第八話(抱きつくな)
あれは専門学校に入学して、ひとつ目のアパートで友人と麻雀をしていた時の事。
夏場の夜にエアコンのない六畳間に4人が集まっていたせいで、やけに蒸し暑かった。
雀牌をジャラジャラさせるのも近所迷惑だったのだが蒸し暑さには勝てず、窓を全開にする事にした。
二階の窓から外を見ても隣の家まではそれなりに距離があり、誰も住んでいなかったようで真っ暗だった。
因みに窓を開けるといきなり外で、ベランダなどは無い。
戦後すぐに建ったアパートの作りである。
汗をかきながらもポンチーの声も高らかに勝負を進めていた時、俺の対面で手牌をじっと見ていた友人が、ふと後ろを振り返った。
そこはさっき開けた暗闇が見える窓である。
「何かいたん?」
冗談で聞いてみた。
「あー、うん。女の顔が見えた」
聞くんじゃなかった。
俺を含めた他三人が麻雀どころではなくなってしまった。
「手牌倒して。窓閉めるから」
俺の声で全員が手牌を倒した。
立ち上がってから女の顔を見たと言う友人の後ろに周り、全開にしていた窓を閉め、何事も無かったように自分の席に戻って麻雀を復活させた。
再び勝負を再開してからしばらく。
また対面の友人の視線が気になった。
こっちを見てる。と言うか、肩越しに何かを見てる気がする。
「んー、まさかと思うけど、なに?」
と声を出した途端に、後ろから両肩に抱きつかれた感覚があった。
「うぉっ!!」
「な。(ニッコリ)」
「な」じゃねえよ。
窓から入ってきた女に後ろから抱きつかれた夏の思い出でした。
続くかも。




