第六話(筑波山)
俺が自動車免許を取ったのは高校を卒業して専門学校に入ってからだった。
同級生よりは数ヶ月遅れて取ったことを覚えている。
車は持っていなかったが、たまに実家に戻っては母親の軽自動車を借りて乗り回していた。
その日は仲の良かった友人と、夜の筑波山に行ってみよう。という事になった。
筑波山も他聞にもれず霊山なのは知っていたが、走り屋が走り回っている事もあり、俗世に汚れている部分もあった。
その汚れた俗世に属している道を走っていた時の事。
某神社の前に建っている鳥居の前を通り過ぎ、パープルラインに繋がるだいぶ手前の90度に折れ曲がるカーブに差し掛かった頃、いきなり霧がかかり目の前が見えなくなった。
「あれ!?いきなり霧が出てきた!」
それなりにスピードを出していた事もあり、少々焦りながら減速を始めた時、進行方向に濃くかかってきた霧がゆっくりと右回転を始めた。
「何だこれ!何だこれ!」
奇妙な光景を目にした俺が声を出した時、隣にいた友人を見ると助手席で頭を抱えて丸まっていた。
『何だ、何か見えてるのかコイツ??』
友人の怪しい仕草に冷や汗をかきながらも事故らないように減速しながら前方に目をやると、ゆっくり渦を巻いていた霧の中心が固まり出した。
『ん?』
と思うのも束の間、霧の中心で塊になったものが一気に人の顔になった!
「おぉーーーー!!!」
驚いて声を出した所でその顔が消えるはずもない。
周りの霧と切り離されたその顔が一気にフロントガラスに寄ってきたかと思うと、熟れたトマトがグシャッと潰れるように潰れて飛び散っていった。
「なーおい!今の見たか!?」
俺の問いに助手席で丸まっていた友人は答える事もなく震えていた。
後で聞いた事だったが、その友人は潰れた顔は見ていなかったらしいが、何かが寄ってくる気配でビビっていたらしい。
結局あの顔が何なのか分からず仕舞いだったのだが、夜中にいきなりビビらせるのはやめて欲しいもんだ。
因みにその帰り、ファンベルトが切れてバッテリー上がりになってレッカーを呼びました。
なんて迷惑な。
続くかも。




