第10話『少女の涙、運命の選択』
【この物語は、かつて世界を滅ぼした少年が、もう一度だけ救いを選ぼうとする旅の記録である。】
夜の森。
冷たい風が吹き抜ける中、ミレナはただうつむいていた。
俺は、そっと彼女に近づく。
「ミレナ……」
呼びかけた声は、自分でも驚くほど震えていた。
ミレナは、震える手で顔を隠す。
その小さな肩が、何度もかすかに揺れる。
──わかっている。
あの力を見たミレナは、怯えた。
創造神の右手。
存在すら消し飛ばす、あまりにも禍々しい力。
信じたいと願ったはずの俺に、
彼女は、心のどこかで「怖い」と思ってしまった。
それは、仕方のないことだった。
それでも。
「……すまない」
俺は、小さく頭を下げた。
ミレナは、涙に滲んだ目で俺を見上げる。
「……違う、私のほうこそ、弱いんだ」
声が震えていた。
「信じたかったのに。レオンは、優しい人だって。
でも、あの時、怖かった……怖くて、どうしても、信じきれなかった……!」
ミレナの嗚咽が、静かな森にこだました。
俺は、拳を握るしかできなかった。
どうしても。
何度やり直しても。
俺は、誰かを傷つけてしまう。
「……どこへ行くんだ?」
かすれるような声で問う。
ミレナは、涙を拭い、震える声で答えた。
「少しだけ、離れたい。
自分が、どうしたいのか……ちゃんと、考えたい」
その言葉に、俺は頷いた。
本当は、止めたかった。
でも、それは俺のための願いだ。
ミレナが、自分で未来を選ぼうとしているのなら──
俺にできることは、ただ、背中を押すことだけだった。
「……気をつけろよ」
それだけを、俺は言った。
ミレナは、小さく笑った。
泣き笑いのような、痛々しい笑顔だった。
そして、夜の闇へと、消えていった。
俺は、その場に立ち尽くして、
ただ、見送ることしかできなかった。
再び、静寂が降りる。
ひとり。
また、ひとり。
救いたかった存在を、手放してしまった。
──それでも、俺は。
この世界で、希望を信じることを、諦めたくない。
「失うたびに、痛みは増える。
それでも、手を伸ばすことを、俺はやめない。」




