第七話(お姉さんビル)
当時、つくば市にある高層マンションの一角に、お姉さんビルなるものがあった。
テレビの怪奇特集などで放送されていたからご存知の方も多いのではないだろうか。
地元に近かった私の地域ではお姉さんビルではなく、姉こいし(恋し)ビルと呼ばれていた。
理由はビルの壁に浮き出た模様が『姉こいし』と見えたからだ。一説には『お姉さん』と見えたらしいが、姉の上に『お』の文字は現れてはいなかった。
これが何回塗り治しても現れるんだそうだ。
さて、田舎にもやっと出てきた心霊スポット。物珍しさで友人と2人で出かける事にした。
何でも噂では、そのビルに姉弟が住んでおり、ビルで待っていた姉に向かって弟が道路を渡るときに車に撥ねられたとか、姉弟のどちらかがビルから飛び降りたとか、真偽の定かでない如何にもな噂が流れていた。
そしてそのビルの一階にある階段部分、そこにはエントランスはなく、直接階段を使って各階に上がっていく造りだった。
「おー、ほんとに『姉こいし』って書いてある」
初めてその光景を目にした俺は少し興奮していた。
「どこが姉に見えるんだ」
友人はビルに付いた汚れなのかヒビ割れ模様なのか不明なものを文字として理解出来なかったらしい。
「あそこの線がこうなって…」
壁の模様を説明してようやく、あぁホントだ!とアハ体験のような返事が返ってきた。
「でな、もし姉弟の飛び降りが原因であの文字が浮かんで来てるなら、高層階から出て来れる窓はあそこだよなー」
そうビルの最上階を指差して、目の前の階段上り口まで指を下ろしてみた。
「あれ?」
斜めに切れて隙間のできている階段の壁に、顔を半分だけ出してこちらを見ている女がいた。
しかも白目に比べて黒目が点ほどしか無く、バランスが悪い。
そして首から下がない事が分かった。
一気に全身に鳥肌が立ち、後退りした所で友人がそちらに向かって歩き出してしまった。
「だめだめだめ!帰るぞ!」
俺は怪訝そうな顔をしている友人の肩を引っ張り車まで戻った。
「なんだ?何かあったのか?」
そう聞いてきた友人に、先ほどの女の事を話していたら、近くにあったブランコがいきなり揺れ出したので、脱兎の如く帰途についたのは言うまでもない。
続くかも。




