表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/85

第79話「仲間たちの覚悟」

 不死の王冠が、辛うじて全員を生かしている。

 だが冥王の攻撃のたびに、回復が追いつかなくなっていく。リリスの顔から余裕が消えている。この力にも限界がある。

「面白い力だ」

 冥王が言った。

「だが、永遠ではあるまい。そのうち、全てが消える」

 俺の頭の中では、魂の架け橋のことが、ずっと回っていた。

 使えば、冥王を封印できる。世界は救われる。代償は、俺の魂。

 顔に出していたのだろう。リリスがこちらを見た。

「……ぬし。まさか」

 その時、ゼノンが立ち上がった。

    ◇

 ボロボロだった。魂を削られ、体が傾いている。それでも立った。目だけが燃えていた。

「まだだ」

 冥王に向かって、走り出した。吸収されるとわかっていて。

「レイド! 時間を稼ぐ! その間に策を考えろ!」

 鉄剣を振るった。白銀の光が冥王に弾かれる。魂が吸われる。膝をつきかける。それでも、立ち上がってまた斬りかかる。

 ゼノンの背中を見ていた。

 七年間、俺がやっていたことだ。パーティの後ろで、誰にも気づかれずに、時間を稼ぎ、力を支えていた。

 今、ゼノンが同じことをしている。俺の盾になっている。

 一人ではなかった。

 リリスが並んだ。

「わらわも行く。800年の命、ここで使い切っても構わぬ」

 紅蓮の薔薇園。自分の魔力を限界まで振り絞る。薔薇が吸収されても、また咲かせる。咲かせ続ける。自分の体が灰になりかけても、止めない。

 シャルロットが盾になった。呪浄の鎧を全身に展開し、冥王の波動を正面から受け止める。体が軋む。それでも一歩も引かない。

「レイドが考える時間を、私たちで作る!」

 セラフィナが宙を舞った。暁の裁きを連発する。一発ごとに、冥王がわずかに怯む。わずかに。それでも、何度も何度も繰り返す。

「天から堕ちて、地の底で戦う。天使としてではなく——あなたの仲間として!」

 メルティが両手を掲げた。300年分の魔力を全て解放する。空間魔法で冥王の足を縛る。完全には縛れない。一瞬。だがその一瞬を、何度も作り出す。

「ししょうのために!」

 五人が、命を削っていた。

 俺に時間を作るために。

 冥王が、苛立った声を出した。

「虫けらが。まとめて喰らってやる」

 冥王の体が、紫黒に膨れ上がった。全方位への魂喰。この空間の魂を、一度に全て喰らう滅殺技。溜めている。あと数十秒で、放たれる。

    ◇

 その時、頭の中に、記憶が流れ込んできた。

 魂の書で見た、始まりの死霊術師の記憶。

 あの人も、同じだった。仲間がいた。仲間が冥王の前で時間を稼いでいた。そして始まりの死霊術師は、その時間で——魂の架け橋を発動した。

 記憶の中の声が、聞こえた。

「仲間を守るために、命を使う。それが、死霊術師の最後の仕事だ」

 目の前で、五人が戦っている。

 七年間、俺は一人だった。後ろで支えて、誰にも見られなくて、それが当たり前だと思っていた。

 追放されて、この四人に会った。ゼノンも戻ってきた。

 一人じゃなくなった。守りたいものができた。守ってくれる人ができた。

 ——もう、十分だ。

 心が、静かに決まった。

 不思議と、怖くなかった。七年間の孤独に比べれば、仲間のために消えることなんて、ずっと幸せだ。

 俺は、魂の架け橋を発動した。

 体が、白い光に包まれた。

    ◇

 リリスが、振り返った。

「レイドッ! 何をしておる! その光は——」

 声が裏返っていた。

 俺は微笑んだ。できる限り、穏やかに。

「ごめん、リリス。嘘ついてた」

「……何を」

「この技は——俺の魂と引き換えに、冥王を封印する。始まりの死霊術師と、同じ方法だ」

 リリスの顔が、凍りついた。

「やめろ」

 声が震えた。800年を生きた真祖の声が、子供のように震えた。

「やめるのじゃ! ぬしが死んだら——わらわは——!」

「レイド!!」

 シャルロットが叫んだ。呪浄の鎧を解いて、こちらに走ろうとする。

「嘘でしょ!? やめてよ!」

「ししょう!!」

 メルティが泣き叫んだ。

「だめ! 消えちゃだめ! また一人になるのやだ! ししょうがいなくなったら——!」

「レイドさん……!」

 セラフィナの声が掠れた。翼が震えている。

 ゼノンが、剣を取り落とした。

「レイド……お前……そんなの……」

 白い光が、強くなっていく。俺の足元から、生と死の境界が——開き始めた。

 光と闇が、混ざり合う。世界の根源が、俺の意思で動き始める。

 始まりの死霊術師が、数千年前に使った力。

 今、俺が、引き継ぐ。


読んで下さりありがとうございました!

★★★★★評価と[[[ブックマーク]]]、リアクションお願いします!

Youtubeにて作品公開中!

http://www.youtube.com/@mizukara-h2z

ご感想やご質問など、ぜひコメントでお聞かせください。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ