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第二王子アレックス殿下 過去と今を知る①

殿下とハロルドが動く話しになります。

クルシェの問題をここで一気に殿下に知ってもらおうと思ってます。

問題というか、因縁でしょうか?

上手く伝わる様に書けたらと思います。

よろしくお願いします。

 王宮殿の謁見の間に再び立った。

 但し、中央に立つのは、クロイスを抱えたハロルドだ。

 その横を、俺とクルシェが立つ。

 やるだろうとの予想は、俺だけじゃ無い。同行の者達の、誰もが思っていた事だろう。予想外だったのは、その予想を上回った事だ。

 クルシェを煽ってしまった事を、少し、後悔した。

 あの朝、開け放たれた扉の前に戻った俺達の前に、起き出したハロルドやクロイスが待っていた。

 明らかにまた涙を流した目元に、非難の視線が俺に向けられた。

 おろおろとするクルシェに、指でハロルドを差し、行け行けとその指を振って見せた。

 兄の腕の中から下ろされたクルシェ。そして父親、ハロルドを見たクルシェは言った。


「私を育てたのは、お父様でしょ?」


 言ったと同時に、ぼろぼろと涙を溢し始めた。

 好きな人と一緒になるのがいいと思ってると言ったハロルドに、誰でもいいと押し付けられるのもいいのかと、ハロルドに抱き付いて勢いよく泣き出した。

 私が良ければ、私が決めたならって言われて、どうしようって言えない。勝手にしろって思われてると考え過ぎてしまう。不安だと言ったら、迷惑じゃないのかって思うと怖い。

 並べ立てる根拠のない不安。彼女にとっては、とても重要な事。

 彼女は、年相応の女の子だった。

 嗚咽まじりのクルシェの言葉は、ハロルドの殺る気に火を付けた。

 大事に育てた娘に、余計な事をして腹の立たない親は居ない。

 まさに、それ。

 ハレス公爵家に行けば済むと思っていた俺に、後で差し出された行動予定の報告書…。…絶句。

 裏で動くと思っていたハロルドが正面切った。

 ハロルド・アーデンテスとして、王陛下に、対面しようとする彼の迫力は…はははっと笑ってしまうくらい半端ない。




 ルーキンス国の継承権を持つクロイスを抱えたまま、礼をとったハロルドに対して、王陛下は、やはり気分を害された様で、クロイスを此方に寄越す様に促す。

 それには応じず、ハロルドは王陛下を見据えた。

 態度は、尊大だと言ってもいいくらいだ。

 この場は謁見の間なれど…から始まったハロルドの口上。

 謁見ではなく、クロイスの、ルーキンス側の親族に感謝の言葉を伝えたいとだけお願いをしていたのだが…。

 先の謁見で既に、国としてのシルフスト国王の言葉を伝えた。ビデディアとの外交の窓口に対しての謝辞。

 それとは別だと言ったのに、正しく伝わらなかった様だ。

 さておき、ハロルドは、クルシェの片親としての感謝の言葉を並べる。


「姉の父である私を、立場も何も無く、なつき、慕ってくれるのはこの上なく喜ばしいものです。シルフスト、ルーキンス間の取り決めに、事、レイナードには互いに干渉しないとありましたが、姉と弟が、慕い会える事を許して下さる王陛下には、どれだけの感謝の言葉を述べても足りません」


 そう言い終えてから、クロイスを下ろした。

 クロイスは、クルシェの手を取り数歩進んで止まる。


「国の境があり、距離もある。その中で、私達が手を取り笑い会えるのを感謝いたします」

「私、クロイス・レイナード・ハレス。ただいま、戻りました事を、王陛下にご報告いたします」


 クルシェとクロイスか、仲良く頭を下げた。

 その場は、ハロルドとルーキンス王との、略中間だった。


「干渉の意味を、改めて思い出して頂きたい。本来交わるのを許されなかった二人です。ですが、この様に心を通わせている。国の境が、血を分けた者達を裂く事の無きを願います」

「その様に、心掛けよう。…クロイス?」

「はい。王陛下!」

「意義のあるものであったか?」

「はい! 送り出してくれた父上にも、お力添え頂いた伯父上にも感謝してます」


 そう言って、にっこりと笑って頭下げた。

 国を上げてシルフストに行ったクロイスではなかったのだが、国からの護衛が付いていた事は、間違いが無し。そして、ビデディア王子に対しても、クロイスの価値が上がった。ビデディアにルーキンスが答えるには、クロイスの身柄を、一度国に戻す事が必要になったのだ。

 滞在の予定、残り四日程だが、ビデディアの王子コリニアスが、俺達の帰国に着いて、エルンストの領地を回りたいとの申し出もあり、ルーキンスでの残りを、クロイスとも過ごしたいと願い出たのが理由。

 

 この場には、ハレス公爵の姿は無い。

 王宮殿の何処かの宮にて、クロイスの帰宅を、我々の訪れを待っている。







 謁見の間を出た俺達は、用意された馬車に乗り、王宮殿の敷地内を移動する。

 広いのにも驚いたが、本当に敷地内を出る事も無く馬車が止まったのにも驚いた。

 ここへの同行者は、クロイス、クルシェ、ハロルド、グレイに俺。両国二名の、計四名の護衛。

 他の者は、王宮殿で待機となってる。

 宮の前に立った俺は、その、こじんまりとした建物に唖然とした。俺の護衛も同じだと思う。

 そんな俺にハロルドが、欲しがった付けがこれだと耳打ちした。

 そうは言っても、立った入口以外、塀だか建物の壁だか分からないレンガに囲まれていて、外側には窓も無い。高さが無いだけ、威圧感はないが、踏み込みがたい何かを感じた。

 準備万端と、ここでもハロルドがクロイスを抱き上げて歩き出した。

 俺は、クルシェの手を取り後に続く。

 通されたのは、扉も窓も開け放たれた、風の通るサロンだ。

 

「ハロルドも来ていたのね。離宮で会わなかったから、もしかしてと思ってたの」

 

 柔らかく声を出したのは、ルリーシェ殿。


「アレックス様もようこそ」


 立ち上がってお迎え出来なくてごめんなさいと、席を勧められる。

 座ったハロルドは、クロイスを膝に乗せたままだ。


「ハロルド。家の子を返してくれ」


 ハロルドの膝の上から、悪戯な顔をして両親の顔を見るクロイスに、ジェイド殿は手を振り促す。


「ジェイド。そしてルリーシェ。この二ヶ月、大事な息子を、私に預けてくれてありがとう。移動だけで一月。辛いとも言わずに乗り越えたクロイスを、どうか労ってやって欲しい」

 

 そしてクロイスを膝から下ろし、頭を下げた。

 下ろされたクロイスは、ハロルドに向き直り、両手を広げてハロルドに抱き付いた。


「とても楽しかったよ、ハロルド。また、何処かに行く時には連れて行ってね」


 それに、ハロルドは分かったと答えていた。

 とことこと、俺の前を通り過ぎる。

 チラリと向けられた視線は、物言いたげではあった。

 ただ、それを見るジェイド殿の眼差しは厳しい。嫉妬ともとれるそれは、ハロルドに向けられいた。


「父上、母上。ただいま帰りました」


 父親、母親の順に抱擁し、二人の間に座った。


「ジェイド様。クロイスが来てくれて、本当にうれしかったのです。ありがとうございます」

「他人行儀だね。お義父様とは、呼んでくれないの?」

「ジェイド様。私、自分で責任を持たなくてはならない年になりましたの。自国の謁見で、ハレスを名乗るのは終わったと言われましたわ。領地を治める者に、他家の名は不要と」


 そう言うクルシェは、落ち着いて見えた。

 感情を出してしまった後だからか、迷いが消えたのか…。


「ジェイド様とお母様は、クロイスを通じてお気持ちを届けて下さいました。そのお気持ちのままに、私が一人立ちする事を祝って下さいませんか?」

「ハレスを名乗るのは終わったと、陛下が言ったの?」

「はい。しっかりと領地を治める役割を果たすようにと」

「だからと言ってそうですかと、納得は出来ないよ。クルシェは、ルリーシェの娘だよ? 国が違ったって変わらない事じゃないのか?」

「約束は約束よ」

「そんな約束、今更だろ!」


 少し遠い眼をしながら、クルシェを見るルリーシェ殿。

 声を荒げたジェイド殿は、ハッとしてルリーシェ殿にすまないと謝っていた。


「これから貴族議会に出る者がそれでは、不様だと…。ハレスの名は、国に残った私の心を、助けてくれました。ですが、以後の甘えは私の成長には不要です。名前はお返ししますが、今まで通り見守って下さると嬉しいです。それでは駄目なのですか?」


 言ったクルシェの顔は晴れやかだ。

 

「貴女は、私と違うのね?」


 ルリーシェ殿が、娘であるクルシェを見ながら感慨深く呟く。


「兎に角。詳しい話しは後だ。ハロルド! 今日はこのまま二人は此方に滞在出来るのだろ? ルリーシェと話しもあるだろうし、クロイスの話しも聞きたい」

「クルシェとグレイが世話になるが、よろしく頼む。だが…ジェイド、少し話したい」


 そう、俺は、ハロルドと離宮に戻る。その前にジェイド殿との対話を望んだ。

 ならばと立ち上がったジェイド殿。付いてくる様に促されて俺も立ち上がる。この場に残る四人への挨拶はもちろんだが、クルシェへの挨拶は欠かせない。俺は求婚者だ。

 立ち上がったクルシェの両手を取り、また明日とその手にキスをする。グレイの様子は気になったが、今は必要な事と、見ない振りをしてもらいたい。クルシェは、笑顔で頷いてくれた。

 問題は無い。

 グレイの苦い視線は、無視だ。

 




 




 



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