第十八話 『裁判』⑭
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「な……なにを急に……」
アニータは驚愕しながら、俺たちの視線に戸惑う。急に自分の名前が話題に上がったからだ。パトリシアを『裁判』により『有罪』して断罪出来ると、余裕でいたのだろう。残念ながら、そんな結果は俺が許さない。パトリシアを断罪しようとした愚かな行いには、絶対に報いを受けてもらう。
「アニータ・ハロン男爵令嬢。貴方がアンディー教員から『試験用紙を』買い、成績に不正を働いた『卑怯な罪人』だと告げたのですよ」
俺は現在における、アニータの『罪』を告げる。
「っ!? な、何で私がそんなことをするのよ!?」
「それは、ご自身が一番分かっているのではありませんか?」
アニータは『罪』に覚えがないフリをするが、逃がす気はない。質問に対して、俺は質問で返す。アニータへの嫌がらせである。
「……なっ!? 知らないわよ! 私が『試験用紙を』買うわけがないじゃない! パトリシア様のお兄様は、頭がおかしいわよ!!」
必死になって、アニータは俺を非難するが意味のない言葉だ。加えて、此処では否定する具体的な理由を告げるべきである。俺の批判するのは無駄だ。いや、アニータの印象を悪くするに関しては、優位に働くだろう。どちらにしても、少し指摘をされただけで言葉を取り乱すとは情けない。
「そうだ! 僕の大切なアニータがそのような『卑劣な罪人』であるわけがないだろう!? 身体だけでなく、頭まで弱いのか? ノエルは!!」
トニーがアニータを擁護する。予想通りだが、二人とも俺を批判しないと会話することが出来ないのだろうか?俺としてはどうでもいいが、己の品格を欠いているということに気が付かないのか不思議である。
「こちらの映像をご覧ください」
俺は肩に乗っている一羽の鳩を撫でた。魔法陣が浮かび、アンディー教員がカジノ通をする映像から別の映像へと切り替わる。そこには建物に隠れながら、周囲を警戒するアンが映し出された。帽子を被って変装をしたつもりだろうが、顔がはっきりと映っている。この映像には音声がついているのだが、最大音量で調節済みだ。
『そんなに警戒しなくても大丈夫よ。こんなところには、誰も来ないわ』
警戒するアンディー教員の背後から、アニータが声をかけた。彼女は変装することもなく、堂々としている。制服姿ではないことから、場所は学院ではないようだ。
『……っ! 今回の分です』
アンディー教員は封筒を、アニータへと渡す。『今回』という言葉が、このやり取りが常習的に行われていることを示している。
『ありがとう。じゃあ、次回もよろしくね……っ!? 誰か居るの!?』
アニータは小さな巾着をアンディー教員に渡す。中身は封筒の中身への対価である。巾着を渡した終えたアニータは、急に映像の方を向くと風の攻撃魔法を放った。そのことにより、映像が一瞬乱れる。そして画面が横に倒れると、苦しそうな鳥の鳴き声が響いた。
『だ、誰か居たのですか!?』
画面外で、アンディー教員の情けない声が響く。
『心配ないわ、ただの鳥だわ……どうせ、この怪我なら放置しても問題はないわ』
アニータは画面を見下ろすように立つ。その表情は先程まで、トニーに向けていたような笑みは一切ない。
『あんたも、災難ね? 私たちのこと見なければ、生きることができたのに……私はあのパトリシアに勝たないといけないのよ。恨むなら自身の不運を恨みなさい』
冷酷な表情を浮かべると、アニータはその場を離れた。すると画像が乱れ、街並みと空が流れる。そしてある屋敷のベランダを映した。
『……っ! 酷い怪我ですね……大丈夫ですか?』
ベランダの窓が開くと、俺が映し出される。そこで映像を止めた。
「如何ですか? 『目撃者』の視点は?」
俺はアニータへと映像の感想を尋ねる。
「し、じゃあ……その鳩は……」
自分の悪行が流されたアニータは顔面蒼白だ。そして震える手で、俺の肩にとまる白い鳩を指さす。
「ええ、アニータ・ハロン男爵令嬢。貴女が風魔法で攻撃した鳩です」
俺は笑顔で肯定した。
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