第二王子アレックス殿下の男子会(舞踏会前夜)
男子会…。
男の子の軽口のノリで心情を入れたいと思ってましたが、今回は補足の為に書きました。くどく重いです。くどいだけかもしれません。すみません。
「出立は四日後と聞いていたのですが、クルシェ嬢達は二日後領地に出るそうですが、殿下聞いてます?」
「何だそれ? 王都から一緒じゃ無いのか?」
「領地に寄る予定を繰り上げて来たので、弟君をお連れすると聞きましたが」
「なら四日後って何だ?」
「さぁ? 一緒に出立する理由ですが、領地経由…? 弟君の護衛強化で通しますか?」
そのまま着いて行く事を前提に話すレイン。
荷物など、後からでもどうとでもなる。
そうだなと返事が出かかった時、イヴァンのストップがかかる。
「甘い!」
紙束を抱えて近付いてくる。
「何だよ?」
「甘いよ、殿下!」
紙束を押し付けてくるイヴァンの目は笑っていない。
「それ、今日ハロルド殿が言ってたヤツの資料」
先ずと、渡されたのはルーキンス国の資料。
継承一位二位の王女二人。王弟のジェイド・ハレス。妻のルリーシュ・ハレス。息子で三位のクロイス・レイナード・ハレス。
イヴァンの手による注釈を見る。
「読んだな?」
「読んだ」
「頭ん中置いとけよ。先ず国内だ」
前レイナード女公爵、ルリーシュ・ジス・レイナードの結婚から問題が持ち上がる。ルーキンスの王弟ジェイドから婚姻の申し込みがあった。当時二位のジェイドの下の継承者は居ない。そして、ルリーシュ以外の血族もレイナード家には居なかった。ルリーシュ自身はジェイドに好意を持って無かった様なので、国内で婚姻相手を王家が宛がった。それがハロルド。自身はどうでも有能さを買って公爵家へ婿入り。ただハロルドが仕事と私生活は別の男で、破綻。その頃には、ルリーシュはジェイドに絆されていた。クルシェは五、六歳。ルーキンスの第一王女は七、八歳。ジェイド以後の継承者が居ても王女。ジェイドは国を出られない…。
続きを言うのを躊躇う様に、イヴァンは息を飲んだ。
「ジェイドがごねたか、ルリーシュが自分から家を捨てたか、ハロルドが動いたか…。それは、内輪の事で推測でしか無いから言わない。けど、ルリーシュ…母親が再婚して家を出て、七歳でクルシェ嬢は公爵家を継いだ」
言い切って俺を見る。
「今の課題じゃ無いけど、お前にとって必要な事だろ?」
イヴァンの言う通りだ。座して誰かの話を待ってたら、クルシェに近付け無い。
「イヴァン」
「何だ?」
「ありがとう。目が覚めた」
「そうだな、俺も思わず覚醒したよ」
「その…前の話が、どう関係するんですか?」
「レイン? クルシェ嬢のフルネームは?」
「クルシェ・ジス・ハレス・レイナード?」
「何で疑問形だよ。で、弟はクロイス・レイナード・ハレスだろ」
「継承と相続が、今代でも問題になるんだな?」
俺は確認を込めてイヴァンを見る。
クロイスはレイナードを継ぐ気でも継げない。ハロルドが言った。
「クルシェ嬢のハレスは、公的になんの意味も無い。後ろ盾くらいかな? 反対にクロイスのレイナードも血統を表してるだけのものっぽいんだよ。母親が、継承を放棄して再婚してるから、よっぽどの事が無い限りクロイスがレイナードに入る事は無い」
「普通にクルシェ嬢が結婚して子供を産めば済む事ですよね?」
レインの言葉にイヴァンが顔を顰める。
「ハレスは今、クロイスの下が産まれる予定なんだよ? 分かってる?」
ハァっとっと息を吐く。
予備の予備が出来れば、打つ手も増えるって事か。出さなかった駒も、数が揃えば出してくる。
「ハレスで無く、ルーキンスはレイナードが欲しいのか?」
「隣国の公爵家…簡単に手に入るなら、欲しがる国もあるよね。こっちに来たのだって、クロイスが希望したからだけじゃ無いと思うんだ」
「何でそう思う?」
「思うって言うか、想定? なぁ、何で殿下をルーキンスに連れて行きたいんだ? 何で、陛下はハロルドが言うからくらいで許可を出すんだ?」
「…ビデディアの王子」
「年は二十三か四。王子を迎える? 王女を出す? 平和ボケしてた自分が情けない。ハロルド殿は現在も問題有りだが、確かに有能だよ」
「北方伯と縁続き…年回りの良いのはレイナード…」
「エリアナは何で公爵家に行った? 誰が、ハロルドが父親だと言ったんだ?」
俺は背中から冷えていくのを感じる。
もちろん偶然もあるだろう。
「目に見える争いが無いだけで、国同士がしのぎを削ってるんだな」
「そっ! 次代の俺等ってどうよ?」
「情けないですね…」
「何処まで分かってるかって言われたが、あれは挑発で無く、確認だったんだな」
どっしりと重たいものが肩に乗った気がした。
「こうだからで無く、こうかもしれないで動いてるんだな」
「分かったなら、ほら、お勉強だ!」
イヴァンが残りの紙束を並べていく。
レインも手に取った。
明日の舞踏会を楽しみにするどころじゃないんだ。




