だったけど。


「けどどの人も? 許しても、見逃しても、ぜったいに改心なんてしないんだよねぇ」


 というか、ウソをつくぶん魔物よりタチが悪い。

 そう……最近のコレも、さいしょの1回は軽く痛めつけて見のがそうとした。

 2回めは半分斬って、残りに警告したうえで見のがした。

 けど、3回とも見逃したとたん、その【敵意】がぐんぐん増すだけ。

 そして全員が、ぼくの背中を斬りつけてきた。


「もう次から確認はいらないかな~ どうせみんな【闇ギルド】ってとこの人みたいだし?」


 どちらにせよ、ぼくの家族を狙うのは絶対にゆるさない。

 この勇者のチカラで、アイナママたちを守りぬく。

 ぼくはそう決めたんだ。


 ◇◆◆◇


「アイナママ、ただいま~」

「あら、クリス?」

「なぁに? アイナママ」

「髪が、乱れているわ」

「え、ほんと?」


 ぼくが手ぐしで髪をととのえようとすると、


「あっ」

「じっとしてて? ママがやってあげる」

「うんっ」


 アイナママの手が、やさしくぼくの髪をなでてくれる。

 それだけでぼくは、ココロがぽかぽかしてうっとりしちゃう。


「はい、可愛くなったわ」

「むう、かわいいって言わないでよぉ」

「はいはい、【かわいい英雄】さん、うふふ」

「それ、ホントなのかなぁ」

「どうかしら? でも」

「でも?」

「ママはクリスにぴったりな【二つ名】だと思うわ」

「えー」


 いくらなんでも、男のコに【かわいい】はないでしょお?

 そんなふうにぼくが【おこ】になってると、


「むぎゅ」

「うふふ、そんなかわいいクリスに、ハグのご褒美です」

「うれしすぎるぅ」

「さっきのふたりのハグと、どっちがうれしい?」

「もちろんアイナママ」

「うふふ、よろしい」


 もしかして、しっと? してくれたのかなぁ?

 そんなアイナママのハグに、ぼくのココロが癒やされるのでした。

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