章扉
いつも『狂桜華』を読んでくださりありがとうございます。
謀反の裏側を書いた外伝『散華の夜』も連載中ですので、読んでいただけると嬉しいです。
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夏、御前演武を執り行う。
近衛・朝廷軍・一般武官が一堂に会し、武を競う。
宮中は武を称え、民は若き武官らに惜しみない歓声を送った。
その勝敗は記されていない。
後の世に残されたのは、ただ、この年の御前演武が殊のほか盛況であったという記録のみである。
——『帝記』より
◇
春には美しく咲き誇っていた桜も、今は青葉が生い茂り、花はひとつもない。
桜は散る。
どれほど鮮やかに咲いていても、花はやがて風に舞い、枝だけを残して季節を終える。
人はそれを儚いと言う。
けれど、夏の陽光を浴び、秋の冷え込みに青葉を落とし、冬の寒さに枝を震わせても、春になれば、また花を咲かせる。
散ることは終わりではない。
次の春へ向かうための、ほんのひとときの眠りなのだ。
名を失い、居場所を失い、大切な人たちと離れ
もう二度と、その名前で生きることはないのだと思っていた。
けれど、季節が巡るように、人もまた歩き出せるのなら。
もう一度、この名を呼んでもらえるのなら。
何度でも立ち上がろう。
何度でも笑おう。
何度でも、この国で花を咲かせよう。
桜は、散るからこそ美しいのではない。
散ってもなお、また咲くからこそ、美しいのだから。




