第6話 ダイダラボッチ
聖水の都。木凜酒造所。
霊薬は、カッパの精霊酒作りの酒造所に、集められた。
酒造とは、お酒を作ることである。
カッパは、精霊酒作りのため、酒造所に行った。
天山師匠は、剣道場に戻った。
そして、アムリタとダイダラボッチが、木凜酒蔵の蔵元につかまった。
木凜酒蔵の蔵元。
黒い長い髪の美人蔵元である。
蔵元とは、お酒保管の偉い人のことである。
「逸見。主氏姫。これが、ダイダラボッチなのかい?」
「う、うん。そうみたいなんだ」
逸見は、うなづいた。
精霊酒を奪った犯人は、ダイダラボッチ。
そう言ったのは、酒蔵の管理人である。
第6話 ダイダラボッチ
「こ、コイツだ。コイツがダイダラボッチだ」
酒蔵の管理人が指差した。
アムリタは、混乱する。
「ダイダラボッチは、盗みなんかしないです」
「オラ。何もしてないダべ」
ダイダラボッチ当人も、否定する。
「わからんが、話をさせてもらおうか」
蔵元の美人は、アムリタとダイダラボッチを警備団に引き渡す。
逸見は、父親を心配して家に帰る。
話によると、まだ、具合が悪くなってはいないらしい。
枯枝そば屋。
「逸見。帰ったか」
「親父。具合、大丈夫か?」
逸見が帰ると、父親は、いそがしい中で、そばの仕込みをしていた。
「手伝うから。休んでくれよ。親父」
「いいって。お前こそ、疲れてるんだろ。休め」
確かに、ヒジリ山に行った帰り。
疲れてはいる。
「なあ、逸見」
後ろに主氏がいた。
「い、いたのか?主氏」
「おいおい。親父のことで頭いっぱいかよ」
主氏は、ずっと後ろをついてきていたらしい。
逸見は、全く、後ろを気にしていなかった。
「お前は、お城に帰るんだろ。帰れよ」
「金持ち嫌いだもんな。おめえ」
「お前だって、いつまでも弱い、俺のこと嫌いなんだろ」
「…」
主氏は、口を閉じる。
そして、下を向く。
「き、気持ち悪くなったのか?大丈夫か?」
「大丈夫だぜ」
下を向いたまま、答える。
「何かさ。今日、冒険みたいで楽しかったよな」
「そ、そうか?俺は、ハラハラしまくったよ」
「いいじゃねえか。ハラハラってよ」
「楽しくないよ」
「いやはや。おめえ、カッコよかったぜ」
「は?」
「カッコよかった。それだけ言いたかった。またな」
主氏は、背中を向けて、お城に帰る。
カッコよかった。
褒め言葉か。
何だ。主氏のヤツ。
次の日。
精霊酒を盗んだ真犯人が判明した。
酒蔵の管理人本人だった。
他の都に高く売りつけるために、大量盗難を実行したのだという。
転売だ。
都の隠れ家に、盗まれた大量の精霊酒が見つかった。
ダイダラボッチの仕業というのは、嘘。
本当に、ダイダラボッチが出てきたことで、嘘がバレた。
そして、精霊酒の管理をより厳重にする方向へ進んだ。
いつも通り、1日1杯の酒の提供が再開された。
いつも通り、そう。いつも通り…。
天山剣道場。
「精神統一、はじめ!」
天山師匠の大きな声が響き渡る。
集中…。
逸見は、一人だ。
いつも隣りにいる主氏がいない。
男言葉の女の娘がいない。
「天山師匠…。主氏は?」
「聞いていないのか。逸見」
天山師匠は、もう剣道場に主氏は来ないと言う。




