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酒蔵姫  作者: キノぴょ


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7/10

第7話 主氏姫さま

聖水の都。

都新聞の号外が飛び交った。


[酒蔵姫さま。ご結婚決定]


大報道が報じられた。

都の庶民は、男勝りで有名な酒蔵姫さまの結婚に驚いた。

「あの酒蔵姫さまが、ご結婚か」

「主氏姫さまがねえ」

相手は、従兄弟の青若丸あおわかまるさま。

どんなお相手なのか。

都でウワサが広まった。


天山剣道場。

「主氏が…結婚…」

逸見は、号外を見て、言葉を無くした。


何も聞いてない。

幼なじみじゃないのか。

何で、何も言ってくれないのか。

結婚だなんて。

先に、大人の仲間入りじゃないか。

男勝りのお前には、無理だろう。

無理だろうよ。


第7話 主氏姫さま


「主氏は、自分から話すと言っていたが…」

天山師匠は、事前に“上”と主氏に話を聞いていたらしい。

もう、剣道場には、“行かせない”と。

「主氏。もう、剣道場に来ないのか?」

「元々、“上”は、主氏を剣道場に通わせるのは否定的だったからな。当然だろう」

「何だよ…何だよ」


主氏がいない。

隣りにいない。

仲間がいない。

いや、違う。

俺の…。


「いずれは、こうなると思ったが」

天山師匠は、言う。

逸見と主氏。剣道場の門下生。

庶民と姫。

身分違いの二人。

でも、ずっと一緒に木刀術を学んでいた。

弱気な男の子と男言葉の女の娘。


「師匠…」

逸見は、泣いていた。

「俺、何も聞いてないよ…」

泣いていた。

「俺、主氏と友達じゃ無いのかよ…」

涙が止まらない。


俺の…友達。

違うのかよ。


「じゃあ、一緒に聞きに行くか。逸見」

天山師匠が、出かける準備をする。

逸見は涙をふいて、うなづく。

聞きに行こう。心がラクになる。


聖水城。城門。

「これは、天山一龍斎さん。よくぞ、来てくれました」

「はやく、来てほしかったですぞ」

門番が、天山師匠を歓迎している。

「弟子が泣くから、時間がかかったんだ」

「ぐすぐす…」

天山師匠の後ろで、逸見は、まだ泣いている。


「おい。遅いぞ」

いつもの主氏が、城門から出てきた。

門番が、城門を閉じる。

“上”を、足止めしてくれるという。


枯枝そば屋。

食事も兼ねて、天山師匠と主氏が、客席に座る。

「ぐすぐす…」

逸見は、まだ泣いている。

「どうした。逸見」

父親が心配している。

天山師匠は、かけそば。

主氏は、天ぷらそばを注文する。

逸見には、先に水が出る。

「もう、泣くな。逸見」

「ぐすぐす…」

「おい。逸見。おめえ、泣きすぎなんだよ」

「主氏…ぐすぐす…」

逸見は、もう何が悲しいのかわからない。

とにかく、泣いている。

「弱すぎなんだよ」

「俺の…友達だよな…」

「ああ、友達だぜ」

「うん…そうだよな」

逸見は、だんだん落ち着いてきた。

「オレの姉…印主大姫が、結婚しろってうるせえんだよ」

主氏の姉。

聖水せいすい印主いんしゅ大姫。

“上”の総大将。

長女で、高飛車な美女。

従兄弟の青若丸を気に入っていて、何でも与える。

青若丸は、子供の頃から、主氏姫に片想いしている。


「何とかしねえと、本当に結婚させられちまうぜ」

お城の中では、印主大姫は我がまま。青若丸と主氏姫の結婚を好き勝手に決めてしまったらしい。

「助けろよ。逸見」

「う、うん。わかった」

完全に涙を拭いた逸見は、水を飲み干す。

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