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ママとビキニと、かわいい英雄  作者: 身から出た鯖
第1章 アイナママは、もと【聖女】
30/92

030 ぼくの村に、お祭りがやってくる♪

「ママぁ ヒイラギの枝、もらってきたわ~」

「あら、ご苦労さま。じゃあ、これで飾ってちょうだい」

「はーい。クリス、一緒にやるわよー」

「うんっ」


 【収穫祭】が近づいてきて、その準備で村はにぎわってる。

 お祭りといっても、日本のそれとはずいぶんちがうけどね。


(でも、おいしいものがいっぱい食べられるのは同じだよねぇ)


 この世界の収穫祭は【秋の終わり】を意味していて、そして農家のおうちの仕事納めでもある。

 これからやってくる冬にそなえ、


(そしてこの年の豊作を、神さまに感謝するんだよね~)


 その年に畑でとれた作物と、山でとれた獣を神さまに奉納して、


『今年も豊作でした、ありがとう。また来年もよろしくね?』


 って感じでお願いするんだ~

 そしてその中心にいるのは、もちろん村の神官のアイナママ。


「あ、広場のかがり火のやぐら、もう組み終わってたわよ?」

「ホント? 今年はどんなのだった?」

「んー、去年のよりはちっちゃいかしら?」


 収穫祭のときには、村の広場にはきな【かがり火】が焚かれるんだ。

 木やワラでやぐらを組んで、そこに火をつけて一晩じゅう燃やすんだけど?

 今年に25歳と42歳になった男の人が作る決まりだから、毎年大きさやデザインがちがうんだよね~


「お清めの火なんだから、もっとハデなのにすればいいのに~」

「あんまり大きくしても、あぶないよぉ」


 それというのも、その日は【秋の終わり】と【冬の始まり】の境目だから。

 普段は閉じている【冥界への扉】が開くとされていて、そこからご先祖さまのたましいが、おうちに帰ってくると言われてるんだ。


(だからおもてなし しないとね~)


 ぼくがお料理してるアイナママの後ろ姿をみていると、それに気づいたレイナちゃんが聞いてきた。


「それよりクリスぅ 今年のママのケーキ、どんなのだって?」

「うんっ 干したイチジクとブドウ、それから木イチゴとクルミだって」

「やたっ! イチジクだいすき♪」


 そのおもてなしのために、それぞれのおうちでケーキを焼くんだ。

 あ、ケーキといっても? クリームを塗ってないパウンドケーキみたいな感じ?

 この日だけはフンパツして、タマゴとハチミツをたっぷり。

 そして中には、ドライフルーツやナッツがいっぱい入ってる。

 それをご先祖様に捧げるんだけど~


「えへへ、ぼくも楽しみ~ アイナママのがいちばんだけど、どこのおうちのもおいしいからね」

「んふふっ そーね、おナカをへらしておかなきゃ」


 その日は村の子供と若い人がつれだって、ご近所のおうちをまわるんだ。

 そして【ご先祖さまの代役】として、それぞれのおうちからケーキをわけてもらう。


(だからぼくたちは、このお祭りがずっと楽しみなんだ~)


 けど? 【冥界への扉】が開くということは、もしかしたら【悪霊】も来ちゃうかも?

 と、いうわけで、お祭りの夜になると村の人たちは、おうちのドアの横に魔除けをかざるんだ。


「ん、できた。どーよ? クリス」

「おぉぉ、カッコイイ!」

「んふふっ でしょー ま、ちょっとサカナくさいけどね」


 それは赤い実の付いたヒイラギの枝を、輪になるように編んで、さらに焼いた小魚の頭を飾ったものなんだ。

 なんだかクリスマスのリースみたい! おサカナの頭付きだけど?


「あ、でもこのにおいで悪霊を近づけないんでしょう?」

「そーそー、ってゆーか悪霊って、サカナがキライみたいなのよね~」

「それに、ヒイラギのトゲトゲが悪霊の目を刺すんだよね? けど、ご先祖さまは刺されないのかなぁ?」

「んー、自分のおうちだから、ヘーキなんじゃない?」

「なるほどー」


 そしてその日はおうちのすべての火を消して、広場で焚かれた大きなかがり火のところに集まるんだ。

 そこではお祭りのために用意した、お酒やごちそうがいっぱいあって、


「それに、お肉も楽しみだよね~」

「そうね 今年はブタさんを3頭買うって、村長さんがいってたわ!」

「おー」


 この村ではブタさんを何頭か買って、お肉にする。

 それも神さまにいったん奉納するけど、


(その後はぼくたちが食べちゃうけどね~ 太陽神さま、豊穣神さま、ごちそうさまでーす)


 そして最後に、かがり火の火を分けてもらって、それぞれのおうちに持って帰る。

 それは【清浄な火】で、悪霊や魔物を防ぐといわれてるんだ。


(なんというか、日本の【お盆】と【節分】を足したみたいだよね~ こういうのって、やっぱりどこも似ちゃうモノなのかなぁ)


「そういえば、青年団の狩り、けっこうエモノが多いみたい」

「ホント? ぼくも行きたかったなぁ」

「クリス、狩りなんてしたコトないじゃない」

「んー」


 そしてこのお祭りのときは、青年団の年少組の人たちも、狩りをがんばるんだ。

 獲物を単独でしとめることで、ちゃんと一人前あつかいされるから。

 ちなみにぼくは、この身長と体格のせいで、村の青年団の人たちから『まだ早い』って、参加できなかったんだよねぇ

 ()せぬぅ。


(ホントは獣どころか、魔物も討伐してるんだけどなぁ)


 だけど、魔物を狩ってるのはアイナママの判断でナイショにしてる。

 やっぱり、村の人たちに心配をかけたくないから、ね。


(けど、魔物はぼくがほとんど狩り尽くしたし? オオカミの群れとかも討伐しといたから、狩りがしやすいのかも)


 そんなことを話していたら、


 ドンドンドンっ


 慌ただしくおうちのドアが叩かれて、村の人が駆け込んできた。


「た、大変です聖女さまっ 村に凶暴な獣が入り込んで──」


 ◇◆◆◇


「ブギッ フゴゴッ!」


 その入り込んできた獣は、イノシシだった。

 しかもかなり大型で、ケガをしているのか、とっても怒ってるっぽい。

 そして村の広場にいすわって、じっとあたりを警戒してるみたい。


「けが人をこちらに集めてください! それから獣は刺激しないように! 遠くから囲むだけにしてくださいっ」


 アイナママが村の人たちに指示を飛ばす。

 なによりケガをした人の治癒を優先するみたい。


「クリスぅ なんであんなおっきなイノシシが」

「たぶん、山でしとめきれなくて、怒って追いかけてきたんだ」

「そ、そんなぁ」


 大イノシシはさっきまで大暴れしていたみたいで、けが人がいっぱい出てる。

 幸い、亡くなった人はいないみたいだけど、大けがした人はたくさんいる。


(アイナママの神聖魔法でなおる、よね? ぜったい)


 そしてまわりを見れば、村の男の人たちが遠巻きに大イノシシを囲んでる。

 いちおう、村の門の方はあけてあるみたいだけど、そっちへ逃げてく気配はない。


(みんなの武器は……猟師さんの弓に、クワとかの農具かぁ)


 いざというときのために、村には剣や槍もあるけど? それを使いこなす人は、ほぼいない。

 そう、ぼくを除いて。

 だからぼくは──


「アイナママ、ぼくがやるよ」

「クリスっ でも」

「だいじょうぶ、ちょっと大きいだけで、魔物よりは怖くないよ」

「で、ですが」

「いまこの村で、剣のスキルが一番高いのはぼくなんだ。だからぼくがやる」

「クリス……わかりました。でも、くれぐれも気をつけて」

「はい、アイナママ!」


 そんなアイナママの応援をもらって、ぼくは物陰に隠れた。

 そして、魔法を発動させる。


「【異空収納(インベントリ)】」


 そして左手の魔法陣から取り出した、細身の剣。

 最近はその扱いにもすっかりなれて、手にもなじんできた。


「ちょ、クリス! まさかっ」

「だいじょうぶ。レイナちゃん、ぼくを信じて?」

「クリスぅ」


 瞳を見つめてそういうと、レイナちゃんは頷いてくれた。


「ぜ、ぜったいにケガなんてしないでねっ わたし、応援してるからっ」

「うん、ありがとうレイナちゃん」


 ぼくは、ゆっくりと大イノシシに向かって歩いてゆく。

 それを見て、村の人たちがざわめき始めるのがわかった。

 けど、アイナママが黙って見てるのに気づくと、それも収まってゆく。

 もちろん大イノシシもそれに気づいて、こっちに身体を向けた。


(大きい、3メートル以上あるんじゃないのかな? 高さだけでも、オトナの人くらいあるみたいだし)


 もしかしたら、魔物化してるのかもしれない。

 討伐したら魔石にかわるから、すぐわかるけど。


(とりあえず、それは倒してみないと、ね)


 これでも魔王とも戦った事のある、元勇者だ。

 その巨体に緊張はあるけど、恐怖はない。

 そしてぼくは大イノシシをにらみながら、小声で魔法をとなえる。


「【ソニックブレード】!」


 キュ──ン


(よし! こっちに向かって……)

「こいっ!」


 ぼくは建物を背にして、大イノシシを挑発する。

 その態度に大イノシシは怒ったのか、ぼくに向かって突進してきた!


 ドドッ ドドドッ!


(まだまだ……いまっ!)


 【体術】のスキルが反応し、身体が勝手に動き出す。

 ぼくはイノシシに背を向けて駆け出し、【跳躍】のスキルで地面を蹴って──建物の壁に着地。


「やっ!」


 その壁を三角跳びで蹴れば、迫りくるイノシシめがけ──ぼくの身体が射出された!


「たぁぁぁっ!」


 突進してくるイノシシの脳天に、体重の乗ったブレードを叩きこむ!


「ブギィィィっ!!」


 その刃は、強固な頭蓋を難なく貫通。

 ぼくは剣から手を放し、その勢いのままイノシシの後ろに飛んで──着地した。


-------------------------------------

【ソニックブレード】

 種別:精霊魔法

 状況:常時

 対象:術者、対象者

 効果:精霊に命じ、術者の持つ剣の刀身に風をまとわせる魔法。

    そしてその風は微細に振動し、その振動数は1秒間に4万回を超える。

    刃身表面の振動により対象の接触部に生じる摩擦を低減させ、

    容易な切断が可能となる。


-------------------------------------


(ぼくの欠点は【筋力】と【攻撃力】がないこと)


 だからそこを、魔法で工夫する。


(筋力がないなら、筋力がなくても斬れる武器があればいいんだ)


 無手のまま振り返り、油断なくにらみつける。

 そして大イノシシはゆっくりと倒れ──地響きをたてた。


「よし!」


 そうして思いついたのが、この【ソニックブレード】。

 現代日本にも超音波を利用した工具は実用化されていて、とても弱い力で対象物を切断できるのが特徴なんだ。


(【風精霊魔法】のスキルがあってよかったぁ)


 なので見た目にはなにも変わらないけど?

 その刃は触れるだけでサックリと切断できるという、すさまじい切れ味になってるんだ。


「やったぁ!」


 思わずガッツポーズをとるぼく

 そして、それを見た村の人たちは──


「うおぉぉぉっ すげぇぇぇっ!」

「ま、マジでやっちまったぁぁぁっ!」

「クリスくんっ すごぉぉぉい!」


 その結果を見とどけて、大喜びしてくれた。

 そして──


 どかっ!!


「ふごっっ?」

「クリスぅぅぅっ!」

「れ、レイナちゃんっ?」


 レイナちゃんの激しいタックルのあと、そのままハグされるぼく。


「よ、よかったぁぁぁ クリスがぶじでぇぇ! それにっ すっごくカッコよかったぁぁ!」

「レイナちゃん」


 そんなふうにぼくに抱きついたまま、喜んでくれるレイナちゃん。

 みんなで大喜びしてくれる村の人たち。

 そしてそんなぼくを、誇らしげな笑みで見つめてくれるアイナママ。


(やっぱり、みんなの喜ぶお顔が、いちばん嬉しいや)


 そのぼくに向けられるみんなの笑顔は、

 勇者だった時のそれよりも、もっと嬉しかったんだ。

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