女公爵クルシェ嬢 白花の中に座す①
21話にルーキンス国の人物紹介を入れました。
増えれば更新する予定です。
よろしくお願いします。
本文中のシュニティア、ティアリナの王女や様とした部分を(姫)と書き換えました。
アレックス殿下の腕に手を預け、クロイスに手を引かれながら歩くのは、ルーキンス王宮殿の東にある花園へと至る小道だ。建物の中を移動するのでは無く、此方からお進み下さいと案内されたのは、緑の木陰と可憐で小さなな白い花が顔をのぞかせる道だった。
奥へと続く道に、思わず素敵とこえを上げてしまう。
サワサワと葉音。キラキラと木漏れ日。
立ち止まって来た道を振り返れば、日を浴びて輝くこの国の王宮殿のが見える。
「姉上?」
「ごめんなさい…。あまりにも素晴らしくて」
少し前を歩くクロイスが立ち止まって私を見上げる。
手を引かれた私が進まなければ、クロイスを引っ張る事になる。歩きづらかったね、ごめんね。
殿下にもごめんなさいと顔を向ければ、私を見下ろす視線とぶつかる。
「殿下?」
「だからアレクと呼んで」
「アレク様歩きづらくないですか?」
「いや、全く」
「そうですか…」
肘から手を離そうとしたら、上から押さえらる。
「すみませんがアレク様、手を離しても?」
「駄目!」
「ですが、危ないですし…」
「なら、抱き上げて行けばいい。クルシェは景色を堪能したらいいよ」
「何でそんな事言い出すんですか?。殿下、変です!」
「いやいや、全然普通。だよね、クロイス」
「普通ですよ、姉上。アレクは求婚者ですよ?」
「だからと言ってね、ちょっと行き過ぎだとおもうのよ?」
間に挟まれた私の気持ちを、誰が分かってくれるのだろうか?。
この三日…クロイスと殿下に挟まれてこんなやり取りを、ずっと続けている。
クロイスが殿下の味方となるので、私には少し辛い状況になる。
何でそこまで仲良しになってしまってるのでしょうか?。寂しいです。
ゆっくりと前に進む。
「僕は何度も見てるので分かりませんが、姉上は気に入りましたか?」
「気に入るも何も、とても素敵で言葉に出来ないわ」
こればかりは個人の好みだろう。
「そうですか…。でも此処は、「雫石の庭」とか「涙の小道」とか言われてる所ですよ?」
クロイスが気の無い感じで足を運ぶ。
雫や涙の言葉に、成程と感じた。石が敷き詰められた足下は苔の緑。水を撒いたか、玉になった水がキラキラの木漏れ日を反射する。
「そうなのね…」
「クルシェは、どこら辺が良いと思うんだ?」
「あえて華美でない所でしょうか?」
「あえても何も、日陰を作るのに木があるだけじゃ無いのか?」
「まぁ。で、アレク様は情緒がないのですか? ルーキンスの宮殿ですのよ、ただの日陰の場所をこんな風に作る筈無いじゃないですか。先ず手間がかかりますのよ?」
異を唱えながら進む道は、白のつる薔薇のトンネルに変わり、大輪の白薔薇を基調として白の花々を集めた花園に出た。
煌めきの美しさから、白のグラデーション。その先には、何かを誇示するように、より存在感のある大輪の白花達が座していた。
その白花の一人が、白い扇で口元を隠す。隠される直前、紅のひかれた口元が見えた。
周りを囲んでいた侍女達が、あたふたとしてる。
これでは、私達三人は、正確には護衛も居るが、思いもしない所から現れた闖入者の様ではないか。
「何?」「何故?」を含んだ視線が向けられる。
なんて事は無い。小さな嫌がらせだ。此方からお進み下さいと言われたのだから、意図しての事だし、護衛同士の衝突も無かった。ただ言われた通り歩いて来ただけだし、何かの意味があっても、私達が嫌だと思わない限り、嫌がらせの意味は無い。
クロイスの手が離れた。
アレックス殿下と共に会釈をしてから近付いて行く。
白い大きな布の下に並ぶ円テーブル。座る令嬢方は、揃いの様に白いドレス。
ドレスコードの知らせは、勿論無い。
「シュニティア姫、ティアリナ姫。お久しぶりです」
クロイスが礼をとる。と、口元を隠したままシュニティア姫が「クロイスも久しぶりね」と言い、私達を見た。
黄金と言える程の耀きのある髪を白い肩に落としている。もう一人の見事な金髪の方が、ティアリナだろう。
「シルフストから参りました。御挨拶をさせて頂いてもよろしいか?」
アレックス殿下が、この場で一番の装いの白花を見る。その白花である第一王女のシュニティア姫がコクリと頷く。
「改めて、シルフスト国より参りました。アレックス・エイメル・シルフと申します」
「初めまして、クルシェ・ジス・レイナードと申します」
殿下の後に続けて、私も名乗ってしまう。王陛下との謁見以降、二人名乗る時があれば一緒にとお父様に言われた。あくまでも一揃えである様にと。
「お茶会にようこそ。シュニティア・キニア・ルーキンスよ。そして第二王女のティアリナ」
「ようこそ、我が国に。ティアリナ・キニア・ルーキンスです」
首を少し傾げて二人、お名前を返してくれた。
素っ気なさがありありとしている。
「急な訪問に対して、快く受け入れて下さり感謝してます」
アレックス殿下の心にも思ってない言葉が出たと、私は心の中で笑った。正式に謁見を終えた私達に、座したまま名乗る王族…。お義父さまもそうだったけど、この国の王族は皆そうなのだろうか?
「アレックス様。御紹介しますわ、ビデディア国からのお客様、コリニアス様です」
シュニティア様の紹介で、コリニアス様が立ち上がる。
「初めまして。コリニアス・フェルン・ビデディアだ。アレックス殿は第二王子だと聞いている。同じ第二王子同士、仲良くしてもらえたら嬉しい」
立ち上がったその場から、動く事はしなかったが、現状にあった礼として頭を軽く下げた。
「コリニアス殿。アレックス・エイメル・シルフです。此方こそよろしくお願いします。此方は我が国の公爵でクルシェ・ジス・レイナードです」
「初めまして。クルシェ・ジス・レイナードです」
そしてコリニアス様と同じ様に礼をして返した。
横に見える殿下の顔が浮かべる笑みは恐い。張り付いた笑顔は、普段を知れば、気持ちのいいものでは無い。
「クロイスは残るの?」と、ティアリナ姫。「勿論」とクロイスは返事をする。
「ならば、レイナード公爵令嬢とあちらに」
示されたのは、王女のテーブルを囲む一つ。遠くも無いが近くも無い。
アレックス様は此方と、シュニティア姫の隣の席。
殿下と離れて示された席へと行こうとしたら、殿下に手を取られた。見上げれば、行こうと促される。殿下のもう一つの手は、ビックリする事に、クロイスと繋がれていた。
殿下にエスコートされて行けば、空席が二つ。作られた影から外れ陽射しの下にある。
そのテーブルに付いた侍女が申し訳なさそうにしているが、気にしないでと、殿下の手を離し座った。
座ろうとしないクロイスを見れば、同行の騎士から日傘と何かを受け取っていた。殿下がそれを渡されると、私の頭の上から広げる。
日除けのベールだ。
甲斐甲斐しく私の頭の上を整えた殿下は、もう一つの椅子を寄せるとすっと座り、私の方の膝にクロイスを乗せた。
「クロイスには少しテーブルとの差があるようなので、行儀が良いとは言えないが見ない振りをしてくれると助かる」
王女達に向かって言った。
何か…アレックス殿下。王女を見る目、怒ってますか?
えぇ、私も何かチクチクとします。ご一緒ですね。
彼女達の「そう? ならあちらに行って」みたいな、クロイスへの態度…。年下の従弟に向けるには、少し冷たい。冷たいというか、関心が薄いとでもいうか…。受けて気持ちの良い態度では無い。
そう考えていると、私達を振り返る殿下。私とクロイスを見る殿下は、とても親しい者に向ける様に優しい顔をしていた。
今話もお読み頂きたありがとうございました。
一度には長すぎたので、いくつかにと区切りました。




