第8話 姫に自由を
聖水の都。聖水城。
「妹の主氏姫と青若丸ちゃまを結婚させてあげるわ」
聖水印主大姫。主氏の姉だ。
「あんないつ倒れるかわからない妹でも、青若丸ちゃまは、優しく思いやっているのよ」
「精霊酒の騒ぎが終わって間もなくは、主氏姫を安静にさせるべきっパ」
カッパは、警備団につかまっていた。
主氏姫をお城から逃がす手伝いをしたからだ。
「おほほほ。酒ですむのなら、いくらでも飲ませればいいのよ」
印主大姫は高笑いする。
「…」
その場の警備団は、黙り込む。
“上”である、印主大姫だが、酒で病を遠ざけている主氏姫に無慈悲ではないだろうか。
黙ってはいる。
でも、皆んな、酒蔵姫の幸せを願っている。
第8話 姫に自由を
天山剣道場。
食事をすませた逸見たちは、道場に移動した。
「迷惑だぜ。全く。青若丸のヤツ。」
姉の印主大姫と、気に入られている青若丸は、そろってお城を自由にしている。
主氏との結婚なんかも勝手に決める。
「ボクだよ。主氏姫。迎えに来たよ」
剣道場の入り口に、お城の兵を従えた青若丸がやって来た。
その名の通り、青い髪をオカッパにした美少年である。
「さあ、ボクと結婚しよう」
瞳は、キラキラと輝いている。
「何か、バカそうなヤツだな」
「おめえ、良いこと言うじゃねえか。確かに、バカだぜ」
お城の兵が、剣道場の門から入ってくる。
「会いたかったよ。主氏姫」
瞳がキラキラしている。
「うぜえんだよ。失せろ」
「俺だって…」
主氏と逸見は、木刀を構える。
「何で、キミは女の娘なのに、男の子のような言葉使いをするのさ。治したほうが可愛いよ」
青若丸は、大きく両手を広げる。
「主氏姫。一緒にお城に帰ろうよ」
青若丸の引き連れた兵たちが前に出てくる。
しかし、兵たちは、主氏姫に向かわず、逸見に突撃する。
「うわあっ…」
逸見は、兵たちにつかまった。
弱いのだ。逸見。
見事に、足を引っ張った。
「逸見!」
「この庶民を巻き込みたくなければ、お城に帰るんだよ」
不敵に笑う青若丸。
悪役か。
「…」
主氏は、考える。
「オレ、コイツが好きだから、他のヤツと結婚できねえ」
男言葉で、言う。心の底から。
「な、何言ってんだよ。主氏」
逸見は、つかまったまま。
何もできない。弱い。
弱いヤツを好きとか、誰が信じるんだ。
「弱いヤツを守りたいんだね」
青若丸は、逸見を連行させることにする。
「コイツを守りたかったら、ボクと結婚だよ」
「…」
主氏は、黙って青若丸に従う。
聖水城警備団。牢屋。
「ここで、おとなしくしてろよ」
「いてて…」
逸見は、牢屋の中に入れられた。
木造の牢屋。
すぐ隣には、ずっと黙って、何の反抗もしなかった天山師匠が入れられた。
その隣には、何故か、カッパもいる。
「カッパ。どうしたんだ?」
「主氏姫を助けようとした罪でつかまったっパ」
カッパは、元気なくうなだれる。
主氏をお城の外へ逃がす手助けをしたため、牢屋に入れられたのだ。
精霊酒を作った張本人をつかまえていいのだろうか。
「このままでは、主氏姫は、結婚させられてしまうっパ」
「結婚…」
主氏が…?
頭がぐるぐるしてきた。何か酔ったような気分だった。




