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アレックス視点ですが、視点なだけです。すみません。

何がしたいか...。学園祭的なものです。

暖かい目で読んで下さると嬉しいです。よろしくお願いします。

 今の気分を聞かれたら良いと言える。

 横の席に、勿論椅子の間隔は近くにしてだが、クルシェが座ってる。愛しい者を持つ者達に聞きたい。こういう時は、隣り合うのと対面と、どちらがより良いのかと。

 今は、手を繋いで席に座ったから隣り同士だが、正面から口の動きを見るのも捨て難い。何気無い事で目が合うのもよろしい。今は、細い手が動くのと横顔の頬と口元、何にでも目がいってしまう。

 何を見ていて、何を考えているのか...。そう思わなくも無いが、そんな余裕が今はある。保護者の目が無く、邪魔者の心配は無しだからな。

 小さく切り分けられたタルトが、ほんのりと赤い唇の中に消えていく。


「アレックス殿下は人に面倒事を押し付けて、随分楽しそうですね」


 そんな言葉で顔を上げれば、評議会のマーカスとメリル嬢が、少し恨めしそうな目で俺を見ている。


「思ったより早かったな」


 俺は食べ終わっているのは当たり前だが、食べ進むのが遅いクルシェも、デザートのタルト半分を残すところだ。それでも、この程度の時間で戻って来たのは上出来だ。話しが上手く進める事が出来ていたならばだが。


「首尾は?」

「ほぼほぼ、とでも」

「まだ終わりじゃないぞ?」


 メリル嬢は困った顔を、マーカスはため息を。

 目の前に座っていたイヴァンとレインが、立ち上がって二人に席を譲った。

 クルシェは、小さく頭を下げただけだが、メリル嬢と目が合うと目元を柔らかくしていた。


「あと一仕事だな」


 立ち上がった二人は涼しい顔だが、座った二人は苦笑い。

 俺だって、面倒事は勘弁して貰いたいが、ほっといて、もっと面倒臭い事になるのは嫌だろ? 分かっているから苦笑いしか浮かべられない二人に俺は笑みを向けた。

 是が非でも、この後も頑張って貰わないと。







 午後の講義が無くなった。無くなったからといって、個人で御自由にとはいかない。動き出した現状をまず聞いて、納得をしてもらわないと短い期間で物事が収まらない。

 中・高等科のほぼ全員に集まってもらった。その皆を前にマーカスが口を開いた。


「学園の話しを、王太子殿下がお知りになった」


 ザワりとするのは仕方ない事だろう。


「モードン伯爵令嬢主催でダンス会の知らせがあったが、それを、王太子殿下が開いて下さる事になった。それに合わせて、何か出来ないかという事を話し合いたいのだが、王太子妃様は孤児院や救護院などの慈善活動に取り組んでいられる。それに沿って我々が出来る事を考えて貰えないだろうか? 準備期間は今日を含めて五日。六日目に、あちらはダンス会をお茶会に変えて行うようだ。七日目がダンス会になる」

「会長? そもそも、何でそんな話しになったんだよ」


 挙手した者から質問が出る。

 だよな。そこから知りたいよな?

 俺が親父殿に持ち込んだだけじゃなかったんだよ。学園内なら、本当は中止って見送るだけで済んだのに、あろう事か学園外の子息子女に向けて招待状を送ってた。個人ならまだしも、学園としてじゃ、何でもかんでも思いつきでやる事は出来ない。穏便に収めようと、王太子の兄上が考えた苦肉の案だ。それをこうしろとは言えない。あくまでも学生が自発的に動いて納めたいという国の事情。そこへ誘導するのが、マーカスの仕事だ。

 マーカスが上を、何も無い空を見る。物凄く適切な言葉を探してるんだろうな。状況を知りたい者は、チラチラと俺の事も見る。


「あ"ーぁんと、第一の理由は尻拭いだ!」


 どんな風に切り出すのかと思っていたら、マーカスが壊れた...。髪に両手を突っ込んでガシガシっとした後、顔を上げた時その目は危ない目だった。...こう、焦点が合ってないよう、な? そしてぶっちゃけ過ぎと言える程に、モードン伯爵令嬢とクラート副学園長の顛末を話す。と、同時に、学園から出された招待状を取り消すのは難しいと訴えた。学園外との交流は、はいどうぞと簡単にいかない。エドガーやらかしのダンス会の時護衛騎士がいたが、各所に警備の騎士もいた。専門課程の研究資料室の前とかに。機密では無いけど、そこそこ重要なものはあるのだ。モードン伯爵令嬢の考える「王子に護衛がつくからいいじゃない」にはならない。段取り予算だけじゃ無い。そういう事をしようと思ったら、最初から国に計画書を提出する事からしなくてはならなかった。王太子が主催となれば、場所が何処でも騎士を配しやすくなる。即ち、王太子からの救いの手。クラート副学園長は分かって無かったみたいだが、そのままダンス会を開いて、何か事件が起きようものなら、学園のその後の評判は崖っぷち。色々な体裁を整えようと思ったら、何もしないでは...。

 それからマーカスは、言っても分からない者への愚痴へと突入した。

 悪かったマーカス。

 ポロポロとマーカスの口から出る言葉は、王太子殿下の名前の重要性をちっとも理解しない者に、納得がいく様に説明をしなければならなかった苦悩が滲み出ていた。

 何時までも続きそうなそれを、マーカスの袖を引きメリル嬢が止めた。


「会長の言葉で、分かって貰えたのかは分かりませんが...。今の私達には、やるという選択肢しかございませんの。王太子殿下と学園の名誉の二つが掛かっているのですわ。先ず皆様が協力をするかしないかです。こんな言い方はしたくないのですが、協力は出来ないと思われる方は、部屋を出て頂けますか? 愚痴と説明に割く時間は有りませんの」


 ザワりとはしたが、立ち上がる者は居なかった。

 それを見て、硬い表情だったメリル嬢は「良かった」と呟いた。表情が緩み微笑んだのを見た者の何人かは、見惚れた事だろう。何故そう思うかは、隣りのマーカスを見れば分かる。


「ありがとうございます」


 そう言って礼をしたメリル嬢。改めて顔を上げたら元の表情だった。


「王太子殿下の名前でダンス会を行う以上、私達のする事は、王太子妃様の願いに沿ってというのがよろしいかと。慈善活動と言っても、どの程度までと考えると個人の力では難しいのです。単純に寄付というのは、学生として如何なものかと思えますし、炊き出しなどもありますが、どういう主旨かというのもありますでしょう? ですから、ご一緒に考えて下さるのは心強いですわ。兎に角、日にちはございません。よろしくお願いします」

「何をしても、資金は王太子殿下から出る。だが...」


 落ち着きを取り戻したマーカスが声を上げた。だが、言葉を濁す。


「これから、国に仕えようとしてる者が、無尽蔵無計画を許してはいけないと言う事ですね」


 意を汲んだ発言。それを聞いた時俺は「よしっ!」と心で拳を握った。

 俺は、隣のクルシェを見た。意を汲んだクルシェが挙手をする。

 立ち上がり、手にした籠を端の席に座った者にクルシェが渡して行く。籠の中は、木の実のビスコッティと、元の木の実。さすがに二百五十名を超える人数分は無いので、一口大に砕いてあるが、手に取った者から口にしてもらった。


「先日。エドガーが、第二騎士団官舎で集めて来た。今のところあちらは貴族に向けてだが、我々は、民に向けてでもいいと思っている。これだけの人数がいるのだから、それなりの事以上が出来ると思っている」


 ゴリッ、ボリッと音がする中。俺の言葉の後に、感想や意見が上がる。

 豊穣祭の様にが、割合多い意見だった。領地で収穫を祝う祭り。規模は大小あれど、領主から食べ物が無償で配られたりするという。でもそれは先ず自分達が収穫をして、冬を越す蓄えが出来た事を喜ぶ祭りなんだとか。

 木の実も、自分達が拾い集めれば金は掛からないだろう。だが、それではお粗末過ぎる事に、誰もが気付いているので具体的にならない。


「あの...考え方としては、お針の会とか編み物の会みたいでいいのでしょうか?」


 立ち上がってそう言った女生徒は《紳士淑女の嗜み》という、学園から配られた読本を手にしていた。

 《紳士淑女の嗜み》とは、生徒の誰もが手にするが、前二三ページを見たら、何時の間にか、埋もれてしまう読本だ。読んでいる者が居たのにはびっくりだ。

 一斉に集まった視線に戸惑うも、彼女は説明を懸命にしてくれる。

 お針の会とか編み物の会と聞けば、ご婦人方のサロンの催しが思い浮かぶ。単に寄付を募る集まりと言える。それだけを聞けば、それじゃ無いと言えるが、読本に書かれているのは、それこそ一昔前の話し。会自体はお金を集める事だが、その資金を使ってなされたのは品物の買い取りだった。戦時の兵站物資。兵士の身に付ける下着とか靴下を買取る事で、働き手のいなくなった家に手間賃を支払う。苦労四方山話のそれを読み解けば、目からウロコに話しが進む。要は、拾う労働力に対してお金を払う。それを元に孤児院のバザーみたいな催しをする。

 方針が決まれば、意見はポンポンと出るものだ。

 木の実を拾ってから剥くまでを孤児院や初等科前の地区の子供に頼む。武官文官の生徒を、子供の人数把握の為に付ける事を決めた。公園や街路樹の有無で場所を把握して、王都内それぞれの騎士団詰所に協力を願い出る。調理は薬草学の生徒が中心でと、話し合うグループが出来ていた。

 出来る事は、今日の内に決める。考えても意見の出ない者。その気やる気関係無くこの場に居る者もいたが、「実績として見て貰えるかも」と誰かの言葉で雰囲気が変わった。率先して意見を出し話し合う様子は、熱を生み出すものだと感じた。

 掲げる目標は『収支ゼロ』。

 真面目にそんな目標でいいのか? 大掛かりにしたくても、お金をかけすぎるのは財政を圧迫する。成程、領地経営を知る者の言葉は重いな。プラスで終えれば御の字。だが、初めての試みと準備期間の短さから、それが妥当だとなったようだ。

 一つ二つと何かが決まる度に、ハイデン副学園長へ報告をしに行き承諾を貰う。

 現段階で決まったのは食材の調達と還元。お菓子などの販売。それだけでは寂しいので、初等科女子生徒にはハンカチへの刺繍。男子生徒には、学園敷地内の木の実の収穫と下準備を頼む事に。勿論、孤児院で作った物も、場所を作って販売の協力を頼む事。決まった事からお願いをしに行く者を送り出したりした。忙しないが、時間は有限だからな。




 俺? 俺は俺で考えてるぞ。イベントを二人で楽しむ方法を。

今回は企画。この後は準備と実行になるかと...。

今話もお読み頂きありがとうございました。

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