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相棒がやってきた  作者: 南 春


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4/5

かくれんぼ

 翌朝。


 目を覚ました幸一は、大きく伸びをした。

 顔を洗おうと寝室を出たところで、幸一は夜中に捕まえたコクワガタのことを思い出した。


 翔太が起きてくる前に見ておこう。

 そう思ってベランダへ向かうと、勝手口の前に虫かごが置かれていた。


「あれ?」


 幸一は首をかしげた。


「春。虫かごベランダに置かなかったんだ。」


 朝食の準備をしていた春が振り返る。


「夜、思ったより寒かったから。」


「寒かった?」


「見つけたときも、なんだか弱っているように見えたの。かわいそうだから、一晩だけ家の中に入れておいた。」


 幸一は口元を緩めた。


(虫は苦手なのに、優しいところあるんだよな。)


「どれどれ。」


 幸一は虫かごを持ち上げ、中をのぞき込んだ。


「あれ?」


 もう一度のぞく。


「クワガタ……いない。」


「えっ?」


 春も慌てて虫かごをのぞき込んだ。


「ちゃんと入れたよね?」


「入れた。中で動いてたはずだけどな」


 二人は顔を見合わせた。


 幸一は虫かごの網に目を止めた。


「あっ。」


「どうしたの?」


 網の端が割れている。


「ここから逃げたんだ。そう言えば虫籠壊れてた。」


「えぇっ!」


 春の顔が青ざめた。


「じゃあ、今この家の中にいるってこと?」


「そういうことになるかも。」


「どうしよう。急に出てきたら……。」


「そしたら、俺は出てきたらうれしいけど。」


「私は全然うれしくない。」


 二人は顔を見合わせて笑った。

 それでも、コクワガタが家のどこかにいることに変わりはない。


「あの大きさじゃ、冷蔵庫の下とか家具の隙間に入ったら、もう見つけるのは難しいな。」


「とりあえず、探そう。」


 二人は台所や玄関、家具の隙間までのぞき込みながら探し回った。

 けれど、どこにもコクワガタの姿はなかった。

 しばらくして春がため息をつく。


「クワガタのこと、翔太に話す?」


 幸一は首を横に振った。


「もういないのに話しても、がっかりさせるだけだしな。」


「……そうだね。」


「もし見つかったら、そのとき見せよう。」


 春もうなずいた。

 二人はそう決めると、何事もなかったように朝の支度を始めた。


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