第十七話 『裁判』⑬
「……なっ!? なんだと……」
驚愕するトニー。今更何に驚いているのだろう、この男は?カジノ通いを常習的に行っていたならば、金欠は必至だ。余程の幸運と確率ならば、勝つことはあるだろう。だが常に勝ち続けることは不可能である。教員の給料で賄うことが出来ないから、家賃の支払いが滞っていたのだ。それを踏まえた上で、カジノ通いを常習的に行えるようになったということは、他で金銭を受け取っていると考えるのが普通である。
そして噂話から、『試験用紙を』売りそれをカジノの資金にしていたと推測するのは簡単だ。
「おや? 聞こえませんでしたか? アンディー教員は『試験用紙を』売りさばいていたのです」
優しい俺は再度アンディー教員が犯した『罪』を再度告げた。
「そんなこと……先生がするわけない……。そうですよね? アンディー先生? ノエルが言っていることは戯言ですよ?」
「……っ……」
トニーはアンディー教員に真偽を問うが、アンディー教員は顔を逸らした。
「それからですね。アンディー教員から『試験用紙を』買い、成績に不正を働いた方がいらっしゃいます」
俺はトニーたちのことを放置して、淡々と話しを進める。ここまで来れば、トニーたちの同意や反応など一々気にする必要もない。
「そのような者が学園に居るのですか?」
グラハムが眉をひそめる。彼も『裁判』を行う一人だ。だが、ハンジェン裁判長とは違い、不正行為が許せない様子である。加えて、学園は将来この国を支える貴族の令息令嬢が通う。不正行為を働く者が居るというのは大問題だ。
「はい、残念ながら。そしてその不正を働いた者こそ、パトリシアを貶め自分の犯行を隠す為に『その悪女の成績が常に首席なのは、試験用紙を盗んでいる』という噂話を流した張本人です」
俺は頷くと、不正行為を行った人物と、噂話を流した張本人が同一人物であることを告げた。要するに自分の犯行を、パトリシアが行っていると人物の名前を変えて噂話を流したのだ。卑劣な行為である。
「卑劣な者も居たものですね……ノエル様の妹君に罪を着せるとは……」
腕を組むと、グラハムは唸るように感想を口にした。俺が呼んだ援軍だが、パトリシアを味方としてくれていることはありがたい。彼は味方だが、『裁判』を司る『教会』の人間でもある。万が一にも、グラハムにパトリシアを『罪人』と認められた場合、大変面倒な展開になるのだろう。一応はそのあたりのことも加味して、応援としてグラハムを呼んだ。まあ、万が一にでもそうなったら場合は、グラハムごと倒す為問題はないだろう。味方をしてくれるならば礼を尽くすが、敵となるならば容赦はしない。全ては俺の平和な生活の為である。
「ええ、ですが……幸いなことにその『卑怯な罪人』はこの場にいます」
俺は、自分の犯行をパトリシアが行っていると人物の名前を変え、噂話を流した卑劣がこの場に居ると告げた。
「……それは、大変興味深いお話しですね」
グラハムは少し目を見開くと、トニーたちの方向を見る。直感なのか、それとも状況から判断したのか分からないが、グラハムの反応は正しい。
「そうですよね? アニータ・ハロン男爵令嬢?」
俺はトニーの後ろに居る、アニータに笑顔を向けた。




