第9話『かつての罪』
【この物語は、かつて世界を滅ぼした少年が、もう一度だけ救いを選ぼうとする旅の記録である。】
王都ギルドへの登録を済ませたあと、
俺たちは、郊外にある古い教会跡に案内された。
情報屋から聞き出した、
──かつての世界崩壊にまつわる「伝承」が眠る場所だ。
ミレナが不安げに俺の袖を引っ張る。
「……こんなところ、本当に大丈夫?」
「大丈夫」
俺は答えた。
だが、胸の奥では、何かがざわめいていた。
教会跡は、朽ち果てていた。
ひび割れた祭壇。
黒く煤けた壁。
そして、剥がれかけた石板。
そこに、かろうじて読み取れる文字が刻まれていた。
──『創造神、堕つ』。
エリスが、石板に指を滑らせながら呟いた。
「……この世界を創った存在が、かつて堕落し、
自らの手で世界を壊した、そう書かれている」
「それって、つまり──」
ミレナが言いかける。
俺は、石板に触れた。
その瞬間、頭の中に、光景が流れ込んできた。
炎。
叫び。
壊れる大地。
消えていく人々の影。
──その中心に、立っていたのは──俺だった。
「っ──!」
思わず膝をつく。
エリスが駆け寄る。
「レオン!」
けれど、俺は手で制した。
──あの日、
──あの時、
──この手で、すべてを壊したのは、紛れもない、俺だった。
かつて、救えなかった。
いや、救おうとしなかった。
だから、
世界は壊れた。
俺は、
罪人だ。
それでも。
(──もう、二度と繰り返さない)
苦しみを押し殺し、立ち上がる。
ミレナが、怯えるように俺を見ていた。
エリスも、何かを言いたげに唇を噛んでいる。
──すれ違いは、さらに深まる。
それでも。
俺は、進む。
赦されないとしても。
許せないとしても。
この手で、
未来を、創るために。
「背負え。すべてを。赦せなくても、未来のために。」




