第二王子アレックス殿下の男子会(一日の締め)
クロイスが…怒って、物凄く怒りながらクルシェの待つ部屋へと帰って行った。
髪の色だけで、顔の造作は似ていないのに、眼を閉じて拗ねる様子が妙に可愛い。クルシェも拗ねるとこんな感じかと想像すれば、必要以上に構いたくなる。待て! 俺はそんな趣味の人間では無い。
まだ家に帰る気が無かったのにと、不満を爆発させる様子に、発案者のレインは、心配は無いですと諭していたが、納得出来ないらしい。レインの前に座ってじーっと見詰めたり、足を揺らす振りをして蹴ってもいた。ちょっと当てるだけなのも微笑ましい。
「怒ってたな」
「心配は要らないと思うのですが…」
「どのみち俺達は帰るからって言っても、長く一緒に居たかったんだろ? 気持ちは分かるけどな」
この場所に滞在してから、毎晩訪れる小さいのに口の達者な訪問者。男三人同室の、ほんのちょっとした息抜きだったりする。
イヴァンの言葉に、少し、しんみりとした。
昼間のレインの言葉は、ある意味目から鱗だった。当たり前の事を、誰もが見ない振りをしていたとしか思えない。
「守りを固めるのに気を取られて、攻めるの忘れてた…」
悔恨のため息といっていい程の息を吐く。
「その通りだから困っちゃうよね」
近くから聞こえた自分達、三人以外の声。
ぎょっとして声のした方を見れば、よれたシャツ姿のハロルドだった。
すたすた歩って、ローテーブルに腰を下ろした。
レインの前だ。
迫力のある無表情…。
言葉も出ない俺とイヴァン。イヴァン…さっき「っわぁっ?」って声を上げたよな…。俺も多分、ビックリして声が出たと思う。
レインとハロルド。同じ目線の高さだ。
「お疲れ様です。ハロルド」
ちょっと俺が緊張してハロルドを見るのに、レインはにこやかに挨拶をしていた。
「調整、上手く出来そうですか?」
何の事もなしに、質問するレイン。
そんなレインに対して、ハロルドが動いた。両膝に手を置いて座っていたのに、そのまま頭を下げた。
「目が覚めた。ありがとう」
ハロルドのそれに、わたわたとレインがする。
「やっぱり頭にきてたんだな。守れてもいなかった。思い上がりも甚だしくて、恥ずかしいよ」
「そんな事言っては駄目ですよ? 聞いた者が動揺します」
表情を変えないハロルドに、レインは、何時も通り答える。
「まだまだする事は山の様にあるが、やってくれるか?」
「やりますよ? 当たり前です。出立した時と何も変更は無いのですよね?」
「無い」
「なら問題無いです。私は私の役割を果たします」
また、無言でレインを見るハロルド。
レインの言葉に、俺もレインを見る。
「何か可笑しな事、言いましたか?」
「いや…。レイン君の考える役割は、何かな?」
ハロルドの言葉に、レインは動きを止めた。ハロルドの目を覗き込む様に視線を会わせる。
「殿下とクルシェ嬢をきちんと連れ帰る事だと思ってましたが…。間違ってましたか?」
「間違って無いよ。君だけが覚えていたんだよ。覚えていてくれて、本当に助かった」
そう言ってハロルドは立ち上がる。
「アレク?」
「あぁ…」
「私の最愛が欲しかったら、もっと気合いいれてね」
「今度は、空回りしない様に気を付ける」
「お互いにね。兎に角、君に良い側近がいて、本当に助かったよね」
そう言って、ハロルドは出ていった。
それを見送った俺はレインに向かって言った。「レインがレインで良かった」と。
「殿下まで、何を言い出すんですか?」
困惑を浮かべるレイン。照れたり、得意にならないのが…レインだ。
イヴァンがイヴァンらしくあるように、レインがレインで俺は助けられてる。
本当に助かった。
ぐだぐだで、振り回されて打つ手無しなんて、話しにもならない。
上手く行くかなんて、表で動く俺と、裏で動くハロルド達の役割による。
何時も二人には気付かされ、助けられる。
こんなんじゃ、彼女に惚れてもらえ無いかも…。だぁっ! 待て、今度の事で、レインに惚れられたらどうする? 物静かで優しい、気が利くレインだ…。どうする?
そうすると、イヴァンも気になる。
二人が居てくれ良かったと思いながら、二人のどちらかがと思ってしまう俺が居る。
駄目だ! 本当に余裕が無い駄目な男だ…。
ため息を付けば、いきなりのハロルドにはビックリしたからなとイヴァンが言う。
そういう事にしておこう…。
この四話は一日の出来事を人を入れ換えて書いてみました。
ハロルドで始まり、ハロルドで締めくくった一日。でした。
キーワードに、(謀略)(駆け引きあり)というのを加えました。
今話も、お読み頂きありがとうございました。




