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ママとビキニと、かわいい英雄  作者: 身から出た鯖
第1章 アイナママは、もと【聖女】
24/92

024 ぼく、チョロくないもん

「ダメです」

「そんなぁ」


 お昼ごはんのあと、ぼくはアイナママに頼み事をしたんだ。

 けれど、答えは今のとおり。

 しかもぜんぜん悩まずに答えられちゃった。


「で、でもぉ」

「でも、ではありません。いくら【一人前】といわれる歳になったからといって、クリス? あなたはまだまだ【大人】というには、ほど遠いのですよ?」

「うぅ」

「あなたが【冒険者になりたい】そう考えるなら、それはいずれ叶えても構いません」

「え? なら──」

「クリス? わたしは【いずれ】といいましたよ?」

「ひゃいっ」

「ゆえに、それは【いま】ではありません!」

「えぇぇ」

「ですから。せめてわたしよりも背が高くなるまでは、冒険者になることは許しません!」

「あうあうあう」


 うぅっ アイナママが、こういうていねいなお話しのしかたの時は、ぜったいに許してくれないんだ。

 でもっ


「ち、ちがうんだよ! アイナママぁ」

「なにが違うのですか?」

「ぼくだって、いますぐ冒険者になって、おうちを出て行きたいっていってるわけじゃないんだ」

「ですが」

「この前の奉仕依頼のときみたいに、いろんな人のやくに立ちたいんだ」

「……それは、どのような?」


 やった!

 アイナママがすこしは、お話しを聞いてくれる気になったみたい。

 ぼくは一緒うけんめい言葉を選んで、なんとかアイナママを説得しようとがんばった!


「まずね? ぼくがこの前受けたのって、【塩漬け依頼】だったでしょ?」

「ええ、そうでしたね」

「塩漬けになっちゃった理由って、めんどくさいわりにおちんぎんが少ないから、だよね?」

「ええ、そうですね。しかし──」

「うんうん! ぼくもアマーリエさんにいわれたんだけど? そりゃあ冒険者の人たちは、生活がかかってるんだもん。おしごとを【選んじゃう】のは、しょうがないよね?」

「そう、ですね?」

「でもね? ぼくは、冒険者になりたいわけじゃないんだ」

「え? ですがさっき──」


 あ、やっぱりアイナママ、カン違いしてたみたい。


「うん、ぼくがアイナママにいったのはね? 【これからもギルドで、依頼を受けていきたい】だったでしょ?」

「あら? そう、でしたね。ならなぜ、冒険者になりたくないのですか?」

「うん、じつはぼく、なりたいおしごとが、まだ決まらないんだ」

「そうなんですか?」

「あ、でもやりたいおしごとは決まってるんだ~」

「ええと、どういう事でしょう?」

「あのね? ぼくがなりたいのはね? アイナママたちを、たすけてあげられるおしごとなんだ」

「えっ?」

「あ、たすけてっていうより、おてつだいかな? だから、ちゃんとした【職業】になるかどうかは、よくわからないけど」

「………………」

「ぼくの望みはアイナママたちとずっと一緒に、みんなでたすけあって暮らしてくことなんだ」

「クリス、あなたは」

「だからね? ヘンないいかただけど……ギルドの依頼を受けるのは、ぼくのシュミ?」

「趣味、ですか?」

「うんっ だって、それで食べていきたい! ってわけじゃないからね」

「それよりも、こまった人を助けてあげなさい。その行いは、いつかあなたにかけがえのない経験として糧となるでしょう」

「それは……」

「うん、アイナママが教えてくれたことば」


 アイナママは聖女と呼ばれるだけあって、その慈愛に満ちた行いで、たくさんの人を助けてあげてるんだ。


「それでね? ぼく、【剣術:LV06】と【盾術:LV08】のスキルが付いてたでしょ?」

「え、ええ」

「それをね? この前、ユカイさんにみてもらったの。そしたらね? ぼくの剣はすごく【剣筋】がきれいなんだって」

「それは、そうなのでしょうね」

「うん、ユカイさんたちもね? ぼくに足りないのは経験と、それを使いこなす応用力だ~って、いってたの」


 そりゃぁ、勇者のスキルをぜんぶ使えば、たいていのことはできちゃうだろうけど?

 でも、せっかくまた持てた勇者のチカラ。


(このチカラをぼくは、アイナママたち家族と、それを必要としている困ってる人たちに使いたい!)


「だからぼくがしたいのは、魔物を討伐するコトじゃなくて? 魔物を討伐した【後】にある、だれかのよろこぶお顔を見ることなんだ」

「クリス……」

「あっ もちろん今までどおり、アイナママのおてつだいもするし! お勉強や剣の練習だって、今までどおりやるから!」

「………………」

「だから、依頼のお仕事は、ときどき? そのぉ 7日にいっぺんとか、10日にいっぺんとかじゃ、ダメ?」


 はふぅ。

 とりあえずぼくのいいたいことは、何とかいえた?

 あとはアイナママが、わかってくれるかどうかだけど。


「クリス? ひとつ聞きたい事があります」

「は、はひっ」

「これからしばらく後、レイナも一人前の歳になりますね?」

「うん、なるね」

「そしてギルドに行き、レイナもスキルを調べてもらうでしょう」

「うんうん」

「そしてクリス、あの子もあなたと一緒に剣の練習をしていますね?」

「うん、してるね」

「その甲斐あって、あの子にも剣術のスキルが付いていたとします」

「ありえるかも」

「そしてあの子が、こういい出します」


『わたし、冒険者になってみたいの!』


「だだっ ダメだよ! そんなの危ないよっ! ──あっ」

「クリスもそう思うのですね?」

「………………(ふいっ)」

「目を逸らしてもダメです」

「うぅ 危ないと思いますぅ」


 しまったぁぁぁっ!

 うぅ、やっぱりアイナママには勝てなかったよ……


「ええ、そしてクリス? あなたの説得の甲斐あって、あの子が『冒険に出るのは時々にするし、危ない依頼はなるべく避ける』といい出します」

「ふむふむ?」

「それならクリス、あなたはどうしますか?」

「それでも心配だよぉ できることならぼくが一緒に行きたいけど? どうせならレニーさんたちみたいな、レベルの高い人たちと行くべきだよ」

「ええ、わたしもそう思います」

「ですよねー」

「ですから……クリス?」

「はひっ」

「あなたが依頼を受けるそのときは、ママも一緒に行きます」

「はい、え?」

「ママも、一緒に、行きます」

「あ、アイナママが、ですか?」

「ええ、その通りです。幸いママは、あなたのいう【高レベル】の冒険者です」

「ですね?」

「しかもレニーさんよりも上の、レベル56。不服ですか?」

「とんでもありません!」


 っていうか、勇者が死んじゃった今? この大陸にアイナママよりも高レベルの人なんて、いないよぉ!


「では問題ありませんね?」

「え、ええと~」

「クリス? ひょっとして」

「え?」

「ママと一緒に依頼を受けるのが、そんなにイヤなの?(うるっ)」

「そんなわけありませんっ」

「うふふっ では、そういうことで」

「ないてないしっ?」

「うふふ クリスはちょろいですね」


 ちょっ、チョロくないもんっ ぼくぅ


「じゃあ、依頼をうけるのは、してもいいの?」

「ええ、ただし」

「はひっ」

「あなたのいう通り、ふだんのお手伝いに勉強に、剣の練習。それを今までの様に、しっかり続けられれば、ですよ?」

「あ、ありがとうっ アイナママぁ」


 ぼくはそういうと、アイナママに抱きついちゃった。

 アイナママも、そんなぼくを抱きしめかえしてくれる。


「もう、あいかわらず甘えんぼうのくせに。いつの間にかそんなことを考える様になっていたんですね」

「えへへ だってぼく、アイナママの子供だもん」

「ええ、ママの自慢の息子ですよ、クリスは。ちゅっ」

「やぁん♪」


 ぼくのおくちに近いほっぺに、アイナママがキスをしてくれる。

 それがくすぐったくて、嬉しくて。

 ぼくはそんなアイナママの子供になれて、ほんとうに良かった。


 ◇◆◆◇


「えぇぇぇっ またクリスとママだけなのぉ?」

「あ、うん。ごめんね? レイナちゃん」

「もーっ するいずるーいっ」

「レイナ、クリスはお仕事で行くのよ?」

「むぅっ わかってるもんっ」

(あーコレ、なんだかすっごく見たコトある気がするー)


 レイナちゃんが、またおるすばんと聞いて、ゴネてるみたい。

 そもそも? まだ村から出ちゃいけない決まりがあるのに~


「レイナ? いい加減に聞き分けのないことを……」

「はぁい、わかったわよぉ」

「あら?」

「その日はママもいないんでしょ? なら、おうちと神殿のおしごとは、わたしがやるしかないじゃない」

「ええ……でも、いいの?」

「よくはないけど~ それくらいわかってるもん」

「レイナちゃん、すごいや」

「そ、そぉ? ふふん まーね!」

「ええ、偉いわ レイナ」

「そのかわりっ わたしが一人前になったら、クリスとい~っぱいっ 街にいかせてよね?」

「ええ いいでしょう」

「ホント? やったぁ♪ えへへ~ クリスぅ 今の、聞いてたわよね?」

「うんっ もちろんだよ」

「うふふっ だったらクリスも、もっとほめなさいよぉ」

「うんっ ぼくもがんばってるつもりだったけど、レイナちゃんは、もっとすごいや」

「はうっ くく、クリスぅ おおっ お顔がちかい──」

「レイナちゃんっ これからもアイナママをおてつだいしようねっ ぼくとレイナちゃんと、ずっと一緒に」

「は、はひぃ わ、わたしぃぃ ずっとクリスと、一緒に、いましゅぅ」

「うんっ 約束だよぉ」


 そんなふうに手をとりあって、やくそくするぼくたちを、アイナママは困ったような~ うれしいような~

 そんなお顔をして、ため息をつくのでした。

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