表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/84

第二王子アレックス殿下 試される

ちょっと試合を...。

すみません。あまり詳しくないので迫力の欠片もありません。

アレックス殿下ですので、このくらいと考慮して頂けると嬉しいです。

 クルシェは、アーデンテス伯爵夫人の言い付けで、使者を迎える日と週末以外は学園に。俺は自爆で別邸だ。身から出た錆だが、このままの俺は生活力の無い若造。臣籍降下で王子の肩書きが無くなれば、公爵家に婿入りするただの若造。親父殿からは卒業後の話しは無いから、勝手にしていいのか? 領地経営は出来れば一緒にと思うが、考えてみると俺の自由になる資産というものが無い。王族として贈与されているものは返すつもりだから、ハロルドの元で学ぶのは、悪い事じゃ無い。

 早い話し、開き直った。

 昼間は学園だか、空き時間はクルシェに張り付くと決めた。卒業までの三ヶ月と少し...振り返る思い出は多い方がいい。

 ならば、今の学園をどう快適に過ごすか。

 学園に戻る馬車の中。並ぶクルシェとレミーネの二人を見ながら考える。邪魔なのは、あの一団。精々...皆に働いて貰おう。

 目が合えば頬を染めるクルシェが可愛い。




 昼前は騎士学で、国史の座学から始まり鍛錬に終わる。昼前の一時間は、クルシェの空き時間と聞いたので見に来てと言った。かっこいいところを見せたいのでは無く、一緒に昼食を取りたいから。

 鍛錬場には、まだクルシェの姿は無い。当たり前だな、クルシェの空き時間には少し早い。

 準備運動を兼ね、模擬剣を持ったまま肩を回す。


「殿下? とある話しを耳にしたのですが」


 熱い胸板と太い腕。いかにも鍛えてますといった体の男。べイギー伯爵家の嫡子、ウイル・べイギーが立っている。

 何だと顔を向ければ、貼り付けた様な笑顔だ。どの話しかと、先を待つ。


「華を手になされたと聞きました。真偽の程は如何でしょうか?」

「...そうだな、とても綺麗な華を手にする事が出来た」


 手にした華。とても愛しいクルシェ。


「それがどうかしたか?」


 俺を見る目が不平を物語る。先を促せば、鼻で笑われた。


「その華を手にするのに相応しいかと、騒ぐ者達がおります。高嶺の華と、皆が眺めるに留めていましたから」

「ウイルは?」

「私は微笑ましいかと。ですが、騎士団に出入りする者の中には...」

「王子ってだけの俺がと言う者も居る?」

「そうですね」

「ルキスは、興味無さそうだった」


 彼の弟。ルキス・べイギーは、ダンス会の時にエドガーと共にクルシェの名を呼んだ男だ。


「そうですね。騎士団への出入りが有る無しでは、受ける印象が違うかと。少し...腕を上げたと聞きました。我々と手合わせ願えますか?」


 成程。話しはそこにくるのか。

 俺は二つ返事で受けた。腕を上げた覚えは無いけどな。

 ウイルが手を上げたら、三人が近寄ってきた。お前が相手じゃ無いのかと見れば、「勝ち抜いて下さい」ときた。まぁ、お前の腕が学園一だからな。真打は最後。俺の腕じゃ敵う訳が無い。


「本当に楽しみですよ。有事の際には、命を預けるのですから。殿下には、是非とも健闘して頂きたい」


 言葉通りだ。平和ボケしていた。今なら王太子が総大将だが、その下は俺。王太子が王になれば、俺が総大将。色んな意味でも、上に立つ俺は頼りない。勝ち負けも無くウイルから発破をかけられてるって事だ。


「胸を借りるよ」


 並ぶ三人に声を掛ければ余裕の顔だった。

 勿体ぶる訳では無いが体をほぐす。俺は貧弱王子だからな。ウイルまで行き着けなくても、三人目まではと思う。

 一人目と向かい合う。


「殿下」


 俺に聞こえるくらいの声で、呼び掛けられた。


「我々には愛でる華ですが、手折る機会を狙っていた者もいます。その手を払う為にも本気でお願いしますよ」


 言われた言葉を噛み締めながら、俺は頷く。

 ウイルの「初めっ!」の声で、俺は踏み込むのでは無く、一歩を引いた。

 間合いをずらす。振り下ろされた剣先が上から下へ流れていく。と、横薙ぎに翻るそれを受け流した。受け流しても重い。斜めに剣を走らせれば、弾かれた。やはり、俺の剣は軽い。筋肉の差がありありと...。躱しながら上段に数度打ち込む。長く時間をかけるつもりなのか、単調な俺の打ち込みを受け流される。ならばと振り下ろした勢いのままに懐へと入り、柄頭を喉元へと突き付けた。


「それまで!」


 ウイルの声で息を整える。随分と俺に甘い判定だが不満は言わない。


「手を出そうと考えるのは?」


 誰だを飲み込む。


「騎士団に出入りの無い者達ですよ。守護者揃いを知らない者」


 思わせ振りだが、言いたい事は分かった。クルシェを、後ろ盾の弱い令嬢だと思っている奴等だ。険しくなるのをウイルの声が引き戻す。


「型以外への移行を覚えましたね」

「移動の間に、相手をしてもらってたからな。俺に甘い判定だがいいのか?」

「怠惰でないと分かっただけ、評価に値するかと」


 そうだな。やる気が無いと思われてても仕方無い王子だからな。


「次、行きますか」


 深呼吸して頷く。

 二人目は早い。受けるより避ける。

 すり抜けるようにすれ違う。俺の息だけが荒い。休ませる気が無いだろうと、ハッキリ分かる。何でって、余裕で笑ってるぞ。三人目までは行きたい。

 剣を横に薙ぎながら足払い。に、見せ掛けた踏み込みで肘をを腹に入れた。浅くてダメージは望めない。そのまま柄頭を突っ込んで、剣を受けた。腰を落としていた俺は、掌底を顎に向かって打ち込んだ。

 剣を持ち直すのに距離をと思った所で、「そこまで!」と、声が掛かる。

 掌底を予測していなかったのか、ダメージは無くとも、唖然とする顔が目の前にある。


「殿下は、体さばきを学ばれたのか?」

「剣が弱いと、馬鹿にするか?」


 コリニアス殿に会ったら、礼を言わないといけない。お情けでも、勝ちを上げられたのは彼のおかげだ。


「いいえ。二ヶ月前とは雲泥の差で、驚かされました」

「小手先だけじゃ、駄目だろ? 続ければ俺が負ける」

「そうですね。ですが、伸び代を考えたら脅威ですし、私達も、取り入れようかと思うくらいです。息が上がってますが、いけますか?」


 何の事だ? 分かってる。三人目だ。

 俺は頷く。

 軟弱王子が、完全勝利なんて出来る訳が無い。これから鍛えても、皆は、その前を行く。意気込みだけで、努力してきた者を追い越す事は出来ない。


「折角ですから、剣は置きましょう」


 そう言ってウイルが前に出た。

 え? お前は最後。四人目だろ?

 あからさまに顔に出た。


「スタミナが持たないみたいですから。体さばきも、何処までなのか知りたいのですよ。よろしくお願いします」


 別にいいけど、それ程は持たないぞ。俺の目標は三人目。誰だろうと達成だ。

 本来の三人目に剣を預け、息を整えながら向き合う。

 ウイルは、勝ち負けを見たい訳じゃ無い事は分かった。皆が見守ってきた華に相応しいかどうか。向上の欠片も無ければ、守護者達に潰される。それに向かう気があるかどうか。きっとこれからも試される。

 初めという声を聞いて、前に出た。

 避けて避けられてと言えば聞こえはいいだろう。決定的な一打をウイルが出さないだけで、俺の消耗戦。叩き込まれる事が無いように、掴まれる事が無いようにと体を躱す。

 剣帯に手が届いた。

 ここぞと掴み、後ろへ倒れた。上手くすれば投げられる...。

 勝負を賭けたが、蹴りあげた足は空を切り、ウイルはよろけただけ。俺は尻をついた。上から抑え込まれて俺の負け。

 大の字に寝転びたいのを堪え、ウイルを見上げる。


「今のは?」

「投げ技だ」

「もう一度、やって頂けますか?」


 誰をだ? お前等は無理だぞ。興味津々なウイルに、次の言葉を無くす。

 立ち上がってイヴァンを呼んだ。コリニアス殿に教わったから、投げても受け身が取れるだろ。掴みと姿勢を説明する。


「クルシェ嬢が泣きそうだぞ」


 イヴァンの言葉に、かがもうとした動きが止まる。

 浮き上がって景色が流れた。

 何の事は無い。投げられたのは俺だった。


「投げる為に呼ばれるのは、面白く無いよ殿下」


 悪かった。確かにその通り。だが、クルシェは?

 見回せば、確かに居た。唇を噛んで俺を見ていた。

 強くなくてゴメンな。


「殿下! またやりましょう」


 何だ...。終わりじゃ無いのか?


「是非とも強くなくて頂きますよ」

「程々で」


 そう言って立ち上がる。

 クルシェに向かって歩く。

 心配しないでくれ。痛くは無い。息が苦しいだけだから。言葉よりもと抱き上げた。

 息を飲むクルシェを見上げて笑いかける。何処も、何とも無いと伝われ。


「お怪我は?」

「無いよ。手加減されてたから。情けないだろ?」

「そんな事、ありません」

「強くなるよ。その前に水が欲しい」


 そのまま水場へと歩く。「自分で歩きます」を無視して進む。

 頑張った俺へのご褒美だ。

 

 


 

 





 

 

 


 




 

 




 

今話もお読み頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ