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第九話 『裁判』⑤

 

「なっ!? ノエル貴様っ!!」


 トニーは俺の言葉に、怒りを露わにした。俺が一環として、パトリシアの無実を信じる姿勢が気に入らないのだろう。更には、パトリシアに『罪』を認めさせる為の彫像の攻撃を防いだ。そのことがより、トニーに焦りが募っているのが分かる。

 本来ならば『裁判』により、パトリシアの『有罪』が確定している筈であり、余裕な予定だったのだろう。しかし、トニーの予定とは裏腹に、それらの何も思い通りに行っていないのだから仕方がない。トニーの思い通りになんてさせてなるものか。トニーの失敗は俺が『弁護』することを許可したことである。

 俺は妹であるパトリシアを『罪人』と称して『有罪』にしようとしている、トニーたちの方が気に入らないのだ。


「嗚呼、そうでした。一つ問題があるとすれば……その彫像が弱いのが問題なのでは?」


 俺はトニーへの意趣返しの一種として、彫像に問題があることを告げた。万が一、彫像に攻撃するのが『罪』になるならば、攻撃される程度の彫像が悪い。攻撃を許さない防壁魔法か、対抗戦を講じておくべきだ。

 確実にジェイドが規格外なのだろうが、そんなことは知らない。予期すべき対処を怠っている『裁判』が悪いのだ。


「こっ、このっ……! ノエルっ……!! いくら、彫像の攻撃を防いでも、その悪女の罪は消えないぞ!?」


 トニーは苦々しい表情で、パトリシアの『罪』が消えないと喚く。『裁判』が開廷されたことにより、『罪人』が『有罪』であることは決定している。それはこの世界においては常識だ。『裁判』に掛けられたら、終わりである。

 だからこそ、この『裁判』において優位なのはトニーたちだ。パトリシアを追い詰めているのは、トニーたちの筈である。それなのに、何故かトニーたちの表情には焦りが見えている。余裕の無い表情が実に面白い。


「そっ、そうだ! 悪女であるパトリシアが、学園の教員室から封筒を抱えて出て来るのを見ました!! 試験用紙を事前に盗んで、不正を働いていたのです!!」


 彫像が弾かれ呆然としていたデロンも、トニーの発言に賛同する。此処でトニーへ貢献しなければ、己の利益を損なうと焦っているのだろう。それならば、証言という曖昧なものではなく、確たる証拠品を用意するべきだ。

 そしてデロンは再び証言を口にしたことにより、再び彫像が歩こうとする。だが関節部分を凍らせている為、軋む音を立てるだけだ。彫像の関節部分を凍らせた理由は、パトリシアを守る以外にも理由がある。

 彫像が万が一にでも、パトリシアに危害を加えようとしてもジェイドが居るから安心だ。


「嗚呼、それは違います。パトリシアは病欠されたご友人へ、授業のプリントを渡す為のものです」


 デロンが必死の形相で行った証言を、俺は笑顔で否定した。



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