15、今更な自己紹介
「おなかすいたー」
夕方になると、先程までの様子が嘘だったかのようにムクくんが元気良く起きました。
昼の残った鹿もどきの肉を処理して保存していたので、其れを使って、なんちゃってビーフシチューを作りました。
きちんと、調味料も材料も揃って無いので、あくまでもビーフシチュー的な物ですが、結構好評でした。
ムクくんは吐いたばかりなので心配しましたが、おかわりするぐらい食欲がありました。
その後すぐまた眠ってしまいましたが、今度は調子を悪くする事も無かったので安心しました。
勿論、寝る前に道に生えてる物をむやみに食べてはいけないと皆で注意しておきました。
案の定、私達に会う前にお腹が空いて道に生えていたキノコや雑草を食べていたそうです。
大事に至らなくて幸いでした。
私の膝を枕にして眠るムクくんを見ながらゲキさんが私に聞きました。
「……なぁお前…なんてぇんだ?」
「なん?とは?」
「な、名前だよ!名前!聞いてなかったから…」
「名前ですか?」
そういえば云って無かったかもです。
「俺はグエンだ。」
「いや、おっさんには聞いてねぇよ」
「おっさんじゃねぇ!!」
グエンさんがお約束のやり取りしてます。
そういえば、いつの間にか髭が薄っすら生えてますね
ジョリジョリします。ジョリジョリ。
「……嬢ちゃん…男の顔はむやみに触るもんじゃねぇぞ」
溜め息を吐きながら、やんわりと触っていた手を下ろさせられました。
「…おっさんは触んのかよ」
ゲキさんが口を尖らせて何かブツブツ云ってますが聞こえません。
グエンさんといい、ブツブツ呟くのが流行ってるのでしょうか
「な、ま、え!早くお前の名前教えろよ!!」
「私はレイです」
「ふーん、レイか…よろしくな!レイ!」
「………」
「オイ!握手!!」
手を差し出されました。
その手をじっと見つめていると、早く握れと云わんばかりにゲキさんがグイグイ手を突き出してきます。
「いえ…私の事、嫌いではなかったのかと」
「そ、それは…お前がイケ好かねぇ女だと思ってたから…」
「今は違うと?」
「う、あ、まぁ…それより!早く!握手!洗ったんだからクサくねぇだろ!!」
赤くなってモジモジしてます
私はその手を握りました。
「よろしく…と云っても目的地までの仲ですけどね」
「……お前さぁ…まぁイイや、俺の事は"ゲキ"って呼び捨てにしてイイぜ!」
「いえ、大して親しくもない、その日会ったばかりの方を呼び捨てには出来ません」
「そういうとこ!お前のなんかそういうとこが嫌いッ!!」
また涙目になってます。
泣き虫さんですね
グエンさんも手を差し出しましたが「男と手を握る趣味はねぇ!」と云われ、しょぼんとしたグエンさんが可哀想でした。
その後年齢の話になり、15だと告げると「同じくらいかと思った!」とすごく驚かれました。
8歳と同い年だと思われるとは…心外です。
グエンさんも年齢を告げましたが「おっさんの年齢に興味ねぇ」またそう素っ気なく云われて、しょぼんとしてました。
その日は野宿して、翌朝日が昇る頃に出発しました。
ムクくんはまだグエンさんの背中で眠っています。
少し行くと村が見えてきましたが、建物も道も荒れ果てていて人の気配はしませんでした。
「廃村だな…廃れて結構経ってそうだ」
村を横目に通り過ぎます。
ふと、村の奥の方で何か動いた気がしました。
よく、見てみようと目を凝らそうとしましたが、グエンさんに先を促されたので特に気にする必要も無いかとその村を後にしました。
その時の私達は気付きませんでした。
村の奥から二つの赤い眼が見つめていた事に




