竜の声
書いてたら、めっちゃ長くなったので先にここまで投稿することにしました。
「すみませーん!…居ないのかな…」
フィリアムが静かに立ち上がって言う。
「鍵は空いてますよ。御用でしたら扉越しにでもお伺い致しますよ。」
扉の向こうでホッと安心したため息が聞こえる。
そして、扉が静かに開けられる。
現れたのは中性的な見た目の長い金髪で片目の隠れた男(?)だった。
「失礼します。私はアリアス・エルフェ・アシェルマーニと申します。とあるお方のご依頼により、リアと言う名前の猫女族の方を探しているのですが…」
中性的な彼(?)は俺に気づいて言う。
「…失礼ですが、そこのお嬢様、お名前をお聞かせ願えますでしょうか。」
俺は別に偽る必要も無いので正直に答える事にする。
「俺はリアだ。見ての通り、ただの猫女族だが、俺に用か?」
アリアスはその長い髪を揺らしながら、ゆっくりと俺に近寄る。
そして、俺の頬をその華奢で細い手で包み込む。
「ふむ…では、貴方が私の探していたリアさんと言うわけですね。」
アリアスは俺から手を離すと少し距離を置いて言う。
「改めまして、私はアリアス・エルフェ・アシェルマーニと申します。依頼者の名前は明かせませんが、リア様のパーティの一員として、リア様にお仕えする様にとご依頼を承りました。よって、リア様のパーティの一員としてギルドにも報告をし、リア様とパーティを組む許可を得ています。後はリア様の同意さえあれば手続きは終了なのですが、如何致しましょうか。」
アリアスは淡々とそう言うと俺の目を見る。
俺は仲間が多い事に越したことはないと思っていたが、フィリアムが言う。
「このタイミングでこの場所が分かるとな…失礼だが、貴殿の職を聞いてもよろしいかな?」
アリアスは顔色一つ変えることなく俺の目を見て言う。
「私は銃と剣の使い手、剣銃使いの称号を得ています。よって、職は剣銃使いであります。巧みな銃術と剣術で敵を一網打尽に出来ます。銃術により、対軍戦でもかなり優位に戦えると思います。」
するとナディーが俺の前に出て言う。
「ナディー…守る…信用出来ない…」
アリアスは仕方ないと言いたげに武器を俺に渡す。
「これで私を生かすも殺すも貴方次第です。あ、でも、私は呪術も使えるから無防備じゃないのか…どうしよう…」
なんて真剣にアリアスが考え始める。
「ああ、良いよ。そんな事しないでも…アリアスの言いたい事は理解してるし、俺も心強い仲間が居れば良いなと思うから、異論は無いよ。」
俺がそう言うとフィリアムとナディーが口を揃えて言う。
「「ならば…私/ナディー に勝てたら、同意した事に します。/する…」」
「了解しました。では、私をお認め頂けるように御三方と精一杯戦わさせていただきます。」
アリアスは二人の言葉に即答で答える。
アリアスを先頭にフィリアムとナディーも外へ出る。
俺は一人取り残された小屋の中で言う。
「俺は良いよって言ったんだけどなぁ…」
渋々外に出て行く。
「勝負は一本勝負、私かあなた方全員のHPを攻撃で削り、HP低下の戦闘不能で勝敗を決めるのはいかがでしょうか?」
「つまり、模擬戦って事か?」
「そうです。これならば、やり過ぎてしまっても互いに死ぬ事はありませんし、何より傷つけるのは目的ではありませんから…」
フィリアムとナディーが口を揃えて言う。
「「私/ナディー もそれでいい ですよ。/よ…」」
俺達は互いに所定の位置に配置される。
そして、ギルドカードの力によって特殊フィールドが形成される。
「では、あなた方の攻撃開始を合図にバトルスタートですので、どこからでもかかってきてください。リア様も遠慮なく攻撃して下さっても構いませんよ。」
俺はなんとなくこいつはやべぇと感じていた。
確かにこれはこうした方が良かったなと…
フィリアムが魔力を最大解放して言う。
「ならば、私のこの一撃で仕留めて差し上げましょう!心して受けるがよい!全てを消去する時空砲!」
フィリアムから見えざる波動砲がアリアスに向けて発射される。
アリアスはその場から動こうともせずに言う。
「我が私怨、我が憤怒、我が悲しみ…その力が我が声に呪いを授ける…呪言!呪われの盾!貴方はもう呪いからは逃れられない。」
黒く禍々しい盾がアリアスとフィリアムの波動砲の間に現れ、フィリアムの波動砲を無力化する。
「がはっ?!な…ぜ…」
フィリアムのHPが突然無くなり、フィリアムは戦闘不能となる。
アリアスは武器を持っていないにも関わらずこの強さなのだと俺は感じた。
ナディーが魔力を控えめに解放して言う。
「貴方のそれは見切った…テレポ!」
ナディーの姿が一瞬でアリアスの目の前に転移する。
アリアスは動く気配すらなかった。
「これなら…」
ナディーが一気に魔力を解放して拳に光の魔力を纏わせる。
そして、その拳を突き出しながら言う。
「ホーリーメテオナックル!」
しかしそれはアリアスに当たる事はなく、アリアスの目の前でナディーの動きが止まる。
「呪言:命令…汝、動くな。」
「…?!動けない…」
禍々しい黒い霧がナディーの動きを完全に止める。
アリアスは静かな声で言う。
「我は恨みの化身…この身に刻まれし深き憎悪は何人たりとも生かさず、闇へ葬る…呪言:命令…汝、己を敗北へと誘え。」
ナディーはそのまま自分の拳で自分の身体を叩いてHPが無くなり、戦闘不能となる。
「マジかよ…」
俺は思わずそう言う。
今の俺たちとアリアスとでは格が違い過ぎる。
アリアスは俺の方を向いてニコッと微笑んで言う。
「どうでしょうか?武器が無くともこれ程の力を持つ私はとても頼りになると思いませんか?」
俺はアリアスの顔から目を背けながら言う。
「正直に言うとここまで力の差があるとは思わなかったな。と言うか、俺は元々お前を受け入れるつもりだったのだが…」
アリアスは驚いた様に目を見開いて言う。
「そ、そうだったのですか?!私とした事がとんだ早とちりをしてしまいました…はわわわ〜…」
アリアスが頭を下げながら言う。
「この度は勝手に早とちりしたあげく、試合まで申し込んでしまい、誠に申し訳ございませんでした!どうか、このご無礼をお許しください!お願いします!小姓ですから!」
最後の方には土下座をして謝る始末だった。
「いや、怒ってないから頭上げろって!元はと言えばフィリアムとナディーが反対したのが原因なんだからさ。」
俺はアリアスの方へよって、アリアスを立たせる。
アリアスはまだ少しオドオドした様子で言う。
「ほ、ほんとにお許し頂けるのですか…?」
「まあ、勘違いくらい誰にだってあるからな…だから、あんま気にすんなよ。」
そして、俺はアリアスの前に武器を置いて言う。
「でも、せっかくだから、俺にもお前の力を見せてもらおうかな。今後の連携にも関わってくるからな。」
アリアスは武器を拾うと言う。
「そうですね。では、ここからは正真正銘の全力で戦わさせていただきますね!」
「あぁ…せいぜい、瞬殺されねぇ程度にはちゃんとついていってみせるぜ!」
俺は魔力で刀を生成して、アリアスに向かって突撃する。
アリアスも銃剣を構えて、俺に突撃する。
ギャイン!ギャギャギャギャギャギャ!
鉄が激しくぶつかり合う様な凄まじい音が響く。
俺とアリアスはほぼ同時に相手と距離を取りながら、次の攻撃を開始する。
「くらえ!天翔る天雷よ!我に力を!王天雷鳴!」
俺はそう言って右手を振り払うと、白い雷の球が巨大な大砲の様な勢いでアリアス目掛けて飛んでいく。
「甘いですよ!付与:水弾!発射!」
アリアスの銃剣の銃口から5つの水弾が発射され、俺の放った雷球を呆気なく撃ち抜く。
俺はすかさず能力を使って言う。
「これはどうだ!贈物発動!対象個体名アリアス、毒付与!」
アリアスは俺の能力が発動した瞬間に魔力を解放して言う。
「私の真価はここからです!能力発動!状態異常時能力超強化!」
「マジかよ…」
アリアスが地を蹴ったと思ったら、一瞬で空高くにアリアスが現れる。
「ならば、これでもくらいな!貴方に届ける加重の力!」
アリアスは一瞬にして地面に叩きつけられ、凄まじい量の土煙が巻き上がるが、アリアスのHPゲージはピクリとも反応しなかった。
「不思議でしょう?ただの人間が防御魔法を使うにはあまりに時間が足りないし、言葉を発する時間さえなかったから、呪言も使えない。それなのにどうしてこんなにも無傷なのか…」
土煙の中でアリアスは楽しそうに言う。
「さすがにこれは想定外だな。」
「そうでしょうとも…」
土煙が少し収まり現れたアリアスは龍の様な逞しい尾を揺らし、背中で龍の翼が羽ばたき土煙を吹き飛ばす。
「人間じゃないなとは薄々思っていたが、それって竜人って奴か?」
アリアスはニヤリと楽しそうに笑って言う。
「はい。私は龍と人の間に産まれし種族…竜人です。まあ、私の場合は人間の血の方が強いので通常は感情が高ぶったりでもしない限りは人の姿をしていますけどね。感情が高ぶるほど竜の姿に近づきますよ。」
「じゃあ、今のお前は感情が高ぶって強くなったって状態か…」
「そうですね…実は今回の場合は少し違うのですが、その様な解釈で間違いは無さそうですね。」
アリアスはそう言うと銃剣をしまい、拳を構える。
俺はその隙をついて、一気に距離を縮める一歩を踏み出そうとした瞬間だった。
突然アリアスが目の前に現れる。
「そぉい!」
ドゴォ!
「がっ?!」
俺の体に一瞬でアリアスの拳が叩き込まれ、その衝撃で俺の体が吹き飛ぶ。
ドガーン!
後ろにあった大きめの岩が俺の身体の勢いで粉砕する。
俺のHPは既にオーバーキルだった。
「ってえ…」
勝敗が決まって、特殊なフィールドが消える。
アリアスは人の姿に戻ると駆け足で俺の所にやってくる。
「だ、大丈夫ですか?お怪我はありませんか?」
俺は少し痛む身体を立たせて言う。
「少しだけ痛てぇけど、多分大丈夫だ。」
「痛むのですか?でしたら…」
アリアスはそう言うと俺の腕によく分からない模様を書き込み始める。
「何をやってるんだ?」
「シッ!今は話しかけないでください。」
「お、おう…」
しばらくして、アリアスは俺の腕に書き込み始めた模様が完成したのか、ふぅ…と息を吐く。
「今のは呪術の一つである呪印です。本来ならば、相手に不幸を呼び寄せたりする様な使い方をするのですが、この呪印は魔力や怪我の自然回復能力を半永久的に超強化する呪いです。その為、これを書いてる間に高度な呪言を送っていたのです。」
「なるほどな。じゃあ、これがある限り、俺の回復力は凄いって事になるんだな。」
俺が納得して頷いていると、突然アリアスが膝から崩れ落ちる。
「お、おい!大丈夫か?」
俺はアリアスがそのまま落ちない様にそっと支える。
俺は先程に比べると格段に痛みも無く、身体が軽いことに気がつく。
アリアスは疲れた表情で言う。
「す、すみません…どうやら、少し力を使い過ぎてしまったようです。少し寝ますね。おやすみなさい…」
そう言うとアリアスは眠り始める。
仕方ないので、俺はアリアスをおぶってフィリアムたちのところへ戻る。
アリアス・エルフェ・アシェルマーニ
種族:竜人
能力:竜化
詳細:国宝級冒険者の少女で職は銃剣使いである。
作中では語られていないが、元々は高位の呪術師の生まれで、幼い頃から天災級モンスターを倒せるほどの呪術の力があった。
しかし、ある時、もの凄くカッコイイもの(銃剣)を見つけてしまい、銃剣使いを志すようになる。
元々竜の力を持っているため、他の種族より運動能力が桁違いに高く、感情が高ぶって竜化するとその強力な拳で敵をねじ伏せる圧倒的な脳筋タイプになる。
ちなみにこれも作中では、語られていないが感情が高ぶる以外でも呪いによって自らの意思で竜化する事が出来る。




