第七話 『裁判』③
「ああ! 愚妹の罪を知る私が居ることが恐ろしいのでしょう!? 分かりますよ! 貴方は今! 『罪人』である愚妹と共に、自分も監獄に送られることを恐怖しています! 恐怖に心を支配されている!!」
俺の行動が恐怖を感じた為だと、勘違いしたデロンは更に声を高らかに叫ぶ。舞台俳優でも目指したら良いだろう。容姿と声の大きさは適任者である。まあ、それは叶わないだろう。パトリシアを貶めようとした者たちは、それ相応の罰を受けてもらうからだ。
「いえ、恐怖など感じていませんよ。ですが……無実の人間を『裁判』に掛けて、『有罪』にしようと目論む、貴方方には軽蔑の意を禁じえません」
デロンの発言に、俺は笑顔で嫌味を吐いた。恐怖など今更感じる訳がない。この世界の『裁判』に『弁護』をすればどうなるか知らずに、介入することはないのだ。加えて、パトリシアが本当に罪を犯していたならば、恐怖するかもしれない。だが妹は無実である。何も恐れる必要はないのだ。
「なっ……!?」
今まで、俺の対応が柔らかかったからだろう。デロンは驚愕を露わにする。
「おい!! デロン!! さっさとその悪女の罪を証言しろ!! そしてその目障りな、病弱ノエルを黙らせろ!!」
動揺しているデロンに、トニーが檄を飛ばす。その形相は公爵令息としては、品の欠片もない。それは仕方がないだろう。何せ証言が証拠だと発言したというのに、俺が怯まないからだ。トニーは俺が恐怖に慄き、泣き叫ぶ姿がみたいのだろう。悪趣味な人間である。
「はっ、はい! 悪女であるパトリシアが、学園の教員室から封筒を抱えて出て来るのを私は見ました!! 試験用紙を事前に盗んでいたのです!!」
トニーに命じられたデロンが、証言を高らかに告げる。自信に満ちている様子から、これで自分の責任を果たせたと思っているのだろう。そしてトニーに恩を売ることが出来たと、安心している筈だ。何とも愚かしい。
デロンの証言により、一体の彫像がパトリシアの下へと歩み寄る。『裁判』において、『罪人』に対して『証言』や『証拠』が提示されると、『罪人』に攻撃を与える仕組みだ。ハンマーを担ぎながら、歩を進めるごとに彫像が大きくなる。
「……っ! 私は試験用紙を盗むなど、行っておりません!」
人と同じ大きさから、3倍ほど大きくなった彫像がパトリシアの前に立つ。パトリシアは恐怖に屈することなく、真摯に無実であることを訴える。だが、彫像には意識はない。無実を訴えたとしても、現状が変わることはない。
「無駄だ! デロンが見たと証言しているのだ! お前は罪人なのだ! さあ! 彫像よ! あの悪女に思い知らせてやれ!!」
トニーが下卑た笑みを浮かべる。彫像はその声に従うように巨大なハンマーを振り上げると、パトリシアへと振り下ろした。




